ミニマム法律学

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非伝聞に関するまとめ短文(19ヶ)の読み上げ

M4A

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刑訴法13/ 伝聞法則(刑訴法320条)の適用を受けるか否かは、#要証事実との関係で相対的に決せられる。供述 #内容の真実性 が要証事実である場合に、伝聞法則が適用される。これに対し、その供述が本当に存在したか否かが問題である場合(非供述的利用の場合)は、非伝聞とされ、伝聞法則は適用されない。

[ 辰巳『趣旨・規範ハンドブック』5版3刑事系269頁参照]

 

〇要証事実と証拠の伝聞性

 刑訴法190/ 名誉棄損事件で,公訴事実(恐喝)の記事内容に関する情報を和歌山市役所職員から聞き込みこれを被告人に提供した旨の証言は,①内容が真実か否かの点については伝聞証拠だが,②被告人が記事内容を真実と誤信したことにつき相当の理由があったか否かの点については伝聞証拠とはいえない,とする判例がある。

[上口裕『刑事訴訟法』5版(2021年)最大判昭44・6・25刑集23-7-975(夕刊和歌山事件)参照。記事内容の真実性の誤信につき,確実な資料,根拠に照らし相当の理由あるとき(判例によると「故意」阻却事由)にあたるかという主要事実に対する間接事実となるので,証言に関連性がある。]

 

刑訴法24/ 領収書が相手方に #交付 されていれば、記載内容から直接でなく、領収書の存在とそれが相手方に交付された事実とから、領収書の記載内容に相当する #金員授受の事実 を推認することは、経験則に適う合理的な推認であり、伝聞法則に反しない。記載内容の真実性から #独立した証拠価値 がある。

[古江『事例演習刑事訴訟法』初版239頁参照。領収書が,非伝聞証拠にあたる場合。]

 

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◇供述時(現在)の精神状態に関する,(第三者の)供述は,伝聞か?

 刑訴法174/ #供述者の供述時の精神状態(感情・認識・意図・計画など)が立証されると,#要証事実に対する情況証拠になる。①被告人に対する被害者の嫌悪感が立証されれば,和姦とする被告人主張を反駁する情況証拠となり,②車のブレーキの不調を供述者が認識していたことを立証すれば,過失を推認する情況証拠となる。

 

刑訴法175/ →ある時点の精神状態の立証には,①本人に当時の精神状態について公判廷で供述させる方法と,②本人が当時の精神状態について述べた公判期日外供述の存在を公判で立証する方法がある。②を伝聞と解すると,本人が被告人以外ならば,#供述不能とならない限り許容されない。このため,伝聞か否か問題となる。

 

刑訴法176/ →現在の精神状態の供述は,通常の供述証拠と違い,#外界事象に関する知覚・記憶の過程を欠く。①表現の真摯性は,供述状況・態度に関する第三者証言等で検証可,②精神異常を推認する供述や弾劾のための自己矛盾供述は,反対尋問不要,③精神状態の自然な直接的な表出,精神状態に関する最良証拠。∴非伝聞。

[上口裕『刑事訴訟法』5版(2021年)365頁-366頁参照]

 

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◇米子強姦致死事件最判

刑訴法177/ 最判昭30・12・9(米子強姦致死事件)は,強姦致死事件の被害者Aの「あの人はすかんわ,いやらしいことばかりする」という供述を内容とする情夫の証言の伝聞性が問題の事案で,被告人が「かねてAと情を通じたいとの野心を持っていた」という「犯行自体の間接事実たる動機」の証拠とするときは伝聞だとした。

 

刑訴法178/ →たしかに,①Aの公判期日外供述から,被告人がいやらしいことばかりした,Aに野心を持っていたと認定する場合は,Aの公判期日外供述を内容とする情夫の証言は伝聞となる。②but,#被告人が和姦を主張する場合に_Aの同意を否定する情況証拠としてAの嫌悪感を立証するときは_精神状態の供述の問題(非伝聞)。

[上口裕『刑事訴訟法』5版(2021年)365頁注9(刑集9-13-2699)参照]

 

☆伝聞法則ーー犯人性を立証する場合

 刑訴法157/ Xは,Vに対する強姦致死罪で起訴されたが,#犯人性を否認していたところ,証人Wは,検察官からの主尋問に対し,「Vから,生前,「Xは嫌いだ。いやらしいことばかりするから」と打ち明けられた」旨証言。これに対し,弁護人は,直ちに異議を申し立て,伝聞で排除されるべき旨述べた。裁判所は異議を認容すべきか。

[古江賴孝『事例演習 刑事訴訟法』(2011年)〔22〕(最判昭30・12・9刑集9-13-2699)参照。犯人としての動機があることを推認するための間接事実に当たるので,発言内容の真実性を原供述者Vの知覚・記憶・表現・叙述について吟味確認して証明する必要のある伝聞証拠。]

 

〇米子強姦致死事件

刑訴法158/ 刑訴法判例18/ 最判昭30・12・9参照:強姦致死事件被害者Vの原供述『あの人は好かんわ,いやらしいことばかりする』を内容とする情夫Wの証言につき,Xが同意情交を主張する場合,V同意を否定する情況証拠として,Vの嫌悪感を立証するためなら,精神状態の供述(非伝聞)。#犯行自体の間接事実たる動機の証拠とするなら_伝聞。

[上口裕『刑事訴訟法』2版379頁注5(刑集9-13-2699,米子「あの人は好かんわ」事件)参照。参考:古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版232頁。

 情況証拠は,非供述証拠(ことば非供述的利用など)としての間接事実を言うようである(上口・同書378頁,343頁)。間接証拠とは,要証事実を推認させる事実(間接事実=情況証拠)を内容とする証拠であって,その内容である(いくつかの)間接事実に,論理則や経験則をあてはめて,要証事実を証明する証拠(344頁)。

 間接事実は要証事実を推認させ得る(いくつかの)事実の一つに過ぎないが,間接証拠は,(いくつかの)間接事実に論理則や経験則をあてはめて,要証事実を推認する証拠(その内容が,一つの間接事実であることもあればあれば,いくつかの間接事実であることもある)と,集合的な概念として捉えることに親しむ?]

 

◇米子「あの人すかんわ」事件

刑訴法89/ 証人W証言中,V原供述のうち『Xは嫌いだ』部分は,Xの犯人性が争点なら,関連性なし。行為主体性確定後,合意情交か強姦かが争点なら,V強姦致死罪立証に関連性あり,かつ非伝聞(#精神状態の供述)。『いやらしいことばかりする』部分は,#強姦動機を推認させる間接事実として内容真実性が問題となる伝聞証拠。

[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版232頁〔22〕(最判昭30・12・9刑集9-13-2699,米子「あの人好かんわ」事件)参照。

1.動機とはなんであろうか? 犯罪積極的成立要件たる客観的構成要件(構成要件的行為,結果,因果関係),責任要件(故意・過失)のうち,主観的要件たる故意そのものではないであろう。動機(・企図)も,故意(・過失)という主観的犯罪成立要件などを推認するための間接証拠ということであろう? 参考:司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版287頁に,「動機・企図」との記述があり,やはり,故意そのものではないようである。

2.要証事実がなんであるかといことと,争点とは区別するとわかりやすいかもしれない。争点が同意に基づく情交か,強姦かなら,『Xは嫌いだ』,『いやらしいことばかりする』は,前者は非伝聞(精神状態の供述)として要証事実となり,後者は伝聞証拠として要証事実となるということだろう。

3.「殺すのを見た」→「殺した」のような推論が確実で、両者が等価値であるとき,後者「殺した」が要証事実であるが,昭和30年最判の事案の『いやらしいことばかりする』=「平素いやらしい行動をしていた」→「動機」を推論する過程の関係は,確実な推論(等値できる)とはいえず,前者は後者を推認する間接事実の1つである場合,前者が要証事実であり,争点は,動機が認められるか否か。]

 

◇要証事実が(犯人性との関係で)動機を推認させる間接事実である場合

刑訴法142/ Vの原供述中「いやらしいことばかりする」部分は,争点たるXの犯人性との関係で,#XがVにいやらしいことばかりしていたとの過去の事実_すなわちXに犯人としての動機があることを推認させる間接事実_が要証事実と考えられるので,内容の真実性が問題であり,知覚,記憶等の吟味,確認を要する伝聞(320条1項)。

[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』(2011年)〔22〕232頁(最判昭30・12・9刑集9-13-2699:米子「あの人すかんわ」事件)参照]

 

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◇犯行計画メモの伝聞性

刑訴法131/ 人の意思,計画を記載したメモは,その意思,計画の立証のためには,伝聞法則不適用。∵知識,記憶,表現,叙述を前提とする供述証拠と違い,#知覚_記憶を欠落するので,作成の真摯性が証明されれば,必ずしも反対尋問による信用性のテストを要しないと解される。数人共謀の共犯事案における犯行計画メモも同様。

[『刑事訴訟法判例百選』10版〔79〕(東京高判昭58・1・27判時1097-146)判旨参照]

 

◇共謀に関する犯行計画メモ

刑訴法91/ 意思,計画記載メモは,#その意思_計画立証のためには_伝聞禁止法則不適用。知覚,記憶,表現叙述を経る伝聞証拠と違い,知覚,記憶を欠くから,真摯な作成過程が証明されれば,原供述者への反対尋問不要。#共謀に関する犯行計画記載メモも同様。ただ,#共犯者全員共謀の最終的意思合致が確認されていること要。

[東京高判昭58・1・27判時1097-146『刑事訴訟法判例百選』10版〔79〕]

 

 刑訴法191/ 人の意思,計画を記載したメモについては,その意思,計画を立証するためには,伝聞法則の適用はない。これは,個人の単独犯行だけでなく,共犯事案についても,共謀に関する犯行計画を記載したメモについては同様。但し,それが最終的に共犯者全員の共謀の意思の合致として確認されたものであることを要する。

[『刑事訴訟法判例百選』10版〔79〕(東京高判昭58・1・27判時1097-146)判旨参照]

 

◇犯行計画メモ

刑訴法26/  犯行計画メモが関与者に #回覧 され、共謀内容の確認に供された場合、当該メモを用いて謀議が形成されたのであり、当該メモ紙は共謀の #意思形成手段として用いられたツール(道具)であり、その存在自体プラス記載内容に独立の証拠価値があり、共謀の意思形成過程を証明する情況証拠となりうる。

[古江『事例演習刑事訴訟法』初版241頁参照。犯行計画メモが関与者に回覧された場合。『プラス記載内容』の部分等,私の補った言葉ですので,正確を期されたい方は,出典でご確認下さい。]

 

刑訴法25/ ①犯罪計画の記載されたメモの存在、②内容が実際の犯行に合致、③#被告人の支配領域内で発見、という事実は、被告人の共謀への加担の情況証拠の1つとなり、メモは記載内容の真実性から独立した証拠価値(固有の証拠価値)を有するので、メモの存在と記載内容自体を要証事実とすれば、非伝聞である。

[古江『事例演習刑事訴訟法』初版241頁参照。共犯者とされる者作成の犯行計画メモが,被告人の支配領域内で発見された場合)]

 

 刑訴法192/ 結局,ポイントは2点で,後者の共犯事案については,共犯者全員の共謀の意思の合致は,被告人以外の共犯者の書いたメモの存在,内容と実際の犯行との合致,#そのメモが被告人の支配領域内で発見されたという事実から,被告人も含めた全員が回覧し,全員の共謀の意思の合致ありと推定できるということでしょう。

 

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◇児童の強制わいせつ被害直後の言動に関する母親の供述

刑訴法92/ 強制わいせつ被害を受けた児童の被害直後の言動に関する母親の供述は,非伝聞たり得る。∵知的プロセスや被害者の行為の媒介を伴わない,#直接_端的な肉体への侵害行為について_警察の捜査等をさしはさまない事件直後に母親が児童から感得した言動は_児童の原始的身体的反応の持続の母親の体験といえる。

[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版271頁(山口地萩支部昭41・10・19)参照]

 

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略号: ☆問題or事案,〇判例に同旨かつ疑問の余地なく納得できる場合,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。

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