ミニマム法律学

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横領罪の客体・占有ほか(11ヶ)

M4A

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横領罪の保護法益

刑法40/ 委託物横領罪は、①#物の所有権が第一次的な保護法益であり、委託関係、すなわち、#委託に関する財産上の利益が、副次的保護法益である。窃盗罪における占有侵害に対応する法益侵害だが、#委託関係は物の占有よりも弱いものなので、法定刑は軽い#賃借権や質権を侵害しても横領罪は成立しない。

[山口『刑法各論』2288(大判明441013刑集17-1698),289頁参照]

 

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無権限者による保管の委託

刑法26/ #被害者への返還にそなえる必要があるという意味で、#無権限者による保管の委託も保護に値する。委託物横領罪の委託関係はその場合も含むと解する。窃盗犯人が保管を委託した盗品につき、同罪が成立しうる。もっとも、#それが盗品保管罪を構成する場合、保護に値せず、遺失物等横領罪の問題となる。

[山口『刑法各論』2293頁参照。記述の意味するところが,今一つ理解できていません。自分なりに考えて,①保管者に盗品性の認識のない場合,②盗品性の認識のある場合(=犯罪罪行為となる)に分けて書いています。後日,訂正するかもしれません。]

 

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預金による金銭の占有

刑法事案8/ 刑法R30予備:甲が,Vから投資のため預かった500万円を,甲名義定期預金口座に入れ,預金証書原本をVに渡したが,甲は当該口座届出印を使い,証書再発行をし,500万円払戻しを受け,自らの借金返済に充てた。#甲の銀行に対する正当な払戻権限の有無により預金の占有が判断されると解するが,業務上横領罪の成否?

[刑法論文30年予備:平成30司法試験予備試験論文式試験[刑法]参照。参考:山口『刑法各論』2295(大判大元・108刑録18-1231,最判25224刑集4-2-255)]

 

預金による金銭の占有

刑法12/ 委託された金銭の保管手段として預金する場合、預金による金銭の占有を否定すれば、#払い戻す金銭につき横領罪が問題になるが、#振込・振替送金の場合に金銭を手にしないので、#委託物横領罪は成立せず背任罪が問題となるにどどまり均衡を失する。したがって、#預金による占有を肯定すべきである。

[山口『刑法各論』2295(大判大元・108刑録18-1231),R21①参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5135]

 

◇預金による金銭の占有

刑法248/ 委託された金銭の保管手段として預金する場合,#預金による金銭の占有肯定(判例,占有概念の拡張)。∵否定すれば,払い戻した金銭の横領しか問えず,金銭を手にしない振込・振替送金では,背任罪が問題となるにとどまり,均衡を失する。

#払戻権限で,占有の有無を決する。

#一定の金額の占有(物概念の拡張)

[山口『刑法各論』2295(大判大元・108刑録18-1231,最判25224刑集4-2-255)参照]

 

 

一定の金額についての占有(物概念の拡張)

[・預金の占有は,事実上の処分可能性ではなく,#預金の払戻権限により基礎づけられる。すなわち,事実上預金を処分しうるにすぎない窃盗犯人には銀行に対する関係で預金の占有は認められないので(銀行に対し?)詐欺罪が成立する。

[1.窃盗犯人に詐欺罪が成立するとして,被害者は誰であろうか? 銀行と預金者の双方であろうか?

 銀行のみ被害者だとしたら,預金者の銀行預金をだまし取られて記載上預金残高が0になったとしても,預金者の預金は従前どおりということであろうか? ただし,その場合,預金者の払戻預金債権と,預金者が通帳を盗まれたことにより銀行が負った被害の賠償請求債権(詐取金額全額ではないであろう?),対当額で相殺ということになるのであろうか?

2.預金通帳・印鑑の窃盗者には,預金者との関係でも預金の占有は認められないので,預金者に対して,遺失物横領罪は成立しない。

 ということは,預金者との関係では,通帳等の窃盗罪が成立するだけということ? その中身たる預金の詐取については,銀行に対する詐欺罪が成立するのみということ?

3.預金の占有(預金による占有)を認めるということは,財産犯についての,占有概念の拡張であるとともに,(財物)概念の拡張ということのようである。]

 

刑法38/ 預金の占有は、事実上の処分可能性でなく、#銀行および預金者に対する関係で認められる預金の払戻権限で基礎づけられる。払戻権限を有する者に(一定の金額につき)預金の占有が認められる。預金通帳と登録印鑑を窃取した犯人が払戻しを行った場合、払戻権限がないので銀行に対する詐欺罪が成立する。

[山口『刑法各論』2295(最判25224刑集4-2-255),R21①参照。]

 

〇誤振込預金の払戻しーー預金による占有を肯定した上での詐欺罪肯定

タスク 刑法396/ X,自己名義普通の預金口座への心当たりのないA社からの7531円振込みを知ったが,自己の借金返済に充てようと,窓口係員に対し,誤振込みを告げず,残高92万余の預金中88万円払戻請求し,交付を受けた。1審は,払戻権限を否定,詐欺罪とした。2審は,誤振込預金の払戻しは民事上問題ないが,刑法は別とした。

 

刑法25/ 振込依頼人の過誤による誤振込の場合,銀行は誤振込であることを知れば,民事判例上の預金債権成立にもかかわらず,受取人への支払拒絶をする正当利益が認められる。#正当な払戻権限を根拠とする預金の占有には_誤振込か確認し一定措置をとるべき利益からの制約が及び,銀行に対する詐欺罪が成立しうる。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)271〕最決平15312刑集57-3-322,山口『刑法各論』2297,296LL7「振込依頼人の過誤によって生じた場合」,参照。一定の制約を付した預金の占有を肯定。]

 

☆金銭が使途を定めて委託された場合

/ X,Aら数名から製茶買付依頼を受け,その買付資金として現金100万円を預かり,同人らのために保管中,数十回にわたり,生活費,遊興費など自己の用途に費消した。

#民法_金銭の所有と占有は一致するとされるので,Xからみれば,当該現金は自己の占有する自己の物となり,横領罪は成立しないようにも見える。

[大塚裕史『刑法各論の思考方法』(2003)240(最判26525刑集5-6-1186)参照]

 

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取立委任された金銭の横領

刑法7/ 金銭流通の動的安全から、民事上金銭の所有と占有は一致するが、内部的所有権保護を目的とする委託物横領罪には妥当しないので、債権取立てを委任されて取り立てた金銭を不法に領得した場合、委託物横領罪(#刑法252条)が成立する。ただ、金銭は特定しないので、両替・一時流用などは該当しない。

[山口『刑法各論』2302頁参照。最判26525刑集5-6-1186,大判昭8911刑集12-1599,参照]

 

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◇広大な湖沼に逃げ出した鯉は,逃失と同時に無主物になるか

タスク 刑法350/ 八郎湖のような広大な水面に逃げ出した鯉は,#飼養主がこれを回収することは事実上極めて困難な場合が多いと考えられるが_そのことの故に右鯉が直ちに遺失物横領罪の客体となり得ないと解すべきものではなく,Xが右鯉を他人が飼養していたものであることを知りながらほしいままに領得した以上,同罪成立。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)360〕最決昭56220刑集35-1-15参照]

 

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◇共有物も横領罪の「他人の物」にあたる

タスク 刑法348/ 共有物に付きては各共有者は共同に権利を有するを以て其一人が之を自己に領得するに於ては,#他人の権利を侵害すること全然他人の所有に属するものを横領すると選ふ所なけれは,刑法252条乃至254条の横領罪の目的物たる他人の物の中には当然共有物をも包含するものと解釈すべきものとす。大判明44417

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)337〕刑録17-587参照]

 

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略号: 問題or事案,判例同旨の場合,その他。R論文,Q設問,T短答。orまたは,なので,ならば,なぜならば,これに対し。TB構成要件,Rw違法性(違法),S責任(有責性)

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