ミニマム法律学

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報道の自由(芦部『憲法』5版176-182頁まとめ)

報道の自由

 

1.報道は、事実を知らせるもので、特定の思想を表明するものでないが、表現の自由(憲法21条1項)に含まれる。報道内容の編集という知的作業が行われ送り手の意見が表明され得るし、国民の知る権利に奉仕する重要性から考え、異論はない。博多駅テレビフィルム提出命令事件で最高裁も、民主主義社会おける報道は国民が国政に関与するための重要な判断資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するとする。

 

2.(1) 取材の自由取材源秘匿の自由が含まれるかにつき、判例の立場は明確でない。博多駅事件で最高裁は、「報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値いする」とする。この論理は、法廷傍聴人のメモを取る自由でも同様。

(2) 学説では、取材の自由も報道の自由の一環として憲法21条によって保障されるという見解が有力。報道は、取材・編集・発表という一連の行為で成立し、取材は報道にとって不可欠の前提をなすから。

 このように解したとしても、公正な裁判の実現を保障するため、取材活動によって得られたものが証拠として必要と認められる例外的な場合には、取材の自由がある程度制約を蒙ることになってもやむを得ない。判例は、検察官・警察官による報道機関取材ビデオテープの差押・押収まで公正な裁判に不可欠とし、適正な捜査の遂行という要請がある場合は認められるとする。しかし、裁判所と捜査機関との違いを考慮すべき。

(3) 国家秘密につき取材の自由の限界が問題となる。最高裁外務省秘密漏洩事件で、取材が真に報道の目的であり、手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものならば、「正当な業務行為」と言えるが、人格の尊厳を著しく蹂躙した取材行為等、法秩序全体の精神に照らし社会観念上到底是認することのできない不相当なものは違法とした。

 

3.電波メディアによる報道の自由を特に放送の自由と言う。放送は通常、無線通信の送信の意だが、有線放送と併せ広義の放送とされる。

 放送には新聞・雑誌など印刷メディアと違い、特別な規制がある。無線放送には、①公安・善良な風俗を害しない、②政治的公平、③事実を曲げない、④意見対立する場合、多角的に論点を明かす、⑤教養・教育・報道・娯楽の4種の番組相互間に調和を保つべき、ことが要求される(電波法3条の2第1項・2項)。