ミニマム法律学

法律書等を読んで,理解し覚えられるように短くまとめて行こうと思っています。ツイッター→https://twitter.com/right_droit YouTube(判例原文の音読)→https://www.youtube.com/channel/UCqVOy5zBmI3GzOI_WF5Dc6Q/featured

刑訴法/ 強制処分と任意処分

 法律書等を読み140字以内でまとめています。法律論文試験の法的三段論法で,①大前提(法的判断枠組み)として使えるか,②小前提(事実の分析・評価)として使えるかなど考えています。

 規範・定義などの法的判断枠組み(法的知識)も,①大前提で使う場合もあれば,②小前提における事実の分析道具として使う場合もあれば,問題提起において,与えられた事実の分析道具(事案の問題提起)として使い,その事案で何が一番法的に問題となるのか(論点の問題提起)を導く知識として使う場合もあるんだろうなーと思います。

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●強制処分

[・強制処分(刑訴法197条1項ただし書)とは、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない処分いう。その程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合がある。ただ、強制手段にあたらない有形力の行使であっても、何らかの法益を侵害しまたは侵害するおそれがあるのだから、状況のいかんを問わず常に許容されるものではなく、必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される。]

 

刑訴法51/ 505/ 強制処分(刑訴法197条1項ただし書)は,#個人意思を制圧し_身体_住居_財産等を制約し強制的に捜査目的を実現するなど,特別の根拠規定なければ許容されない処分。その程度に至らない有形力行使も,何らか法益侵害のおそれあるので,#必要性_緊急性など考慮し_具体的状況下_相当と認められる限度でのみ許容。

[最決昭51316刑集30-2-187(刑事訴訟法判例百選』10版〔1),R27②採点実感(刑事系科目第2)3,参照。法的判断枠組み(判例)]

 

刑訴法4/ 捜査4/ 22/ 「強制の処分」(#刑訴法197条1項 ただし書)とは、人の(明示ないし黙示の)意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、重要な権利・利益の侵害となるため、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段による場合をいう。

[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版189頁、190頁、寺崎『刑事訴訟法』3版73頁注17、など参照。法的判断枠組み(条文の文言の意義)]

 

刑訴法5/ 捜査5/ 23/ 任意捜査とはいえ何らか法益を侵害し、侵害するおそれがあるから、捜査のため必要な限度、①捜査の必要性・緊急性等を考慮し、②具体的状況のもと、相当と認められる限度、でのみ許される。①事案の性質、容疑の程度、②被疑者の意思、取調べの時間帯・長さ、行動の規制状況が考慮事情となる。#刑訴法

[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5版190頁参照。法的判断枠組み(事実の評価方法)]

 

●宿泊を伴う取調べ

[・任意捜査においては、強制手段すなわち、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当できない手段を用いることが許されないのはいうまでもないが、任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、そのような強制手段によることができないだけでなく、さらに、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様および限度において、許容されるものである。]

[・Xの住居はT警察署からさほど遠くはなく、深夜であっても帰宅できない特段の事情も見当たらない上、第1日目の夜は、捜査官が同宿しXの挙動を直接監視し、第2日目以降も、捜査官らがホテルに同宿こそしなかったもののその周辺に張り込んでXの挙動を監視しており、しかもこの間午前中から深夜に至るまでの長時間、連日にわたって本件についての追及、取調べが続けられたものであって、これらの諸事情に徴すると、Xは、捜査官の意向にそうように、このような宿泊を伴う連日にわたる長時間の取調べに応じざるを得ない状況に置かれていたものとみられる一面もあり、その期間も長く、任意取調べとして必ずしも妥当なものであったとはいい難い。]

[・しかしながら、他面、Xは、初日の宿泊について「どこかの宿泊所に泊めてほしい」旨の答申書を出しており、また、記録上、Xが取調べや宿泊を拒否し、調べ室あるいは宿泊施設から退去し帰宅することを申し出たり、そのような行動に出た証跡はなく、捜査官らが、取調べを強行し、Xの退去、帰宅を拒絶したり制止したというような事実もうかがわれないのであって、これらの諸事情を総合すると、取調べにせよ宿泊にせよ、結局、Xがその意思によりこれを容認し応じていたものと認められる。]

[・宿泊の点など任意捜査の方法として必ずしも妥当とはいい難いが、Xが任意に応じていたものと認められるばかりでなく、事案の性質上、速やかにXから詳細な事情および弁解を聴取する必要性があったものと認められることなどの具体的状況を総合すると、結局、社会通念上やむを得なかったものというべく、任意捜査として許容される限界を超えた違法なものであったとまでは断じ難い。」

 

刑訴法52/ 528/ 任意捜査で,強制手段(個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等を制約し強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定なければ許容できない手段)は用いえないが,任意捜査たる被疑者取調べは,#事案の性質_容疑の程度_被疑者態度等諸般の事情を勘案し_社会通念上相当な方法_態様_限度でのみ許容される。

[最判昭59・2・29刑集38-3-479(高輪グリーン・マンション殺人事件,『刑事訴訟法判例百選』10版〔6〕)参照。任意捜査が許容されるか否かの判断の仕方]

 

刑訴法53/ 529/ X住居は遠くなく,帰宅できない特段の事情もない上,1日目夜は,捜査官が同宿しXの挙動を直接監視,2日目以降も,捜査官らがホテル周辺に張り込み監視,しかも午前中から深夜まで長時間連日,取調べが続けられたのであり,#Xは宿泊を伴う連日の長時間取調べに応じざるを得ず_期間も長く,任意取調べとして不当。

[事実の分析・評価]

 

刑訴法54/ 530/ 他面,Xは,初日宿泊時「どこかの宿泊所に泊めてほしい」旨の答申書を出しており,#記録上,取調べや宿泊を拒否,調べ室・宿泊施設からの退去,帰宅の申し出の証跡なく,取調べの強行,退去,帰宅の拒絶・制止もうかがわれないので,#諸事情を総合すると,結局,Xがその意思によりを容認し応じていたと認められる。

[小前提(事実の分析・評価例)]

 

刑訴法55/ 531/ 宿泊など任意捜査方法として必ずしも妥当とはいい難いが,Xが任意に応じていたと認められるばかりでなく,事案の性質上,速やかな詳細な事情_弁解聴取の必要性があったなど,具体的状況を総合すると,結局,#社会通念上やむを得なかったもので,任意捜査として許容される限界を超えた違法なものとはいえない。

[結論]

 

●被告人の自白を同房者を通じて得ようとする捜査手法

刑訴法6/ 捜査6/ 24/ 被告人の自白を同房者を通じて得ようとうする捜査手法は違法である。これは任意捜査の限界を超える。身柄留置を犯罪捜査に濫用するものであり、他の捜査手法を用いることが困難であったということもできないから、捜査手法として相当性を欠く。#刑訴法

[辰巳『趣旨・規範ハンドブック』刑事系5191頁(福岡地小倉支判平2035)参照。事実の分析・評価例]

 

GPS捜査

刑訴法22/ 捜査12/ 180/ 憲法35条は、「所持品」等に準ずる私的領域へ「侵入」されない権利も保障している。個人のプライバシー侵害を可能とする機器を所持品に秘かに装着し、個人の合理的意思に反し、その私的領域に侵入する捜査手法たるGPS捜査は、個人の意思を制圧し重要な法的利益を侵害する #強制処分 にあたる。

[最大判平29・3・15平28年(あ)442号、LEX/DB25448527参照。事実の評価例(GPS捜査が、「強制の処分」(刑訴法197条1項ただし書)にあたるか)]

 

刑訴法23/ 捜査13/ 181/ #GPS捜査 は対象車両の移動状況等を把握する点、検証の性質をもつが、端末を付けた車両を通じ使用者の所在を検索する点で異なる。検証・捜索許可状でも、被疑事実と無関係の使用者の行動の、継続的網羅的で、過剰な把握を抑制できず(令状主義違反)、事前の令状呈示もできない(適正手続違反)。

[最大判2931528()442号、LEXDB25448527参照。事実の分析(GPS捜査の法的性質、検証許可状・捜索許可状の発付で行うことができるか?)GPS捜査という現に行われていた・いる事実としての捜査手法の分析。その法的評価・分析。]