ミニマム法律学

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訴えの提起(民事訴訟法)

民訴法について140字以内にまとめ、可能な範囲で、①法的判断枠組み、②事実の分析・評価に分けています。 twitter.com, JP Law (429bots)(@right_droit)のプロフィール - ツイフィール

 

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〔訴えの提起〕 ■訴えと請求 ■請求の複数 ■訴えの利益 ■訴え提起の効果
■訴えと請求
民訴法15/ 138/ 実体法上一般に契約に基づき、結果の実現のみ目的とする請求権を発生させ、訴求し得る。請求が常に手段の具体的な作為・不作為で特定せねばならないものでもない。代替執行により得ない場合に間接強制が用いられる。代替執行可能な請求を構成しなければ訴訟上、請求が特定しないわけではない。#民訴法
[名古屋高判昭60・4・12下民集34-1=4-461『民事訴訟判例百選』5版〔32〕参照。法的判断枠組み(判例、基礎的理論)。]

■訴えの利益
民訴法25/ 212/ #訴えの利益 は、個々の請求内容につき、本案判決による紛争解決の必要性・実効性を検討する要件である。民事訴訟制度は、被告を訴訟手続に巻き込み、公的機関たる裁判所の運営にかかるので、利用に値する事件に絞り、無益・不必要な訴えを排し制度運営の効率化、被告の応訴負担からの開放を要する。
[『民事訴訟法講義案』再訂補訂版69頁参照。R21①設問2小問(1)参照。法的判断枠組み(制度趣旨)。]

民訴法26/ 213/ #確認の訴えの利益 は、確認判決が原告の権利・法律的地位に対する現実の不安・危険の除去のため必要かつ適切な場合に認められる。確認の訴えが、権利関係の存否の観念的確定、将来の派生的紛争予防という性質を有し、権利の強制的実現の裏打ちなく、論理的に対象無限定なため、この要件を要する。
[『民事訴訟法講義案』再訂補訂版72頁参照。法的判断枠組み(概念の説明)。]

民訴法62/ 356/ 遺言は遺言者死亡により初めて効力を生ずる(民法985条1項)、遺言者はいつでも既にした遺言を取り消せる(1022条)、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡すれば効力は生じない(994条1項)のだから、#遺言者生存中は何ら法律関係は生じない。受遺者は、事実上の期待を有する地位にすぎない。
[最判平11・6・11判時1685-36(『民事訴訟判例百選』5版〔26〕58頁)参照。事実の分析・評価(「受遺者」という法的地位の分析)。法的判断枠組みにあたるのか、事実の分析評価にあたるのかの選別(分類)は微妙なものだと思います。
 判旨のこの部分は、法的判断ですが、受遺者という法的地位にあるという事実の分析とも言え、また、そういう事実にあてはまる場合に、「確認の訴えの対象となる権利又は法律関係」に該当するかという、事実のあてはめ段階とも取られます。
 とりあえずの分類です。]

民訴法63/ 357/ 遺言者の生存中は、受遺者は、事実上の期待を有する地位にあるにすぎないので、このような地位は、#確認の訴えの対象となる権利または法律関係には該当しない。遺言者が心神喪失の常況にあり、回復する見込みなく、#遺言者による当該遺言の取消・変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても、同様。
[最判平11・6・11判時1685-36(『民事訴訟判例百選』5版〔26〕58頁)参照。法的判断枠組み(下位規範)か事実の分析・評価(法的地位にあるという事実の分析・評価)か、どちらに分類すべきか、微妙。とりあえず、法的判断枠組みとする。

しかし、判例・学説の進展によって、もっと細密な分析がなされることも予想される。]

民訴法73/ 377/ 別件訴訟の訴訟代理人を相手として、当事者を代理すべき訴訟代理権を有しない旨の確認判決を求めても、#相手方は別件の単なる訴訟代理人_本件請求をした原告も第三者にすぎないことから_別件訴訟当事者を拘束する効力はない。当該別件訴訟において問題とすべきであり、本件請求は確認の利益を欠く。
[最判昭28・12・24民集7-13-1644(LEX/DB27003239)、R28③設問2、参照。事実の分析・評価。]

■請求の複数
民訴法74/ 378/ 反訴(民訴法146条1項)請求が、「本訴請求と関連する」とは、訴訟物たる権利の内容または発生原因において共通点を有すること、「防御方法と関連する」とは、#本訴請求に対する抗弁事由とその内容または発生原因において共通点を有することをいう。防御方法は実体法的に成り立つ可能性を要する。
[『民事訴訟法講義案』再訂補訂版82頁、R28③設問2参照。法的判断枠組み(手続要件についての条文解釈)。]


■訴え提起の効果


民訴法4/ 98/ いわゆる二重起訴の禁止とは、同一の訴えの提起を禁止するものである(#民訴法142条)。そこで、同条に触れるか否かは、基本的に①当事者の同一性、②審判対象の同一性をもって判断する。もっとも、訴訟経済、相手方の応訴の煩の防止、判決の矛盾抵触の回避の観点から、実質的に考える必要がある。
[『工藤北斗の合格論証集』商法・民事訴訟法(平成26年8月)146頁参照。法的判断枠組み。]

民訴法5/ 99/ 攻撃防御方法たる相殺の抗弁は、二重起訴禁止(#民訴法142条)に触れないとも思える。
しかし、現に訴求中の債権を、別訴で相殺の抗弁として提出するのは、やはり審理の重複、相手方の応訴の煩、判決の矛盾抵触を招きうる。したがって、不適法却下すべきである。併合審理されていても同様である。
[『工藤北斗の合格論証集』商法・民事訴訟法(平成26年8月)146頁、『判例百選』5版82頁参照。法的判断枠組み。]