ミニマム法律学

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詐欺罪(17ヶ),恐喝罪(3ヶ)の短文まとめ

M4A

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詐欺罪の基本構造

[・詐欺罪(刑法246)は、移転罪であり、交付罪である。すなわち、瑕疵ある意思に基づく占有の移転を要する。詐欺罪は成立するためには、「人を欺く行為」(欺罔行為)による錯誤の惹起、錯誤に基づいた交付行為、交付行為による物・利益の移転という一連の因果関係をたどることを要する。

 財物のみならず、財産上の利益を客体とし、個別財産に対する罪である。]

 

タスク 刑法77/ 詐欺罪(刑法246),移転罪・交付罪。#瑕疵ある意思に基づく占有の移転要。成立には,①#人を欺く行為(欺罔行為)による②#錯誤の惹起,③#錯誤に基づいた交付行為,交付行為による④#物・利益の移転という⑤#一連の因果関係をたどる必要あり。財物のみならず,財産上の利益も客体で,#個別財産に対する罪。

[山口『刑法各論』2244,250頁参照。なお,2項詐欺罪には全体財産に対する罪も含まれているとするのは,団藤教授,大塚仁教授,詐欺罪を含め財産犯すべて全体財産に対すると解するのは,林幹人教授とのこと(同書244頁参照)]

 

タスク 刑法123/ 詐欺罪(刑法246),移転罪だが,強取罪と異なり,瑕疵ある意思に基づく占有移転を要件とする交付罪である。#人を欺く行為により錯誤を生じさせ_錯誤に基づく交付行為により物・利益の移転がなされ_物・利益の喪失という法益侵害を惹起する特定の因果関係が認められれば,既遂。個別財産に対する罪。

[山口『刑法各論』2(2010)244頁参照]

 

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◇移転性のある利益

タスク 刑法124/ 刑法2462項の客体たる財産上の利益は,有体物以外の財産的利益を広く含むが,#移転性のある利益に限られる。情報・サービス(役務)などにつき,詐欺罪などの移転罪成立は一般に肯定できない。もっとも,有償サービスにつき,#請求しうる料金を免脱されたという財産上の損害,利益の取得あり,2項詐欺罪成立。

[山口『刑法各論』2(2010)247-248頁参照]

 

◇移転性のある利益ーー対価を支払うべき有償のサービス

タスク 刑法391/ 甲は無賃乗車を決意し,乙のタクシーを停車させ,乗車後,A地点まで依頼したので,乙はタクシーを発車させた。A地点手前で,甲は逃走のため,「ちょっと電話をかけたい」と言い停車させ,付近の電話ボックスに向かったが,挙動に不審をもった乙が追いかけてきたので,支払い免脱のため,乙を殴り倒し気絶させた。

 

刑法392/ →一般に,サービス(役務)が不正取得されても,#その提供者からサービスが失われるということは観念しえないが,有償サービスについては,詐欺罪など移転罪の客体となる。∵被害者には請求しうる料金を免脱されたという財産上の損害あり,行為者には料金に対応する財産上の利益を取得したと観念できるから。

[R6②参照,山口『刑法各論』2(2010)247,248,各参照]

 

◇不法な利益の支払いを,欺罔手段により免れた場合,詐欺罪が成立するか

タスク 刑法341/ 不法原因給付により返還請求できない場合も,詐欺罪成立。#被害者が保護に値するか疑問があるが,交付する財物・財産的利益そのものは_不法性あるものではないから,成立肯定。⇔,売春行為後,欺罔手段を用い売春代金を免れた場合,#その役務および債権自体に不法性があるから,詐欺罪は成立しないとすべき。

[平野龍一『刑法概論』(1977)220-221頁参照。

参考:山口『刑法各論』2(2010)248,判例ラクティス 刑法Ⅰ』(2012)171〕名古屋高判昭301213高刑裁特2-24-1276]

 

◇債務履行の一時猶予

刑法125/ 債務の履行や弁済の一時猶予も財産上の利益にあたり,2項詐欺罪が成立しうる。もっとも,財産的利益の具体的内実・実質的内容を問うべきであり,#債権の財産的価値が減少し_債権者に実質的な被害が生じるという特段の事情ある場合に限るべき財物の移転と同視しうるだけの具体性・確実性ある場合である。

[山口『刑法各論』2249-250(大判明44105刑録17-1598,大判大12614刑集2-537,最決34312刑集13-3-298/ 最判3048刑集9-4-827)参照]

 

◇債務履行の一時猶予

タスク 刑法411/ 債務の履行や弁済の一時猶予も財産上の利益にあたるが,2項詐欺成立要件たる「財産上の利益を得た」というには,#財物の移転と同視しうるだけの具体性・確実性が必要である。即ち,債務履行の一時免除により,債権の財産的価値が減少したなど,#実質的な被害が債権者に生じる特段の事情ある場合に限られる。

[山口『刑法各論』2(2010)249-250頁参照]

 

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◇人による交付行為に向けられた行為

刑法211/ 人を欺く行為(欺罔行為),#人による物・利益の交付行為に向けられたものでなければならない。人に向けられていない,器械の不正操作に,詐欺罪は成立しない。物の取得なら,窃盗罪成立。器械の不正操作によるサービス取得は,不可罰。虚言を弄し注意をそらせ,その間に所持品を持ち去るような場合,窃盗罪。

[山口『刑法各論』2版(2010)251頁参照]

 

◇欺罔の対象

刑法206/ 詐欺の実行行為たる「人を欺く行為」(欺罔行為)が認められるためには,#財物の交付の判断の基礎となるような重要事項につき欺くことを要する。もっとも,財物交付を求める,実行行為自体が行われずとも,#実行行為に密接で_被害を生じさせる客観的危険性が認められる行為に着手すれば,未遂罪が成立しうる。

[最判30322刑集72-1-82補足意見(裁判官山口厚)参照。参考:山口『刑法各論』2(2010)251]

 

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◇交付意思の内容(占有移転の認識)

タスク 刑法385/ 詐欺罪の成立には,#物・財産上の利益を移転する認識(占有移転の認識)を要する。判例,被欺罔者が現金入り風呂敷包みを玄関の上り口に置き,Xだけを玄関に残して便所に行ったところ,Xはその隙に現金を持ち逃げしたという事案の詐欺罪成立を肯定するが,#占有移転の認識が被欺罔者にないので,疑問である。

[山口『刑法各論』2(2010)257(最判261214刑集5-13-2518)参照]

 

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◇クレジットカードの不正使用

タスク 刑法393/ 甲は,同僚Aに頼み込み,限定品の10万円の腕時計Xを買うだけに使うという条件で,B信販会社発行のA名義クレジットカードを借りた。カードは,信販会社の所有であり,規約上名義人のみ利用でき,他人への譲渡,貸与等が禁止されていた。甲は,A本人と装って,さらに50万円の腕時計Yも購入し,事後,Aの了承を得た。

 

刑法105/ →名義人本人に成り済ました他人名義のクレジットカード不正使用は,#カード会員の個人的信用力に基づき無担保での信用許与を可能にするというクレジットカードの前提条件を偽るもの。∴詐欺罪成立。仮に甲が,名義人Aが超過額についても承諾し,利用代金は決済されると信じていたとしても,故意阻却せず。

[R29,山口『刑法各論』2264(東京高判昭6059刑月17-5=6-519,最決平1629刑集58-2-89),『ケース&プロブレム 刑法各論』(2006)弘文堂156Q61(誤信という事情につき,「詐欺罪の客観的構成要件に関する判断か,#それとも故意の存否に関する判断か」と問うており,後者によりました),各参照]

 

刑法事例演習教材(初版)13

1 甲がB店、C店でクレジットカード購入した行為について

1[問題の所在]

 他人名義のクレジットカードを用いて財物を購入した行為について、クレジットカード加盟店との関係で詐欺罪(刑法(以下略)2461)が成立するか、私文書偽造(159)および同行使罪(161)が成立するか、カードの名義人との関係で、許可の限度額を超えたカード使用について何罪が成立するか、問題となる。

2について

(1)[法的判断枠組み]

 クレジットカード名義人本人に成り済ましてカードを使用した場合、クレジットカードは、カード会員の個人的信用力に基づき無担保での信用許与を可能にする決済方法なので、このような他人名義のクレジットカードの不正使用につき、詐欺罪が成立する。その場合に、カード名義人から使用を許可され、かつ、名義人において利用代金が決済されると誤信していたとしても、詐欺罪の故意を阻却しない。

 。

(2)[事実の抽出、評価]&[結論]

 

 加盟店との関係で、1項詐欺罪が成立する。

3について

(1)[法的判断枠組み]

 

4について

 

5.罪数

 

◇他人に譲渡する意図を秘して,自己名義の預金通帳の交付を受けた行為

タスク 刑法346/ 銀行行員に対し預金口座開設を申し込むこと自体,申し込んだ本人が自分自身で利用する意思たることを表しているというべきだから,#預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図なのに秘して申込みを行う行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,#これにより交付を受けた行為は詐欺罪構成。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)288最判19717刑集61-5-521参照]

 

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◇他人名義で交付を受けた預金通帳の財物性

タスク 刑法345/ 預金通帳は,#それ自体として所有権の対象となり得るものであるにととまらず_これを利用して預金の預入れ_払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから,他人名義で預金口座を開設し,それに伴い銀行から交付される場合であっても,#2461項の財物に当たると解するのが相当である。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)287〕最決平141021刑集56-8-670参照。参考:山口『刑法各論』2(2010)271]

 

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電子計算機使用詐欺罪

刑法32/ 拾得・窃取したキャッシュカードを使用し現金自動支払機で、#振替送金したときなど、電子計算機使用詐欺罪(刑法2462)が処罰する。財産権の得喪・変更に係る不実の電磁的記録の作成、財産権の得喪・変更に係る虚偽の電磁的記録の供用により、財産上不法の利益を得たとき等に限り処罰する。

[山口『刑法各論』2(2010)274頁参照。R21①参照]

 

刑法33/ 財産権の得喪・変更に係る電磁的記録(刑法246条の2)は、作出・更新により、#直接_事実上_当該財産権の得喪・変更を生じるもの。銀行の顧客元帳ファイルの預金残高記録、カードの残度数など。カードの磁気ストライプ部分中の記録や不動産登記ファイルなどは一定事実証明のもので、あたらない。

[山口『刑法各論』2(2010)275頁参照

 

(電子計算機使用詐欺)

第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。]

 

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◇窃盗犯人からの盗品の喝取

タスク 刑法353/ 被害者Aの持っていた綿糸(めんし)は盗品だから,Aは正当な権利を有しない。#but正当な権利を有しない者の所持も_所持として法律上の保護を受けるのであり,例えば窃取したものだから強取しても処罰に値しないとはいえない。恐喝罪も同様で,#賍物所持者に対し恐喝手段を用いそれを交付させた場合,恐喝罪。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)160最判2428刑集3-2-83参照]

 

権利行使と恐喝罪

刑法2/ 自力救済禁止の要請から、権利の実行が権利の範囲内をこえ、かつ、その方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度範囲を逸脱するときは、行為全体が違法となる

したがって、債権3万円なのに、6万円喝取した行為につき、6万円全額について恐喝罪(#刑法2491項)が成立する。

[山口『刑法各論』2(2010)285,286,最判301014刑集9-11-2173,参照。

Q:かつ?

A:権利の実行が権利の範囲内を越えれば、その越えた部分については違法で恐喝罪(249条)が成立するが、さらに、その方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度範囲を逸脱すると、権利の範囲内(債権3万円)の部分全体についても違法になる、という意味合いです。舌足らずですみません😅]

 

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◇被恐喝者が畏怖し財物奪取を黙認していた場合

タスク 刑法347/ 恐喝取財罪の本質は,被恐喝者の畏怖に因る瑕疵ある同意を利用する財物の領得行為であると解すべきであるから,その領得行為の形式が,被恐喝者において自ら財物を提供した場合は勿論,#被恐喝者が畏怖して黙認し居るに乗じ恐喝者において財物を奪取した場合においても,亦本罪の成立を妨ぐるものではない。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)323最判24111刑集3-1-1参照。2491項の「交付させた」の語義は以上の各場合を包含する。]

 

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略号: 問題,判例,その他。R論文,Q設問,T短答。orまたは,なので,ならば,なぜならば,これに対し。TB構成要件,Rw違法性(違法),S責任(有責性)

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