ミニマム法律学

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行政法/ 訴えの利益

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◯訴えの利益(狭義)

[・取消訴訟を提起し追行するためには、当該処分取消しによって原告が現実に法律上の利益を受けることを要する。これを狭義の訴えの利益という。原告適格とあわせて広義の訴えの利益という。原告適格ある者が取消訴訟を提起する場合、通常は訴えの利益もある。しかし、当該処分の後の事情変更等によって事後的に訴えの利益が失われることもある。

 行訴法9条は「法律上の利益を有する者」に、処分または採決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなおそれらの取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者も含む旨規定している。]

 

行訴法40/ 620/ 取消訴訟を提起,追行するのに,当該処分取消しにより原告が現実に法律上の利益を受ける必要あり(狭義の訴えの利益)。原告適格ある者が訴訟提起すれば通常,訴えの利益もある。しかし,処分後の事情変更等によりそれが失われることもある。「法律上の利益」に,#回復すべき法律上の利益含む(行訴法9条1項)。

[『LEGAL QUEST行政法』3版235頁参照。(狭義の)訴えの利益とは何か]

 

◯建築確認の取消訴訟における訴えの利益

[・建築確認の取消訴訟係属中に建築工事が完了した場合、建築確認は工事を適法に行わせる効果しかなく、また、工事完了後の検査や是正命令は建築物それ自体の適法性を基準にしており、建築確認の適法性はもはや問題とならない。そして、是正命令の発動は特定行政庁の裁量に委ねられており、建築確認の適法性によって左右されるものではない。したがって、この場合、訴えの利益は否定される。]

 

行政法41/ 621/ 建築確認の取消訴訟係属中に建築工事が完了した場合,そもそも,#建築確認は工事を適法に行わせる効果しかなく,工事完了後検査や是正命令は,#建築物それ自体の適法性を基準とし,是正命令の発動も特定行政庁の裁量であり,#建築確認の適法性により左右されるものではない。よってこの場合,訴えの利益消滅。

[『LEGAL QUEST行政法』3版236頁(最判昭59・10・26民集38-10-1169,仙台市建築確認取消請求事件)参照。建築確認の取消訴訟における訴えの利益]

 

土地改良事業の施工認可取消訴訟における訴えの利益

[・土地改良事業の施工認可取消訴訟の係属中に工事が完了した場合も、①当該認可は事業施工者に事業施工権を付与するものであり、その後の一連の手続・処分は認可の存在を前提とするので、認可取消しでそれらの法的効力が影響を受ける、②工事完了により社会通念上現状回復が不可能となるとしても、事情判決(行訴法31条1項)の適用において考慮すべき事柄なので、訴えの利益を失わしめない。]

 

行政法42/ 622/ 土地改良事業の施工認可取消訴訟係属中,工事完了の場合も,①#当該認可は事業施工者への事業施工権付与であり,その後の一連の手続・処分はそれを前提とし,認可取消しで法的効力に影響,②工事完了で社会通念上現状回復不可能としても,#事情判決(行訴法31条1項)で考慮すべきで,訴えの利益を失わしめない。

[『LEGAL QUEST行政法』3版236頁(最判平4・1・24民集46-1-54,八鹿町土地改良事業施工認可処分取消訴訟請求事件)参照。現状回復が事実上困難であるというだけでは,訴えの利益は消滅しない。]

 

◯回復すべき法律上の利益

[・「回復すべき法律上の利益」(行訴法9条1項かっこ書)が認められるのは、①実体法上の請求権や②法規の定める何らかの効果が残っている場合だけである。③名誉侵害の場合は事実上の効果に過ぎず、④将来同種の処分が繰り返されるおそれ(反復の危険)がある場合も、③④いずれの場合にも訴えの利益は認められない。

 ①報酬請求等、②日弁連会長選挙規定により、懲戒処分を受けた弁護士は会長選挙の被選挙権をもたないとされる効果、などである。

 ③運転免許書停止処分、④特定年度の公共施設の使用不許可処分、などで訴えの利益が認められなかった。しかし、③について、名誉等も法的利益といえるし、④についても、特定期日の処分については争う方法がないことになる不都合がある。]

 

行政法43/ 623/ 「回復すべき法律上の利益」(行訴法9条1項かっこ書)が認められるのは,①#実体法上の請求権(報酬請求権など),②#法規の定める何らかの効果が残っている場合(日弁連会長選挙規定による効果など)だけ。③名誉侵害の場合,事実上の効果に過ぎず,④将来,同種処分の繰返しのおそれある場合も,訴えの利益なし。

[『LEGAL QUEST行政法』3版238頁-240頁(②最判昭58・4・5判時1077-50,③最判昭55・11・25民集34-6-781,運転免許停止処分取消請求事件,④最大判昭28・12・23民集7-13-1561),235頁(①最大判昭40・4・28民集19-3-721,名古屋郵政局職員免職処分取消請求事件),参照]

 

行政法/ 不作為の違法確認訴訟 - 140字法律学