ミニマム法律学

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憲法・刑訴法/ GPS捜査(プライバシー侵害; 強制処分法定主義.令状主義), 写真・ビデオ撮影

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 ⚫GPS捜査によるプライバシー侵害の度合い

憲法23/ 人権23/ 110/ 本件GPSは、対象車を発見し追尾できる程に正確で搭乗者位置情報の取得と同視でき私有地という、不特定多数の者から目視され観察されることのない、プライバシー保護の合理的期待が高い空間でも、位置情報取得可能である。取付け時の私有地への侵入も想定され、プライバシー等侵害が大きい。#人権

[プライバシー等を大きく侵害する⇒身体、住居、財産等(、重要な権利・利益)の制約(・侵害)が認められる。刑訴法で、強制処分の要件の一つの認定のときにも、似たような事情を拾って、『プライバシーの保護の合理的期待が高い~』などと分析して、書ければいいな~。

 結局、対象車両の位置情報に留まらず、それは、本件GPSについては、乗車している『人の位置情報』と同視でき、それが私有地という、不特定多数の第三者から目視によって監視されることのない、『プライバシー保護の合理的期待の高い』空間に及ぶ場合があったこと、および、私有地への侵入行為も想定されることから、プライバシー等を大きく侵害する、と結論づけているのだろう。事実の評価例(プライバシー侵害するか否かのあてはめ)。

 大阪地決H27・6・5、27年度『重要判例解説』〔憲法3〕参照。]

 

憲法24/ 人権24/ 124/ GPS捜査は、プライバシーが強く保護されるべき空間も含め対象車両・使用者の所在と移動状況を逐一把握し個人の行動を継続的網羅的に把握しプライバシーを侵害しうるし、機器を個人の所持品に密かに装着する点、公道上での肉眼把握・カメラ撮影と異なり、公権力による私的領域への侵入を伴う。#人権

[最大判平29・3・15平28年(あ)442号、LEX/DB25448527参照。]

 

 ⚫強制処分

[・強制処分(刑訴法197条1項ただし書)とは、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない処分いう。その程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合がある。ただ、強制手段にあたらない有形力の行使であっても、何らかの法益を侵害しまたは侵害するおそれがあるのだから、状況のいかんを問わず常に許容されるものではなく、必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される。]

 

刑訴法51/ 505/ 強制処分(刑訴法197条1項ただし書)は,#個人意思を制圧し_身体_住居_財産等を制約し強制的に捜査目的を実現するなど,特別の根拠規定なければ許容されない処分。その程度に至らない有形力行使も,何らか法益侵害のおそれあるので,#必要性_緊急性など考慮し_具体的状況下_相当と認められる限度でのみ許容。

[最決昭51・3・16刑集30-2-187(『刑事訴訟法判例百選』10版〔1〕),R27②採点実感(刑事系科目第2問)3頁,参照。法的判断枠組み(判例)]

  

刑訴法4/ 捜査4/ 22/ 「強制の処分」(#刑訴法197条1項 ただし書)とは、人の(明示ないし黙示の)意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、重要な権利・利益の侵害となるため、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段による場合をいう。

[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版189頁、190頁、寺崎『刑事訴訟法』3版73頁注17、など参照。法的判断枠組み(条文の文言の意義)]

  

⚫令状主義

刑訴法37/ 捜査17/ 342/ 令状主義(憲法33条、35条)は、逮捕、差押えなど最も人権侵害の危険のある強制処分につき、捜査機関の判断だけに任せるのでなく、原則として、#裁判官の事前の判断(令状)を要求する制度である。全くの無実の者が拘束されるといった事態も避け得る。強制処分に対する司法的抑制の理念に基づく。

[『刑事訴訟法講義案』四訂版64頁参照。法的判断枠組み(令状主義の意義)]

 

刑訴法38/ 捜査18/ 343/ 逮捕状には、逮捕の理由となる犯罪の明示(憲法33条)、捜索・差押状は、捜索する場所・押収する物の明示を要する(同35条)。後者は場所・物を限定する趣旨である。1通の令状さえあれば、どこでも捜索し何でも押収できるというのでは、令状主義が意味をなさないからである(#一般令状の禁止)。

[『刑事訴訟法講義案』四訂版64頁、65頁参照。法的判断枠組み(令状主義の趣旨)]

 

刑訴法39/ 捜査19/ 344/ 捜査機関の請求による令状発付につき、裁判所・裁判官は当該強制処分の必要性も判断する。#司法的抑制の理念に基づく令状主義の趣旨を十分活かすためである。逮捕状については、犯罪の嫌疑(刑訴法199条1項2項)に加え、逮捕の必要性(199条2項ただし書、規則143条の3)の判断も要する。

[『刑事訴訟法講義案』四訂版65頁参照。法的判断枠組み(強制処分の必要性の判断の可否・要否)]

 

GPS捜査と強制処分法的主義,令状主義

刑訴法22/ 捜査12/ 180/ 憲法35条は、「所持品」等に準ずる私的領域へ「侵入」されない権利も保障している。個人のプライバシー侵害を可能とする機器を所持品に秘かに装着し、個人の合理的意思に反し、その私的領域に侵入する捜査手法たるGPS捜査は、個人の意思を制圧し重要な法的利益を侵害する #強制処分 にあたる。

[最大判平29・3・15平28年(あ)442号、LEX/DB25448527参照。事実の評価例(GPS捜査が、「強制の処分」(刑訴法197条1項ただし書)にあたるか)]

 

刑訴法23/ 捜査13/ 181/ #GPS捜査 は対象車両の移動状況等を把握する点、検証の性質をもつが、端末を付けた車両を通じ使用者の所在を検索する点で異なる。検証・捜索許可状でも、被疑事実と無関係の使用者の行動の、継続的網羅的で、過剰な把握を抑制できず(令状主義違反)、事前の令状呈示もできない(適正手続違反)。

[最大判平29・3・15平28年(あ)442号、LEX/DB25448527参照。事実の分析(GPS捜査の法的性質、検証許可状・捜索許可状の発付で行うことができるか?)GPS捜査という現に行われていた・いる事実としての捜査手法の分析。その法的評価・分析。]

 

⚫任意捜査

刑訴法5/ 捜査5/ 23/ 任意捜査とはいえ何らか法益を侵害し、侵害するおそれがあるから、捜査のため必要な限度、①捜査の必要性・緊急性等を考慮し、②具体的状況のもと、相当と認められる限度、でのみ許される。①事案の性質、容疑の程度、②被疑者の意思、取調べの時間帯・長さ、行動の規制状況が考慮事情となる。#刑訴法

[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版190頁参照。法的判断枠組み(事実の評価方法)]

 

◆写真・ビデオ撮影

刑訴法30/ 捜査16/ 332/ [検察官による人の容ぼう等の撮影が、現行犯・準現行犯の場合のほかは許されないというわけではない。]

#捜査機関がXを犯人と疑う合理的理由あり、かつ、強盗殺人等捜査に関し、防犯ビデオに写っていた犯人特定の証拠資料入手のため必要限度での、公道上のX、不特定多数の集まるパチンコ店内のXの容ぼう等の撮影であり、#通常人が他人から容ぼう等を観察されること自体受忍せざるを得ない場所のもの。

[⇒これらのビデオ撮影は、捜査目的達成のため、必要な範囲において、かつ相当な方法によって行われたものといえ、捜査活動として適法である。

 最決平20・4・15刑集62-5-1398(『刑事訴訟法判例百選』10版〔8〕18頁)参照。事実の評価例]

 

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