ミニマム法律学

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伝聞法則(上口『刑事訴訟法』5版361-363頁)

伝聞法則

 

1.目撃者の供述によって事実を証明する場合、体験者が公判期日に出頭し証人尋問を受け証言するが、その者が死亡・所在不明等のため証言できないことがある。この場合、体験者の以前の供述(原供述)を記録した書面などを証拠とする必要があるが、書面で行う間接立証には供述の確実性・信頼性の検証を経ていないという問題があり、伝聞法則として証拠能力が否定される。

 

 伝聞証拠とは、①公判期日外供述を内容とする証拠であって、②その内容の真実性を立証するために提出・使用される証拠を言う。刑訴法3201項は、「公判期日における供述」(公判供述)に代わる書面(供述代用書面)、又は、「公判期日外における他の者の供述を内容とする供述」(伝聞証言)によって、要証事実を立証することを禁止する。これが伝聞法則である。

 その根拠は以下である。①供述内容である情報は、要証事実の知覚・記憶・表現の過程を経て証拠として提出されるが、この過程に、知覚の不正確性、記憶の喪失・混乱・入替え、あるいは故意・過失による記憶と表現の不一致が生ずる恐れがある。供述者の言いぱなっしのまま供述を真実だと考えるのは一般に危険である。その供述によって不利益を受ける者に供述の正確性を確認する機会を与えることは、正しい事実認定ために必要であり、かつ、基本的な公正の観念にも合致する。したがって、証言の正確性を確認するために反対尋問の必要がある。②また、公判期日外供述は無宣誓でなされており、しかも、③裁判所が供述者の供述態度から証拠評価の資料(態度証拠)を取ることができない。

 

 憲法372項前段は証人審問権(反対尋問権)の機会を被告人に保証する。これは、反対尋問を経ない証拠を被告人の不利益証拠とすることの禁止、すなわち伝聞法則を含意する。刑訴法3201項の伝聞法則は、反対尋問を経ない証拠の排除ではなく、公判期日外供述を排除する点で、証人審問権に基づく排除よりやや広い範囲で供述証拠を排除し、かつ、検察官の反対尋問権も保証する形をとる。

 

 もっとも、公判期日外供述を内容とする証拠であっても、①その供述の存在自体が要証事実(立証趣旨)である場合や、あるいは、②その供述の存在を他の事実の情況証拠(間接事実)にする場合(供述の非供述証拠的利用)の場合は、非伝聞(証拠)となる。