ミニマム法律学

法律書等を読んで,理解し覚えられるように短くまとめて行こうと思っています。ツイッター→https://twitter.com/right_droit YouTube(判例原文の音読)→https://www.youtube.com/channel/UCqVOy5zBmI3GzOI_WF5Dc6Q/featured

捜査の意義,端緒 (8ヶ)

◇令状主義
刑訴法37/ 342/ 令状主義(憲法33条、35条)は、逮捕、差押えなど最も人権侵害の危険のある強制処分につき、捜査機関の判断だけに任せるのでなく、原則として、#裁判官の事前の判断(令状)を要求する制度である。全くの無実の者が拘束されるといった事態も避け得る。強制処分に対する司法的抑制の理念に基づく。
[『刑事訴訟法講義案』四訂版64頁参照]

◇一般令状の禁止
刑訴法38/ 343/ 逮捕状には、逮捕の理由となる犯罪の明示(憲法33条)、捜索・差押状は、捜索する場所・押収する物の明示を要する(同35条)。後者は場所・物を限定する趣旨である。1通の令状さえあれば、どこでも捜索し何でも押収できるというのでは、令状主義が意味をなさないからである(#一般令状の禁止)。
[『刑事訴訟法講義案』四訂版64頁,65頁参照]

◇逮捕の必要性
刑訴法39/ 344/ 捜査機関の請求による令状発付につき、裁判所・裁判官は当該強制処分の必要性も判断する。#司法的抑制の理念に基づく令状主義の趣旨を十分活かすためである。逮捕状については、犯罪の嫌疑(刑訴法199条1項2項)に加え、逮捕の必要性(199条2項ただし書、規則143条の3)の判断も要する。
[『刑事訴訟法講義案』四訂版65頁参照。「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法199条1項2項,嫌疑)]

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職務質問等について
[・行政警察活動たる職務質問(警職法2条1項)においては、強制力を行使することは原則として許されない。職務質問は、いわゆる任意手段だからである(同条3項参照)。もっとも、職務質問の必要性の程度、対象者の対応・状況、実力行使の態様・程度、自由の制限の程度等を総合的に考慮して、有形力行使の必要性、緊急性、相当性の認められる場合には、必要かつ合理的な程度の実力行使が許される場合もある。職務質問の実効性を確保する必要があるからである。]

刑訴法74/ 696/ 行政警察活動たる職務質問では強制力行使は原則許されない。任意手段に過ぎないので(警職法2条1項3項)。もっとも,#質問の必要性の程度_対象者の対応・状況_自由制限の程度等を総合考慮し,有形力行使に必要・緊急性,相当性ある場合,必要・合理的な実力行使が許される場合あり。質問の実効性確保のため。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック刑事系』5版186頁,187頁(最決平6・9・16),等参照]

☆凶器の捜検(フリスク)
刑訴法事案19/ 深夜,強盗等犯罪多発地域警ら中の警察官Pらが,路地に佇んでいた甲と目が合うや,甲が慌てて走り出したので,停止を求め職務質問。シャツのへそ付近が不自然に膨らんでいたため質問したが,答えず立ち去ろうとした。Pの手が甲腹部に一瞬当たり,固い感覚があったので,#凶器等捜検のためシャツ上から触った。
[平成30年度司法試験予備試験 論文式試験 刑訴法Q1①参照。参考:寺崎嘉博『刑事訴訟法』3版95頁注8(#捜検:身体を外部から触れるにとどまる。所持品検査の一種。実務で使われる検索に相当。程度を超え,例えば内ポケットに手を入れたような場合,#捜索。),森圭司『ベーシック・ノート刑事訴訟法』新訂版(2006年)104頁]

☆米子銀行強盗事件
刑訴法事案18/ 猟銃,ナイフ所持の銀行強盗が600万円余を奪い逃走中の旨知った警察官K1は,某日,警察官K2らを指揮し緊急配備検問実施。手配人相風の男2人(X,Y)#の乗ったタクシーを停止させ職務質問したが,Xら黙秘。K1らは,座席上のバックの開披を求め,拒まれ続けたため,1時間半程後,#承諾なく_バックのチャックを開披。
[最判昭53・6・20刑集32-4-670『刑事訴訟法判例百選』10版4事件参照]

◇所持品検査について
[・いわゆる所持品検査も、警職法2条1項に基づく職務質問に付随して行うことも可能である。それは、口頭による質問に密接に関連し、質問の効果をあげる上で必要・有効といえるからである。
 いわゆる任意手段であり、所持人の承諾を要するのが原則であるが、犯罪の性質、対象者の容疑の程度・態度、証拠の性質等に鑑み、必要・緊急性が認められ、害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡等を考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる場合には、承諾なく行える場合もありうる。流動する事象に対応して迅速適正に処理すべき責務ある行政警察活動を全うする必要があるからである。]

刑訴法75/ 697/ #所持品検査も職務質問に付随し行使可。質問に密接関連し,有効なので。任意手段だから,原則_所持人の承諾要。#犯罪の性質_容疑の程度_態度_証拠の性質等から_必要・緊急性があり_個人法益と公共の利益との権衡上_具体的状況のもとで相当な場合,承諾不要。流動する事象に対応すべき行政警察活動なので。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック刑事系』5版187頁(最判平昭53・6・20)参照]

◇交通検問の根拠条文・限界
刑訴法90/ 881/ 交通検問:警察法2条1項を根拠に,#事故の多発する地域で_違反の予防・検挙のため_短時分の停止を求め質問などすることは_相手方の任意の協力を求める形で行われ_自動車利用者の自由を不当に制約することにならない方法_態様で行われる限り適法。∵警察の責務,運転者は,合理的に必要な限度で協力すべき。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』5版188頁(最決昭55・9・22)参照]

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略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。
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