ミニマム法律学

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性表現・名誉毀損的表現; 営利的言論の自由(芦部『憲法』5版182頁-186頁)

性表現・名誉毀損的表現; 営利的言論の自由

 

1.(1) 性表現や名誉毀損的表現については、刑法175条、230条以下で自然犯として規定されていることから、従来は憲法の保護範囲に含まれないと考えられてきた。しかし、わいせつ文書なり名誉毀損の概念の定め様によっては、本来憲法で保障されるべき表現まで保護範囲外に置かれてしまうおそれがある。

 そこで、これらについても表現の自由に含まれると解した上で、最大限の保護範囲を画定すべきである。この立場は、性表現については、わいせつ文書の罪の保護法益、社会環境としての性風俗を清潔に保ち抵抗力の弱い青少年を保護するということ、との衡量をはかりながら、表現の自由の価値に比重を置いてわいせつ文書の定義を厳格に絞り、表現内容の規制をできるだけ限定しようとするものであり、定義づけ衡量(definitional balancing)論と呼ばれる。

 最高裁は、チャタレー事件判決以来、わいせつ文書頒布・販売罪に関する性表現の規制を一貫して合憲としているが、その後、わいせつ概念を明確化しようとする努力がみられる。

 

(2) 名誉毀損的表現については、特に公務員や著名人のような公人が対象となっている場合、国民の知る権利にも関わる。最高裁は、名誉棄損罪に関する刑法230条の2の規定について、表現の自由の確保という観点から厳格に限界を画定する解釈を行っている。

 逆に、公人でない者については、名誉の保護が重視されるべきである。

 

2.広告のような営利的な表現活動であっても、国民一般が消費者として、広告を通じ様々な情報を受け取ることの重要性に鑑み、表現の自由の保護に値するといえる。

 もっとも、表現の自由の重点は、自己統治の価値にあるので、営利的言論の自由の保障の程度は、非営利的、すなわち政治的言論の自由よりも低いと解される。