ミニマム法律学

法律書等を読んで,理解し覚えられるように短くまとめて行こうと思っています。ツイッター→https://twitter.com/right_droit YouTube(判例原文の音読)→https://www.youtube.com/channel/UCqVOy5zBmI3GzOI_WF5Dc6Q/featured

被疑者勾留(起訴前勾留)の要件

 [読んだものをさらりとまとめていこうと思います。]

 勾留の要件は、勾留の理由および勾留の必要である。
 勾留の理由があるとは、①罪を犯したことを疑うに足りる相当に理由があり、かつ、②住居不定、逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれのいずれかがあること、をいう(207条1項・60条)。
 たとえば、黙秘しかつ住居・氏名が不明な場合は逃亡のおそれが肯定される。罪証隠滅のおそれは、被疑者が罪証隠滅の意図を有しかつそれが客観的に可能という、現実的な可能性をいう。被疑者が黙秘・否認しているからといって、これをもって直ちに罪証隠滅のおそれがあるとはいえない。
 勾留の必要(87条1項)が認められるのは、勾留の理由はあるが、勾留に伴う不利益を勘案すると勾留を不相当たらしめるという事由がないことをいう。
 住居不定であるが確実な身元引受人がいる、軽微事案(60条3項参照)で勾留が均衡を失する場合などは、勾留の必要が欠ける。
 事案として、黙秘の態度が明確な被疑者を連日取調室に呼び執拗に尋問を繰り返し供述を求めることは、「勾留によって許容された被疑者の取調の限界を逸脱する」ものであり、「本件勾留は専ら、違法な被疑者の取調の必要に利用されている」として、87条1項を類推適用し勾留を取り消した裁判例がある(昭44年岡山地決)。
[上口『刑事訴訟法』5版90頁-91頁参照]