1.個人保証一般の規律
個人保証で、主たる債務者が期限の利益を喪失(失期)した場合、債権者は、それを知った時から2か月以内に、保証人にその旨を通知しなければならない(新458条の3第1項)。請求を受けずとも発生する義務。期間内に通知が到達しないと、債権者は保証人に対し、期限の利益喪失時から通知到達までに生じた遅延損害金(延滞利息)について、保証債務の履行を請求できない。もっとも、本来の履行期到来後の遅延損害金のように「期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきもの」は請求できる(2項)。
2.個人根保証の規律
⑴ 極度額の定め
個人根保証は極度額の範囲で保証債務を負うものであり(新465条の2第1項)、契約は極度額を定めなければ効力を生じない(2項)。書面要件あり(3項・446条2項3項)。貸金等債務に限られない。賃貸住宅を借りる際の借家人が負う義務の担保のための保証も、個人保証の場合は極度額の定め要。
但し、根保証の保証人が法人の場合も、法人保証人Aの主たる債務者Sに対する求償債権に保証人Bがいる場合、これは主たる債務が特定されており普通保証であるが、保証人Bを保護しないと、法人保証を介在させることで個人根保証人保護の規律が回避されてしまいかねない。そこでこの場合も、法人の根保証契約に極度額の定めなければ、求償権を主たる債務とする個人保証契約は効力を生じない(新465条の5第1項)。
⑵ 元本確定期日
主たる債務に貸金等債務を含む個人根保証契約(個人貸金等根保証契約)については、最長5年の期間制限がある(新465条の3第1項)。書面要件あり(4項)。
法人保証人からの求償権に個人保証人がいる場合も、465条の3第1項、3項の要件を満たさなければ効力を生じない(新465条の5第2項)。
⑶ 元本確定事由
個人根保証契約一般については、①保証人の財産について金銭債権についての強制執行又は担保権実行の申立てがあり手続が開始したとき、②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき、③主たる債務者又は保証人が死亡したとき(新465条の4第1項)。
個人貸金等根保証については、①債権者が主たる債権者の財産について、金銭債権についての強制執行又は担保権実行を申立て手続が開始したとき、②主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき(2項)。