ミニマム法律学

法律書等を読んで,理解し覚えられるように短くまとめて行こうと思っています。ツイッター→https://twitter.com/right_droit YouTube(判例原文の音読)→https://www.youtube.com/channel/UCqVOy5zBmI3GzOI_WF5Dc6Q/featured

被疑者勾留(起訴前勾留)の要件

 [読んだものをさらりとまとめていこうと思います。]

 勾留の要件は、勾留の理由および勾留の必要である。
 勾留の理由があるとは、①罪を犯したことを疑うに足りる相当に理由があり、かつ、②住居不定、逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれのいずれかがあること、をいう(207条1項・60条)。
 たとえば、黙秘しかつ住居・氏名が不明な場合は逃亡のおそれが肯定される。罪証隠滅のおそれは、被疑者が罪証隠滅の意図を有しかつそれが客観的に可能という、現実的な可能性をいう。被疑者が黙秘・否認しているからといって、これをもって直ちに罪証隠滅のおそれがあるとはいえない。
 勾留の必要(87条1項)が認められるのは、勾留の理由はあるが、勾留に伴う不利益を勘案すると勾留を不相当たらしめるという事由がないことをいう。
 住居不定であるが確実な身元引受人がいる、軽微事案(60条3項参照)で勾留が均衡を失する場合などは、勾留の必要が欠ける。
 事案として、黙秘の態度が明確な被疑者を連日取調室に呼び執拗に尋問を繰り返し供述を求めることは、「勾留によって許容された被疑者の取調の限界を逸脱する」ものであり、「本件勾留は専ら、違法な被疑者の取調の必要に利用されている」として、87条1項を類推適用し勾留を取り消した裁判例がある(昭44年岡山地決)。
[上口『刑事訴訟法』5版90頁-91頁参照]

伝聞法則について

[読んだものをさらりとまとめて行こうと思います。]

1.伝聞法則(320条1項)とは、伝聞証拠には、原則として証拠能力は認められないとする法則である。その根拠は、①これにより供述内容の真実性を担保できると考えられること、②反対尋問権(憲法37条2項前段)の保障のためである。なぜならば、供述証拠は知覚・記憶・表現叙述の過程を経て公判廷に顕出されるところ、その各過程に誤りが混入しやすいからである。また、伝聞証拠は、公判廷における供述と異なり、偽証罪の警告・供述態度の観察・反対尋問といった方法でその信用性をチェックできないため、これを用いると類型的に誤りが入り込みやすいからである。
2.では、伝聞証拠とはどういうものを指すか。この点について2つの考え方がある。一方は、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする公判廷における供述又は書面で、供述内容の真実性を立証するために証拠として提出されるもの、とする(形式説)。理由としては、①この定義は、320条の文言に忠実であり、また、②被告人の反対尋問権の保障は伝聞法則の最大の根拠であるが、1つの根拠に過ぎず、反対尋問が行われていなくても、供述態度の観察や偽証罪の警告により供述内容の真実性が担保されるのであれば、証拠能力を否定する必要はないと考えられるから、とする。
 他方は、伝聞証拠とは、裁判所の面前いおいて反対尋問によるテストを経ない供述証拠である、とする(実質説)。理由は、被告人の反対尋問権を重視する必要があるから、とする。
3.具体的問題として、証人の死亡等により主尋問だけで反対尋問ができなかった公判廷の証言の証拠能力が認められるか。
 一方は、公判廷の供述であるため、伝聞証拠の形式説の定義からは、伝聞証拠とならないとし、証拠能力を肯定する。
 他方の実質説によると、被告人の反対尋問を経ていない以上、伝聞証拠となるので、原則として証拠能力は否定され、321条以下の伝聞例外の要件を満たせば、肯定される、とする。
[辰巳・趣旨規範ハンドブック5版268頁-269頁参照]

非伝聞に関するまとめ短文(19ヶ)の読み上げ

M4A

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刑訴法13/ 伝聞法則(刑訴法320条)の適用を受けるか否かは、#要証事実との関係で相対的に決せられる。供述 #内容の真実性 が要証事実である場合に、伝聞法則が適用される。これに対し、その供述が本当に存在したか否かが問題である場合(非供述的利用の場合)は、非伝聞とされ、伝聞法則は適用されない。

[ 辰巳『趣旨・規範ハンドブック』5版3刑事系269頁参照]

 

〇要証事実と証拠の伝聞性

 刑訴法190/ 名誉棄損事件で,公訴事実(恐喝)の記事内容に関する情報を和歌山市役所職員から聞き込みこれを被告人に提供した旨の証言は,①内容が真実か否かの点については伝聞証拠だが,②被告人が記事内容を真実と誤信したことにつき相当の理由があったか否かの点については伝聞証拠とはいえない,とする判例がある。

[上口裕『刑事訴訟法』5版(2021年)最大判昭44・6・25刑集23-7-975(夕刊和歌山事件)参照。記事内容の真実性の誤信につき,確実な資料,根拠に照らし相当の理由あるとき(判例によると「故意」阻却事由)にあたるかという主要事実に対する間接事実となるので,証言に関連性がある。]

 

刑訴法24/ 領収書が相手方に #交付 されていれば、記載内容から直接でなく、領収書の存在とそれが相手方に交付された事実とから、領収書の記載内容に相当する #金員授受の事実 を推認することは、経験則に適う合理的な推認であり、伝聞法則に反しない。記載内容の真実性から #独立した証拠価値 がある。

[古江『事例演習刑事訴訟法』初版239頁参照。領収書が,非伝聞証拠にあたる場合。]

 

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◇供述時(現在)の精神状態に関する,(第三者の)供述は,伝聞か?

 刑訴法174/ #供述者の供述時の精神状態(感情・認識・意図・計画など)が立証されると,#要証事実に対する情況証拠になる。①被告人に対する被害者の嫌悪感が立証されれば,和姦とする被告人主張を反駁する情況証拠となり,②車のブレーキの不調を供述者が認識していたことを立証すれば,過失を推認する情況証拠となる。

 

刑訴法175/ →ある時点の精神状態の立証には,①本人に当時の精神状態について公判廷で供述させる方法と,②本人が当時の精神状態について述べた公判期日外供述の存在を公判で立証する方法がある。②を伝聞と解すると,本人が被告人以外ならば,#供述不能とならない限り許容されない。このため,伝聞か否か問題となる。

 

刑訴法176/ →現在の精神状態の供述は,通常の供述証拠と違い,#外界事象に関する知覚・記憶の過程を欠く。①表現の真摯性は,供述状況・態度に関する第三者証言等で検証可,②精神異常を推認する供述や弾劾のための自己矛盾供述は,反対尋問不要,③精神状態の自然な直接的な表出,精神状態に関する最良証拠。∴非伝聞。

[上口裕『刑事訴訟法』5版(2021年)365頁-366頁参照]

 

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◇米子強姦致死事件最判

刑訴法177/ 最判昭30・12・9(米子強姦致死事件)は,強姦致死事件の被害者Aの「あの人はすかんわ,いやらしいことばかりする」という供述を内容とする情夫の証言の伝聞性が問題の事案で,被告人が「かねてAと情を通じたいとの野心を持っていた」という「犯行自体の間接事実たる動機」の証拠とするときは伝聞だとした。

 

刑訴法178/ →たしかに,①Aの公判期日外供述から,被告人がいやらしいことばかりした,Aに野心を持っていたと認定する場合は,Aの公判期日外供述を内容とする情夫の証言は伝聞となる。②but,#被告人が和姦を主張する場合に_Aの同意を否定する情況証拠としてAの嫌悪感を立証するときは_精神状態の供述の問題(非伝聞)。

[上口裕『刑事訴訟法』5版(2021年)365頁注9(刑集9-13-2699)参照]

 

☆伝聞法則ーー犯人性を立証する場合

 刑訴法157/ Xは,Vに対する強姦致死罪で起訴されたが,#犯人性を否認していたところ,証人Wは,検察官からの主尋問に対し,「Vから,生前,「Xは嫌いだ。いやらしいことばかりするから」と打ち明けられた」旨証言。これに対し,弁護人は,直ちに異議を申し立て,伝聞で排除されるべき旨述べた。裁判所は異議を認容すべきか。

[古江賴孝『事例演習 刑事訴訟法』(2011年)〔22〕(最判昭30・12・9刑集9-13-2699)参照。犯人としての動機があることを推認するための間接事実に当たるので,発言内容の真実性を原供述者Vの知覚・記憶・表現・叙述について吟味確認して証明する必要のある伝聞証拠。]

 

〇米子強姦致死事件

刑訴法158/ 刑訴法判例18/ 最判昭30・12・9参照:強姦致死事件被害者Vの原供述『あの人は好かんわ,いやらしいことばかりする』を内容とする情夫Wの証言につき,Xが同意情交を主張する場合,V同意を否定する情況証拠として,Vの嫌悪感を立証するためなら,精神状態の供述(非伝聞)。#犯行自体の間接事実たる動機の証拠とするなら_伝聞。

[上口裕『刑事訴訟法』2版379頁注5(刑集9-13-2699,米子「あの人は好かんわ」事件)参照。参考:古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版232頁。

 情況証拠は,非供述証拠(ことば非供述的利用など)としての間接事実を言うようである(上口・同書378頁,343頁)。間接証拠とは,要証事実を推認させる事実(間接事実=情況証拠)を内容とする証拠であって,その内容である(いくつかの)間接事実に,論理則や経験則をあてはめて,要証事実を証明する証拠(344頁)。

 間接事実は要証事実を推認させ得る(いくつかの)事実の一つに過ぎないが,間接証拠は,(いくつかの)間接事実に論理則や経験則をあてはめて,要証事実を推認する証拠(その内容が,一つの間接事実であることもあればあれば,いくつかの間接事実であることもある)と,集合的な概念として捉えることに親しむ?]

 

◇米子「あの人すかんわ」事件

刑訴法89/ 証人W証言中,V原供述のうち『Xは嫌いだ』部分は,Xの犯人性が争点なら,関連性なし。行為主体性確定後,合意情交か強姦かが争点なら,V強姦致死罪立証に関連性あり,かつ非伝聞(#精神状態の供述)。『いやらしいことばかりする』部分は,#強姦動機を推認させる間接事実として内容真実性が問題となる伝聞証拠。

[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版232頁〔22〕(最判昭30・12・9刑集9-13-2699,米子「あの人好かんわ」事件)参照。

1.動機とはなんであろうか? 犯罪積極的成立要件たる客観的構成要件(構成要件的行為,結果,因果関係),責任要件(故意・過失)のうち,主観的要件たる故意そのものではないであろう。動機(・企図)も,故意(・過失)という主観的犯罪成立要件などを推認するための間接証拠ということであろう? 参考:司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版287頁に,「動機・企図」との記述があり,やはり,故意そのものではないようである。

2.要証事実がなんであるかといことと,争点とは区別するとわかりやすいかもしれない。争点が同意に基づく情交か,強姦かなら,『Xは嫌いだ』,『いやらしいことばかりする』は,前者は非伝聞(精神状態の供述)として要証事実となり,後者は伝聞証拠として要証事実となるということだろう。

3.「殺すのを見た」→「殺した」のような推論が確実で、両者が等価値であるとき,後者「殺した」が要証事実であるが,昭和30年最判の事案の『いやらしいことばかりする』=「平素いやらしい行動をしていた」→「動機」を推論する過程の関係は,確実な推論(等値できる)とはいえず,前者は後者を推認する間接事実の1つである場合,前者が要証事実であり,争点は,動機が認められるか否か。]

 

◇要証事実が(犯人性との関係で)動機を推認させる間接事実である場合

刑訴法142/ Vの原供述中「いやらしいことばかりする」部分は,争点たるXの犯人性との関係で,#XがVにいやらしいことばかりしていたとの過去の事実_すなわちXに犯人としての動機があることを推認させる間接事実_が要証事実と考えられるので,内容の真実性が問題であり,知覚,記憶等の吟味,確認を要する伝聞(320条1項)。

[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』(2011年)〔22〕232頁(最判昭30・12・9刑集9-13-2699:米子「あの人すかんわ」事件)参照]

 

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◇犯行計画メモの伝聞性

刑訴法131/ 人の意思,計画を記載したメモは,その意思,計画の立証のためには,伝聞法則不適用。∵知識,記憶,表現,叙述を前提とする供述証拠と違い,#知覚_記憶を欠落するので,作成の真摯性が証明されれば,必ずしも反対尋問による信用性のテストを要しないと解される。数人共謀の共犯事案における犯行計画メモも同様。

[『刑事訴訟法判例百選』10版〔79〕(東京高判昭58・1・27判時1097-146)判旨参照]

 

◇共謀に関する犯行計画メモ

刑訴法91/ 意思,計画記載メモは,#その意思_計画立証のためには_伝聞禁止法則不適用。知覚,記憶,表現叙述を経る伝聞証拠と違い,知覚,記憶を欠くから,真摯な作成過程が証明されれば,原供述者への反対尋問不要。#共謀に関する犯行計画記載メモも同様。ただ,#共犯者全員共謀の最終的意思合致が確認されていること要。

[東京高判昭58・1・27判時1097-146『刑事訴訟法判例百選』10版〔79〕]

 

 刑訴法191/ 人の意思,計画を記載したメモについては,その意思,計画を立証するためには,伝聞法則の適用はない。これは,個人の単独犯行だけでなく,共犯事案についても,共謀に関する犯行計画を記載したメモについては同様。但し,それが最終的に共犯者全員の共謀の意思の合致として確認されたものであることを要する。

[『刑事訴訟法判例百選』10版〔79〕(東京高判昭58・1・27判時1097-146)判旨参照]

 

◇犯行計画メモ

刑訴法26/  犯行計画メモが関与者に #回覧 され、共謀内容の確認に供された場合、当該メモを用いて謀議が形成されたのであり、当該メモ紙は共謀の #意思形成手段として用いられたツール(道具)であり、その存在自体プラス記載内容に独立の証拠価値があり、共謀の意思形成過程を証明する情況証拠となりうる。

[古江『事例演習刑事訴訟法』初版241頁参照。犯行計画メモが関与者に回覧された場合。『プラス記載内容』の部分等,私の補った言葉ですので,正確を期されたい方は,出典でご確認下さい。]

 

刑訴法25/ ①犯罪計画の記載されたメモの存在、②内容が実際の犯行に合致、③#被告人の支配領域内で発見、という事実は、被告人の共謀への加担の情況証拠の1つとなり、メモは記載内容の真実性から独立した証拠価値(固有の証拠価値)を有するので、メモの存在と記載内容自体を要証事実とすれば、非伝聞である。

[古江『事例演習刑事訴訟法』初版241頁参照。共犯者とされる者作成の犯行計画メモが,被告人の支配領域内で発見された場合)]

 

 刑訴法192/ 結局,ポイントは2点で,後者の共犯事案については,共犯者全員の共謀の意思の合致は,被告人以外の共犯者の書いたメモの存在,内容と実際の犯行との合致,#そのメモが被告人の支配領域内で発見されたという事実から,被告人も含めた全員が回覧し,全員の共謀の意思の合致ありと推定できるということでしょう。

 

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◇児童の強制わいせつ被害直後の言動に関する母親の供述

刑訴法92/ 強制わいせつ被害を受けた児童の被害直後の言動に関する母親の供述は,非伝聞たり得る。∵知的プロセスや被害者の行為の媒介を伴わない,#直接_端的な肉体への侵害行為について_警察の捜査等をさしはさまない事件直後に母親が児童から感得した言動は_児童の原始的身体的反応の持続の母親の体験といえる。

[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版271頁(山口地萩支部昭41・10・19)参照]

 

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略号: ☆問題or事案,〇判例に同旨かつ疑問の余地なく納得できる場合,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。

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横領罪の客体・占有ほか(11ヶ)

M4A

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横領罪の保護法益

刑法40/ 委託物横領罪は、①#物の所有権が第一次的な保護法益であり、委託関係、すなわち、#委託に関する財産上の利益が、副次的保護法益である。窃盗罪における占有侵害に対応する法益侵害だが、#委託関係は物の占有よりも弱いものなので、法定刑は軽い#賃借権や質権を侵害しても横領罪は成立しない。

[山口『刑法各論』2288(大判明441013刑集17-1698),289頁参照]

 

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無権限者による保管の委託

刑法26/ #被害者への返還にそなえる必要があるという意味で、#無権限者による保管の委託も保護に値する。委託物横領罪の委託関係はその場合も含むと解する。窃盗犯人が保管を委託した盗品につき、同罪が成立しうる。もっとも、#それが盗品保管罪を構成する場合、保護に値せず、遺失物等横領罪の問題となる。

[山口『刑法各論』2293頁参照。記述の意味するところが,今一つ理解できていません。自分なりに考えて,①保管者に盗品性の認識のない場合,②盗品性の認識のある場合(=犯罪罪行為となる)に分けて書いています。後日,訂正するかもしれません。]

 

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預金による金銭の占有

刑法事案8/ 刑法R30予備:甲が,Vから投資のため預かった500万円を,甲名義定期預金口座に入れ,預金証書原本をVに渡したが,甲は当該口座届出印を使い,証書再発行をし,500万円払戻しを受け,自らの借金返済に充てた。#甲の銀行に対する正当な払戻権限の有無により預金の占有が判断されると解するが,業務上横領罪の成否?

[刑法論文30年予備:平成30司法試験予備試験論文式試験[刑法]参照。参考:山口『刑法各論』2295(大判大元・108刑録18-1231,最判25224刑集4-2-255)]

 

預金による金銭の占有

刑法12/ 委託された金銭の保管手段として預金する場合、預金による金銭の占有を否定すれば、#払い戻す金銭につき横領罪が問題になるが、#振込・振替送金の場合に金銭を手にしないので、#委託物横領罪は成立せず背任罪が問題となるにどどまり均衡を失する。したがって、#預金による占有を肯定すべきである。

[山口『刑法各論』2295(大判大元・108刑録18-1231),R21①参照。参考:辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5135]

 

◇預金による金銭の占有

刑法248/ 委託された金銭の保管手段として預金する場合,#預金による金銭の占有肯定(判例,占有概念の拡張)。∵否定すれば,払い戻した金銭の横領しか問えず,金銭を手にしない振込・振替送金では,背任罪が問題となるにとどまり,均衡を失する。

#払戻権限で,占有の有無を決する。

#一定の金額の占有(物概念の拡張)

[山口『刑法各論』2295(大判大元・108刑録18-1231,最判25224刑集4-2-255)参照]

 

 

一定の金額についての占有(物概念の拡張)

[・預金の占有は,事実上の処分可能性ではなく,#預金の払戻権限により基礎づけられる。すなわち,事実上預金を処分しうるにすぎない窃盗犯人には銀行に対する関係で預金の占有は認められないので(銀行に対し?)詐欺罪が成立する。

[1.窃盗犯人に詐欺罪が成立するとして,被害者は誰であろうか? 銀行と預金者の双方であろうか?

 銀行のみ被害者だとしたら,預金者の銀行預金をだまし取られて記載上預金残高が0になったとしても,預金者の預金は従前どおりということであろうか? ただし,その場合,預金者の払戻預金債権と,預金者が通帳を盗まれたことにより銀行が負った被害の賠償請求債権(詐取金額全額ではないであろう?),対当額で相殺ということになるのであろうか?

2.預金通帳・印鑑の窃盗者には,預金者との関係でも預金の占有は認められないので,預金者に対して,遺失物横領罪は成立しない。

 ということは,預金者との関係では,通帳等の窃盗罪が成立するだけということ? その中身たる預金の詐取については,銀行に対する詐欺罪が成立するのみということ?

3.預金の占有(預金による占有)を認めるということは,財産犯についての,占有概念の拡張であるとともに,(財物)概念の拡張ということのようである。]

 

刑法38/ 預金の占有は、事実上の処分可能性でなく、#銀行および預金者に対する関係で認められる預金の払戻権限で基礎づけられる。払戻権限を有する者に(一定の金額につき)預金の占有が認められる。預金通帳と登録印鑑を窃取した犯人が払戻しを行った場合、払戻権限がないので銀行に対する詐欺罪が成立する。

[山口『刑法各論』2295(最判25224刑集4-2-255),R21①参照。]

 

〇誤振込預金の払戻しーー預金による占有を肯定した上での詐欺罪肯定

タスク 刑法396/ X,自己名義普通の預金口座への心当たりのないA社からの7531円振込みを知ったが,自己の借金返済に充てようと,窓口係員に対し,誤振込みを告げず,残高92万余の預金中88万円払戻請求し,交付を受けた。1審は,払戻権限を否定,詐欺罪とした。2審は,誤振込預金の払戻しは民事上問題ないが,刑法は別とした。

 

刑法25/ 振込依頼人の過誤による誤振込の場合,銀行は誤振込であることを知れば,民事判例上の預金債権成立にもかかわらず,受取人への支払拒絶をする正当利益が認められる。#正当な払戻権限を根拠とする預金の占有には_誤振込か確認し一定措置をとるべき利益からの制約が及び,銀行に対する詐欺罪が成立しうる。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)271〕最決平15312刑集57-3-322,山口『刑法各論』2297,296LL7「振込依頼人の過誤によって生じた場合」,参照。一定の制約を付した預金の占有を肯定。]

 

☆金銭が使途を定めて委託された場合

/ X,Aら数名から製茶買付依頼を受け,その買付資金として現金100万円を預かり,同人らのために保管中,数十回にわたり,生活費,遊興費など自己の用途に費消した。

#民法_金銭の所有と占有は一致するとされるので,Xからみれば,当該現金は自己の占有する自己の物となり,横領罪は成立しないようにも見える。

[大塚裕史『刑法各論の思考方法』(2003)240(最判26525刑集5-6-1186)参照]

 

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取立委任された金銭の横領

刑法7/ 金銭流通の動的安全から、民事上金銭の所有と占有は一致するが、内部的所有権保護を目的とする委託物横領罪には妥当しないので、債権取立てを委任されて取り立てた金銭を不法に領得した場合、委託物横領罪(#刑法252条)が成立する。ただ、金銭は特定しないので、両替・一時流用などは該当しない。

[山口『刑法各論』2302頁参照。最判26525刑集5-6-1186,大判昭8911刑集12-1599,参照]

 

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◇広大な湖沼に逃げ出した鯉は,逃失と同時に無主物になるか

タスク 刑法350/ 八郎湖のような広大な水面に逃げ出した鯉は,#飼養主がこれを回収することは事実上極めて困難な場合が多いと考えられるが_そのことの故に右鯉が直ちに遺失物横領罪の客体となり得ないと解すべきものではなく,Xが右鯉を他人が飼養していたものであることを知りながらほしいままに領得した以上,同罪成立。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)360〕最決昭56220刑集35-1-15参照]

 

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◇共有物も横領罪の「他人の物」にあたる

タスク 刑法348/ 共有物に付きては各共有者は共同に権利を有するを以て其一人が之を自己に領得するに於ては,#他人の権利を侵害すること全然他人の所有に属するものを横領すると選ふ所なけれは,刑法252条乃至254条の横領罪の目的物たる他人の物の中には当然共有物をも包含するものと解釈すべきものとす。大判明44417

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)337〕刑録17-587参照]

 

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略号: 問題or事案,判例同旨の場合,その他。R論文,Q設問,T短答。orまたは,なので,ならば,なぜならば,これに対し。TB構成要件,Rw違法性(違法),S責任(有責性)

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詐欺罪(17ヶ),恐喝罪(3ヶ)の短文まとめ

M4A

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詐欺罪の基本構造

[・詐欺罪(刑法246)は、移転罪であり、交付罪である。すなわち、瑕疵ある意思に基づく占有の移転を要する。詐欺罪は成立するためには、「人を欺く行為」(欺罔行為)による錯誤の惹起、錯誤に基づいた交付行為、交付行為による物・利益の移転という一連の因果関係をたどることを要する。

 財物のみならず、財産上の利益を客体とし、個別財産に対する罪である。]

 

タスク 刑法77/ 詐欺罪(刑法246),移転罪・交付罪。#瑕疵ある意思に基づく占有の移転要。成立には,①#人を欺く行為(欺罔行為)による②#錯誤の惹起,③#錯誤に基づいた交付行為,交付行為による④#物・利益の移転という⑤#一連の因果関係をたどる必要あり。財物のみならず,財産上の利益も客体で,#個別財産に対する罪。

[山口『刑法各論』2244,250頁参照。なお,2項詐欺罪には全体財産に対する罪も含まれているとするのは,団藤教授,大塚仁教授,詐欺罪を含め財産犯すべて全体財産に対すると解するのは,林幹人教授とのこと(同書244頁参照)]

 

タスク 刑法123/ 詐欺罪(刑法246),移転罪だが,強取罪と異なり,瑕疵ある意思に基づく占有移転を要件とする交付罪である。#人を欺く行為により錯誤を生じさせ_錯誤に基づく交付行為により物・利益の移転がなされ_物・利益の喪失という法益侵害を惹起する特定の因果関係が認められれば,既遂。個別財産に対する罪。

[山口『刑法各論』2(2010)244頁参照]

 

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◇移転性のある利益

タスク 刑法124/ 刑法2462項の客体たる財産上の利益は,有体物以外の財産的利益を広く含むが,#移転性のある利益に限られる。情報・サービス(役務)などにつき,詐欺罪などの移転罪成立は一般に肯定できない。もっとも,有償サービスにつき,#請求しうる料金を免脱されたという財産上の損害,利益の取得あり,2項詐欺罪成立。

[山口『刑法各論』2(2010)247-248頁参照]

 

◇移転性のある利益ーー対価を支払うべき有償のサービス

タスク 刑法391/ 甲は無賃乗車を決意し,乙のタクシーを停車させ,乗車後,A地点まで依頼したので,乙はタクシーを発車させた。A地点手前で,甲は逃走のため,「ちょっと電話をかけたい」と言い停車させ,付近の電話ボックスに向かったが,挙動に不審をもった乙が追いかけてきたので,支払い免脱のため,乙を殴り倒し気絶させた。

 

刑法392/ →一般に,サービス(役務)が不正取得されても,#その提供者からサービスが失われるということは観念しえないが,有償サービスについては,詐欺罪など移転罪の客体となる。∵被害者には請求しうる料金を免脱されたという財産上の損害あり,行為者には料金に対応する財産上の利益を取得したと観念できるから。

[R6②参照,山口『刑法各論』2(2010)247,248,各参照]

 

◇不法な利益の支払いを,欺罔手段により免れた場合,詐欺罪が成立するか

タスク 刑法341/ 不法原因給付により返還請求できない場合も,詐欺罪成立。#被害者が保護に値するか疑問があるが,交付する財物・財産的利益そのものは_不法性あるものではないから,成立肯定。⇔,売春行為後,欺罔手段を用い売春代金を免れた場合,#その役務および債権自体に不法性があるから,詐欺罪は成立しないとすべき。

[平野龍一『刑法概論』(1977)220-221頁参照。

参考:山口『刑法各論』2(2010)248,判例ラクティス 刑法Ⅰ』(2012)171〕名古屋高判昭301213高刑裁特2-24-1276]

 

◇債務履行の一時猶予

刑法125/ 債務の履行や弁済の一時猶予も財産上の利益にあたり,2項詐欺罪が成立しうる。もっとも,財産的利益の具体的内実・実質的内容を問うべきであり,#債権の財産的価値が減少し_債権者に実質的な被害が生じるという特段の事情ある場合に限るべき財物の移転と同視しうるだけの具体性・確実性ある場合である。

[山口『刑法各論』2249-250(大判明44105刑録17-1598,大判大12614刑集2-537,最決34312刑集13-3-298/ 最判3048刑集9-4-827)参照]

 

◇債務履行の一時猶予

タスク 刑法411/ 債務の履行や弁済の一時猶予も財産上の利益にあたるが,2項詐欺成立要件たる「財産上の利益を得た」というには,#財物の移転と同視しうるだけの具体性・確実性が必要である。即ち,債務履行の一時免除により,債権の財産的価値が減少したなど,#実質的な被害が債権者に生じる特段の事情ある場合に限られる。

[山口『刑法各論』2(2010)249-250頁参照]

 

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◇人による交付行為に向けられた行為

刑法211/ 人を欺く行為(欺罔行為),#人による物・利益の交付行為に向けられたものでなければならない。人に向けられていない,器械の不正操作に,詐欺罪は成立しない。物の取得なら,窃盗罪成立。器械の不正操作によるサービス取得は,不可罰。虚言を弄し注意をそらせ,その間に所持品を持ち去るような場合,窃盗罪。

[山口『刑法各論』2版(2010)251頁参照]

 

◇欺罔の対象

刑法206/ 詐欺の実行行為たる「人を欺く行為」(欺罔行為)が認められるためには,#財物の交付の判断の基礎となるような重要事項につき欺くことを要する。もっとも,財物交付を求める,実行行為自体が行われずとも,#実行行為に密接で_被害を生じさせる客観的危険性が認められる行為に着手すれば,未遂罪が成立しうる。

[最判30322刑集72-1-82補足意見(裁判官山口厚)参照。参考:山口『刑法各論』2(2010)251]

 

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◇交付意思の内容(占有移転の認識)

タスク 刑法385/ 詐欺罪の成立には,#物・財産上の利益を移転する認識(占有移転の認識)を要する。判例,被欺罔者が現金入り風呂敷包みを玄関の上り口に置き,Xだけを玄関に残して便所に行ったところ,Xはその隙に現金を持ち逃げしたという事案の詐欺罪成立を肯定するが,#占有移転の認識が被欺罔者にないので,疑問である。

[山口『刑法各論』2(2010)257(最判261214刑集5-13-2518)参照]

 

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◇クレジットカードの不正使用

タスク 刑法393/ 甲は,同僚Aに頼み込み,限定品の10万円の腕時計Xを買うだけに使うという条件で,B信販会社発行のA名義クレジットカードを借りた。カードは,信販会社の所有であり,規約上名義人のみ利用でき,他人への譲渡,貸与等が禁止されていた。甲は,A本人と装って,さらに50万円の腕時計Yも購入し,事後,Aの了承を得た。

 

刑法105/ →名義人本人に成り済ました他人名義のクレジットカード不正使用は,#カード会員の個人的信用力に基づき無担保での信用許与を可能にするというクレジットカードの前提条件を偽るもの。∴詐欺罪成立。仮に甲が,名義人Aが超過額についても承諾し,利用代金は決済されると信じていたとしても,故意阻却せず。

[R29,山口『刑法各論』2264(東京高判昭6059刑月17-5=6-519,最決平1629刑集58-2-89),『ケース&プロブレム 刑法各論』(2006)弘文堂156Q61(誤信という事情につき,「詐欺罪の客観的構成要件に関する判断か,#それとも故意の存否に関する判断か」と問うており,後者によりました),各参照]

 

刑法事例演習教材(初版)13

1 甲がB店、C店でクレジットカード購入した行為について

1[問題の所在]

 他人名義のクレジットカードを用いて財物を購入した行為について、クレジットカード加盟店との関係で詐欺罪(刑法(以下略)2461)が成立するか、私文書偽造(159)および同行使罪(161)が成立するか、カードの名義人との関係で、許可の限度額を超えたカード使用について何罪が成立するか、問題となる。

2について

(1)[法的判断枠組み]

 クレジットカード名義人本人に成り済ましてカードを使用した場合、クレジットカードは、カード会員の個人的信用力に基づき無担保での信用許与を可能にする決済方法なので、このような他人名義のクレジットカードの不正使用につき、詐欺罪が成立する。その場合に、カード名義人から使用を許可され、かつ、名義人において利用代金が決済されると誤信していたとしても、詐欺罪の故意を阻却しない。

 。

(2)[事実の抽出、評価]&[結論]

 

 加盟店との関係で、1項詐欺罪が成立する。

3について

(1)[法的判断枠組み]

 

4について

 

5.罪数

 

◇他人に譲渡する意図を秘して,自己名義の預金通帳の交付を受けた行為

タスク 刑法346/ 銀行行員に対し預金口座開設を申し込むこと自体,申し込んだ本人が自分自身で利用する意思たることを表しているというべきだから,#預金通帳及びキャッシュカードを第三者に譲渡する意図なのに秘して申込みを行う行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,#これにより交付を受けた行為は詐欺罪構成。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)288最判19717刑集61-5-521参照]

 

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◇他人名義で交付を受けた預金通帳の財物性

タスク 刑法345/ 預金通帳は,#それ自体として所有権の対象となり得るものであるにととまらず_これを利用して預金の預入れ_払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから,他人名義で預金口座を開設し,それに伴い銀行から交付される場合であっても,#2461項の財物に当たると解するのが相当である。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)287〕最決平141021刑集56-8-670参照。参考:山口『刑法各論』2(2010)271]

 

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電子計算機使用詐欺罪

刑法32/ 拾得・窃取したキャッシュカードを使用し現金自動支払機で、#振替送金したときなど、電子計算機使用詐欺罪(刑法2462)が処罰する。財産権の得喪・変更に係る不実の電磁的記録の作成、財産権の得喪・変更に係る虚偽の電磁的記録の供用により、財産上不法の利益を得たとき等に限り処罰する。

[山口『刑法各論』2(2010)274頁参照。R21①参照]

 

刑法33/ 財産権の得喪・変更に係る電磁的記録(刑法246条の2)は、作出・更新により、#直接_事実上_当該財産権の得喪・変更を生じるもの。銀行の顧客元帳ファイルの預金残高記録、カードの残度数など。カードの磁気ストライプ部分中の記録や不動産登記ファイルなどは一定事実証明のもので、あたらない。

[山口『刑法各論』2(2010)275頁参照

 

(電子計算機使用詐欺)

第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。]

 

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◇窃盗犯人からの盗品の喝取

タスク 刑法353/ 被害者Aの持っていた綿糸(めんし)は盗品だから,Aは正当な権利を有しない。#but正当な権利を有しない者の所持も_所持として法律上の保護を受けるのであり,例えば窃取したものだから強取しても処罰に値しないとはいえない。恐喝罪も同様で,#賍物所持者に対し恐喝手段を用いそれを交付させた場合,恐喝罪。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)160最判2428刑集3-2-83参照]

 

権利行使と恐喝罪

刑法2/ 自力救済禁止の要請から、権利の実行が権利の範囲内をこえ、かつ、その方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度範囲を逸脱するときは、行為全体が違法となる

したがって、債権3万円なのに、6万円喝取した行為につき、6万円全額について恐喝罪(#刑法2491項)が成立する。

[山口『刑法各論』2(2010)285,286,最判301014刑集9-11-2173,参照。

Q:かつ?

A:権利の実行が権利の範囲内を越えれば、その越えた部分については違法で恐喝罪(249条)が成立するが、さらに、その方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度範囲を逸脱すると、権利の範囲内(債権3万円)の部分全体についても違法になる、という意味合いです。舌足らずですみません😅]

 

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◇被恐喝者が畏怖し財物奪取を黙認していた場合

タスク 刑法347/ 恐喝取財罪の本質は,被恐喝者の畏怖に因る瑕疵ある同意を利用する財物の領得行為であると解すべきであるから,その領得行為の形式が,被恐喝者において自ら財物を提供した場合は勿論,#被恐喝者が畏怖して黙認し居るに乗じ恐喝者において財物を奪取した場合においても,亦本罪の成立を妨ぐるものではない。

[判例ラクティス 刑法Ⅱ』(2012)323最判24111刑集3-1-1参照。2491項の「交付させた」の語義は以上の各場合を包含する。]

 

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略号: 問題,判例,その他。R論文,Q設問,T短答。orまたは,なので,ならば,なぜならば,これに対し。TB構成要件,Rw違法性(違法),S責任(有責性)

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代表取締役解職の取締役会決議において当該代表取締役は特別利害関係人にあたるか

以下,最判昭44・3・28民集23-3-645に事案を『会社法判例百選』3版(2016年)〔66〕を見て,140字に圧縮しました。その他の4つの文章は,同じ論点についてまとめたものです。

昭和30年1月5日に開催されたX社の取締役会では,代表取締役Aの解任につき,出席取締役4名のうち,2名が賛成し,Aを含む2名が反対したようです。Aは特別利害関係人(会社法369条2項)にあたるので,議決に加われなかったにも関わらず,加わったということであり,Aの議決を参入せず,結局,この時点で,A解任決議が賛成多数により可決していたというX社の主張が認められたということだと思います。

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代表取締役解職の取締役会決議において当該代表取締役は特別利害関係人にあたるか

商法196/ X株式会社の取締役Aは,Xを代表し,Xの有する債権をY株式会社に譲渡する契約を締結。but,Xは,AにはXを代表する権限がなかったとして,債権譲渡の無効確認を求めた。∵Aは、Xの代表取締役だったが,本件債権譲渡の前に,取締役会で解任が付議され,出席取締役中,Aは特別利害関係人なのでカウントされず,可決。

 

商法176/ →#代表取締役解任に関する取締役会決議については_当該取締役は_会社法369条2項にいう特別利害関係人にあたる。

代表取締役は,会社の経営,支配に大きな権限と影響力を有し,∴意思に反して解任される場合,#一切の私心を去って_忠実義務に従い公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたいから。

[最判昭44・3・28民集23-3-645参照。362条2項3号,349条1項2項4項,355条。参考:R元予備Q1出題趣旨10頁,『会社法判例百選』3版〔66〕,『LEGAL QUEST 会社法』3版(2015年)184頁]

https://www.youtube.com/watch?v=hHGeBf78fDY&t=156s

 

〇取締役会決議の瑕疵

商法197/ 会社法判例15/ 最判昭44・3・28参照:#代表取締役の解職に関する取締役会決議につき_当該代表取締役は特別利害関係人に当たる。その者が取締役会決議に参加した決議には瑕疵があり(会社法369条2項),無効。公正な決議が期待できないから。#特別利害関係人たる取締役は_決議につき意見陳述権なく_議長ならば権限を失う。

[『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』民事系116頁参照]

 

◇取締役会決議について特別の利害関係を有する取締役

商法154/ #決議に特別利害関係を有する取締役は_決議の公正を期すため_議決に加われない(会社法369条2項)。ex.365条1項の承認をする場合の取引に関わっている取締役。定足数算定からも除外。退席を要求されれば審議にも加われない。自らの代表取締役選定決議には加われるが,解職決議には加われない(⇔閉鎖型?)。

[『LEGAL QUEST会社法』3版183頁-184頁(最判昭44・3・28民集23-3-645)参照。R令元予備Q1,R28①Q1(1)]

 

商法168/ #取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は_決議の公正を期すため_議決に加われない(369条2項)。定足数算定からも除外される。

#代表取締役を選定する取締役会決議では_候補者は特別利害関係人にあたらない。他方,#解職の場合_判例は特別利害関係人にあたるとするが,閉鎖型会社では疑問。

[『LEGAL QUESAT会社法』3版(2015年)183頁-184頁(最判昭44・3・28民集23-3-645)参照。R令元予備Q1]

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以上。短い文章の羅列にすぎませんが、こういう短い記事でも、問題ないし事案を圧縮した文章と、それに対する結論の組み合わせをまとめられた、投稿したいと思います。