ミニマム法律学

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行政上の強制執行(『LEGAL QUEST行政法』3版173-177頁)

行政上の強制執行

 

1.民事法・行政法を問わず、自力救済すなわち、司法手続によらず自ら力づくで自己の権利を実現・確保することは、原則として禁じられている(自力救済の禁止原則)。法的平和が乱されるからである。従って、お金を貸したのに返してくれない相手方に対し、例えば給付訴訟を提起し、勝訴判決すなわち、債務名義(民執法22)の獲得と執行文の付与(25条・26)手続を経て、裁判所ないし執行官によって強制執行(差押え等)を行うことになる(司法的執行)

 ところが、行政上の義務履行確保については、行政機関に自力救済を認める法令がある。代表例が行政代執行法である。同法2条は、「他人が代わってなすことのできる行為」(金銭支払義務を除く代替性のある作為義務)に限定し行政庁自らによる強制執行(代執行)を認めている。このように法律の明文で行政機関に特に与えられた自力救済手段を、行政上の強制執行なし行政的執行と呼ぶ。

 

2行政的執行手段は従来、金銭納付義務以外の執行手段(非金銭執行)と金銭納付義務に係る執行手段(金銭執行)に区別され、前者に属するものとして①代執行、②執行罰、③直接強制、後者に属するものとして④強制徴収があげられていた。

 このような区分は戦前の行政執行法に由来する。しかし、現行法は、行政上の義務履行確保手段として代執行のみを認める(代執行中心主義)。なお、行政的執行の世界では、戦前の法制を継承し、直接強制の語は非金銭執行に限定して用いられる。これに対し司法的執行では用語上、強制徴収に当たるものも直接強制の一種とされる。

 

3.以上のように、行政上の義務履行確保手段の特徴は行政的執行(自力救済)が認められる点にあるが、現行法は、非金銭執行についてはほぼ代執行に限られるため、司法的執行に依拠せざるを得ない場合が生ずる。

 そこで、何らかの行政的執行が法定されている場合に、別に、司法的執行手段の利用が許されるかという問題が生ずる。一般に、行政的執行手段がある以上、司法的(民事)執行に頼ることはできないとされる(農業共済掛金等支払請求事件参照)

 他方学説上、特段の行政的執行手段のない場合、私人と同様、司法的執行手段を利用できるとする見解が有力である。ところが、宝塚市パチンコ店建築中止命令事件最判ではそれを認めず、学説の批判が強い。