ミニマム法律学

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会社法 - 機関

 法律関係書を読み,140字以内にまとめ. 可能な範囲で①法的判断枠組み.②事実の分析・評価に分けています。間違い等のご指摘いただけたら有難いです、よろしくお願い致します。 https://twitter.com/right_droit  http://twpf.jp/right_droit

 

[機関]

〔機関総説〕〔株主総会〕〔取締役〕〔取締役会〕

 

〔機関総説〕
商法46/ 会社法46/ 203/ 持分会社では「社員」しか経営者(業務執行者)になれないが(#会社法590条1項)、株式会社では「株主」でない者が取締役等として経営に携われる(331条2項本文参照)。これを所有と経営の分離という。大規模・公開会社(2条5号)の経営専門家による経営者支配を、所有と支配の分離という。
[『LEGAL QUEST会社法』3版133頁、134頁参照。法的判断枠組み(概念・用語の説明)。]

 

商法51/ 会社法51/ 208/ 一定の場合、株式会社には監査役会設置義務がある。監査役3人以上。半数以上は社外監査役(#会社法335条3項)、常勤監査役(1人以上)の選定も要する(390条3項)。一定の場合、会計監査人の設置義務もある(328条)。計算書類作成の適正を監視監督する(会計監査)。公認会計士資格要。
[『LEGAL QUEST会社法』3版136頁参照。法的判断枠組み(制度の説明)。]

 

株主総会

株主総会総説
商法50/ 会社法50/ 207/ #株主総会 とは、会社の構成員たる株主により構成される、会社の意思決定機関、株主による会議体である。いなかる機関設計を採用しても、設置する必要がある(295条、326条参照)。株主の利潤追求動機(所有の契機)に基づく団体であるから、株主が意思決定に関与する必要性があるからである。
[『LEGAL QUEST会社法』3版140頁参照。法的判断枠組み(概念・用語の説明)。]

 

■招集

商法68/ 会社法68/ 272/ 招集は、株主に総会出席の機会と、議事・議決に参加する準備の機会を与える点に実質的意味があるから、これが確保される限り、口頭でも原則可能である。ただし、#取締役会設置会社では書面等による招集を要し(299条2項2号、3項)、#一定規模の会社における機会確保が制度的に担保されている。
[『LEGAL QUEST会社法』3版144頁参照。法的判断枠組み(制度趣旨、条文制度の説明)。]

 

商法39/ 会社法39/ 194/ 少数株主は、株主総会招集権を行使し(#会社法297条1項)、議題(会議の目的事項)提案、議案(議題に関する具体的提案)提出が可能である。しかし、総議決権100分の3保有要件は厳しい。そこで、議題提案権(303条1項)、議案提出権(304条)・議案通知権(305条1項)制度がある。
[『LEGAL QUEST会社法』3版146頁、147頁参照。法的判断枠組み(法的概念および制度の説明、条文の指摘)。]

 

商法40/ 会社法40/ 195/ かつて、株主提案に対し賛成票はきわめて少なく、制度の主眼は、株主への意見表明の機会付与と言われてきた。
近年、提案内容も多様化し、株主提案権行使と委任状勧誘(議決権の代理行使の株主への勧誘。#金商法194条 等による規制あり)を組み合わせ、株主提案が多くの賛成票を集める例もある。
[『LEGAL QUEST会社法』3版147頁、148頁参照。事実の分析。]

 

■議事

●説明義務

[・取締役、会計参与、監査役、執行役(取締役等)は、株主総会において、株主から特定事項についての説明を求められた場合、説明をなすべき義務を負う(会社法314条)。株主が、議案の賛否を判断するために必要な情報を充実させるためである。

 総会の場で具体的な質問がない限り #説明義務は発生しない。

 株主の質問事項が、議題に関しないものであるとき、株主の共同の利益や株式会社その他の者の権利を害するとき、説明のために調査を要するとき、実質的に同一の事項について繰り返し説明を求められたとき等は、説明をしなくともよい(314条ただし書、施行規則71条)。]

 

会社法81/ 機関41/ 434/ 取締役等は,株主総会で,株主から特定事項の説明を求められれば,#説明義務を負う(会社法314条)。議案の賛否判断のため。#総会で具体的質問なき限り義務は生じない。議題に関しない,株主の共同利益や他者の権利を害する,調査要,実質的に同一事項の繰返しなどのとき,を除く(同条ただし書,#施行規則71条)。

[『LEGAL QUEST会社法』3版149頁、150頁参照。法的判断枠組み(条文)]

 

 

●説明義務の程度

[・株主の質問により取締役等に説明義務が発生した場合に、どの程度の説明をすれば義務を果たしたことになるか。

 一般論としては、株主が議題を合理的に判断するのに客観的に必要な範囲で説明すれば足りる。平均的な株主が基準となる。

 実際に何を説明すべきかは、#具体的な議題・議案の内容、総会においてなされた株主の質問の内容によって決まる。

 退職慰労金の議案の場合には、会社法361条1項が会社から取締役に流出する額をコントロールしていることに鑑み、少なくとも確定した支給基準、その公開、その基準から支給額を具体的に算出できること、について説明すべきである。]

 

会社法82/ 機関42/ 435/ 取締役等に説明義務が発生した場合,#株主が議題を合理的に判断するのに客観的に必要な説明で足りる。何を説明すべきかは,#具体的な議題・議案や総会での質問内容により決まる。退職慰労金議案の場合,会社法361条1項が資金流出コントロールにあるので,確定した支給基準から額を算出できることの説明要。

[『LEGAL QUEST会社法』3版150頁、151頁参照。法的判断枠組み、および、事実の分析・評価例。]

 

■決議

●議決権の代理行使

[・株主は、代理人によって議決権を行使することができる(会社法310条1項前段)。株主総会に出席できない株主に、議決権行使の機会を保障するためである。具体的には、代理人株主総会ごとの代理権を授与し(310条2項)、それを証明する書面の提出により議決権行使が認められる(同条1項後段)。

 もっとも、会社としては、株主でない者が株主総会を攪乱することを防止するため、代理人資格を株主に限る旨の定款を置く場合が多い。このような定款規定は、合理的理由による相当程度の制限であり有効とされる。]

 

会社法83/ 機関43/ 436/ 代理人により議決権行使可(会社法310条1項前段)。出席できない株主の議決権行使機会の保障。株主総会ごと代理権授与し(310条2項),それを証する書面提出による(同条1項後段)。ただし,#株主でない者による株主総会攪乱の防止のため,代理人資格を株主に限る定款も,合理的理由による相当程度の制限で有効。

[『LEGAL QUEST会社法』3版154頁、R29②Q2,参照。法的判断枠組み、および、事実の分析・評価。]

 

商法37/ 会社法37/ 192/ 株主でない者による株主総会の攪乱を防止する趣旨で、代理人資格を株主に限る旨の、定款規定は、合理的理由による相当程度の制限であり、有効である(#会社法310条1項前段参照)。その場合も、仮に法人が、株主でない従業員を代理人としても、総会を攪乱させるおそれはなく、当該定款に反しない。

[『LEGAL QUEST会社法』3版153頁、154頁(最判昭43・11・1民集22-12-2402、最判昭51・12・24民集30-11-1076)、R29②Q2、参照。事実の分析・評価例。]

 

最判昭51・12・24民集30-11-1076参照

[・仮に法人(団体)がある会社の株主となっている場合、株主総会で議決権を行使するためには、代表者が行使すべきことになる。しかし、あまり現実的ではない。法人(団体)としては、職員や従業員を代理人とすべき場合が生じる。この場合に、代理人資格を株主に限る定款規定を厳格に適用すると、株主である代理人でなければ議決権を行使できず、過度の制約といえる。このように定款規定が相当程度の制限にとどまらない場合には、当該定款の効力を制限する必要がある。

 すなわち、法人(団体)の職員や従業員を代理人として株主総会に出席させ、議決権を行使させてもなんら総会の攪乱のおそれはなく、また、その行使を認めないと事実上議決権行使の機会を奪うに等しく不当である。したがって、法人(団体)の職員や従業員を代理人として議決権を行使させても、代理人を株主に限る定款規定違反とはならない。]

 

会社法84/ 機関44/ 437/ 代理人資格を株主に限る定款の #厳格適用は,株主代理人のみ議決権行使させる過度の制約,#相当程度の制限とはいえない場合がある。団体職員や法人従業員を代理人とし出席させ,議決権行使させても総会攪乱のおそれなく,認めないと事実上議決権行使機会を奪うに等しい。このような場合,定款の効力制限要。

[『LEGAL QUEST会社法』3版154頁、R29②Q2、参照。事実の評価・分析例。]

 

●書面による議決権行使

[・株主総会に出席しない株主のため、会社は、株主総会招集に際し、#書面による議決権行使を認めることができる(会社法298条1項3号)。また、株主数が1000人以上である会社では、これを定めることは義務である。

 この場合には、招集通知に際して、株主に株主総会参考書類、議決権行使書面を交付する必要がある(301条1項)。株主は、議決権行使書面に必要事項を記載し、会社に提出することによって、議決権を行使する(311条1項)。]

 

会社法80/ 機関40/ 433/ 株主総会に出席しない株主のため,招集に際し,#書面による議決権行使を認めることができる(会社法298条1項3号)。#株主数が1000人以上の会社では,必要的な義務である。招集通知に際し,株主に株主総会参考書類,議決権行使書面を交付(301条1項)。株主は,議決権行使書面に記入し,会社に提出する(311条1項)。

[『LEGAL QUEST会社法』3版154頁、155頁参照。法的判断枠組み(条文、制度)。]

 

●株主の権利行使に関する利益供与

商法38/ 会社法38/ 193/ 「株主の権利行使に関」する利益供与は禁じられる(#会社法120条1項)。総会屋対策、会社運営の健全性・公正の確保の趣旨である。会社運営上の合理性の有無で判断する。会社に好ましくない株主による議決権等行使を回避する目的で、その者から株式を譲り受ける資金の何人かへの供与も、該当する。
[『LEGAL QUEST会社法』3版158頁、159頁(最判平18・4・10民集60-4-1273)参照。法的判断枠組み(趣旨、判断基準)。事実の評価例。]

 

商法18/ 会社法18/ 95/ 「財産上の利益の供与」(#会社法120条1項)における「利益」は、金銭だけでなく権利やサービスの提供も含む。「供与」には、消極財産の解消(債務免除等)も含む。「株主の権利の行使に関し」は、株主として行使する全ての権利を含む。供与の客体は誰でもよく、会社の損害の発生も不要である。
[ 『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』民事系(平成26年1月)130頁参照。事実の評価例。]

 

〔 取締役・取締役会・代表取締役
商法44/ 会社法44/ 199/
法人や、他人の財産を預かるのにふさわしくない者は、#取締役 になれない(会社法331条1項)。
取締役会設置会社では取締役は3人以上必要である(同条5項)。
任期は、原則2年で、定款または総会決議で短縮可能(332条1項)。非公開会社では、定款で10年まで伸長できる(同条2項)。
 『LEGAL QUEST会社法』3版169頁参照。[法的判断枠組み(条文)]

商法21/ 会社法21/ 137/
累積投票制度では、取締役選任決議について、株主が株式1株につき選任される取締役の数と同数の議決権を有し(#会社法342条3項)、その議決権全部を特定の候補者に集中して投票できる。少数派株主も持株数に応じた数の取締役を選出できるが、制度自体が定款で排除される場合も多い(同条1項)。
 『会社法判例百選』2版66頁解説1参照。[法的判断枠組み(条文の説明)]

商法19/ 会社法19/ 96/
内部統制システム整備は、大会社である取締役会設置会社で義務づけられ(#会社法362条5項、4項6号、施行規則100条1項)、具体的にどのような内容のリスク管理体制を整備すべきかは経営判断の問題となる。各取締役は取締役会の一員としてその大綱の決定義務、履行についての監督義務を負う。
 『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』民事系(平成26年1月)139、141頁参照。

 

〔役員等の義務、利益衝突〕

👉別稿: http://right-droit.hatenablog.com/entry/2018/02/17/183245