ミニマム法律学

法律書等を読んで,理解し覚えられるように短くまとめて行こうと思っています。ツイッター→https://twitter.com/right_droit YouTube(判例原文の音読)→https://www.youtube.com/channel/UCqVOy5zBmI3GzOI_WF5Dc6Q/featured

訴因の特定 (刑訴法)

法律に関し,140字以内にまとめ,できる限り,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価例に分けています ( https://twitter.com/right_droit  http://twpf.jp/right_droit)。間違い等のご指摘いただけたら,ありがたいです。よろしくお願い致します。

 

■訴因の特定

●訴因の特定

[・「訴因」(刑訴法256条3項)とは、罪となるべき事実と日時・場所・方法から構成される。犯罪の日時、場所および方法は、犯罪構成要素となっている場合を除き、「罪となるべき事実」(訴因の中核的要素、犯罪事実)そのものではない。それは、訴因を特定する一手段として、「できる限り」具体的に表示すべきものにすぎない。

 罪となるべき事実の特定に資する要素は、日時、場所、方法に限られるわけではないので、これらは例示といえる。訴因の特定のために不可欠の要素ではない。もっとも、これらを記載すれば、訴因の一部を構成することになる。]

 

刑訴法46/ 公訴4/ 457/ 「訴因」は,#罪となるべき事実と日時・場所・方法から構成される(刑訴法256条3項)。後者は,犯罪構成要素の場合を除き,「罪となるべき事実」そのものではない。#訴因を特定する一手段,できる限り具体的に表示すべき。罪となるべき事実特定に資する要素はこれらに限られず,例示。#不可欠の要素ではない。

[古江『事例演習 刑事訴訟法』初版149頁,150頁(白山丸事件,最大判昭37・11・28刑集16-11-1633)参照。法的判断枠組み(条文解釈)。]

 

刑訴法14/ 公判4/ 32/ 訴因の特定(#刑訴法256条3項)の趣旨は、①審判範囲の限定、②防御範囲の明確化にある。したがって、訴因事実は、具体的に特定する必要がある。しかし、犯罪の性質から特定が困難な場合には、①②の趣旨を害しない限度で、幅のある記載も「できる限り」特定したものとして適法となると解する。

[『論証集&答案構成ノート』法学書院(2011年4月)169頁参照。法的判断枠組み]

 

■訴因変更の要否

刑訴法20/ 公判9/ 178/ 検察官による具体的な「罪となるべき事実」の主張が「訴因」であり、当該訴因事実が審判対象である(#刑訴法256条3項)。心証事実がそれと食い違えば、有罪判決できない(335条)。訴因変更手続(312条)を要することになる。それは、事実に重要なあるいは実質的な差異を生じた場合である。

[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版159頁、寺崎嘉博『刑事訴訟法』3版318頁、『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』刑事系162条、参照。法的判断枠組み(条文、基本概念)。]

 

刑訴法21/ 公判10/ 179/

 ①審判対象画定の見地から、罪となるべき事実の特定を欠かずとも、②認定事実が一般に、被告人の防御に重要な事項ならば、原則、#訴因変更手続 を要する。③ただ、防御の具体的状況等の審理経過に照らし、被告人への不意打ちとも、より不利益ともいえなければ、例外的に手続を経ずとも違法ではない。

[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版159、160頁(最決平13・4・11刑集55-3-127)参照。法的判断枠組み(手続)。]

 

■訴因変更の可否

刑訴法44/ 402/ 訴因事実と訴因事実を比較し、#事実の共通性を前提に、両訴因が別訴で共に有罪になるとしたら二重処罰関係(それが許されない関係、#非両立関係)であり、これを回避するため別訴を許さず訴因変更により、一個の訴訟手続内で解決されるべきとき、「公訴事実の同一性」(刑訴法312条1項)が認められる。

[古江『事例演習 刑事訴訟法』初版175頁~177頁参照。法的判断枠組み(私のまとめがあっているかどうか自信がありません。大澤・酒巻説(同書175頁L13あたり参照)になるのかなーと思います。)。]

[・訴因変更制度は、一個の訴訟手続の中で解決を図るべき範囲の問題である。すなわち、1個の刑罰権に関し2個以上の訴因が構成されて、それらが別訴で審判されることとなると、二重処罰の危険性が生じるので、それを回避するために、1個の刑罰権に関わる2個以上の訴因について別訴そのものを許さない方策に関する問題である。

 そうすると、訴因事実と訴因事実とを比較し、両訴因の『事実の共通性』を前提にして、両訴因が別訴で共に有罪とされるとしたら二重処罰となる関係(その意味における『非両立関係』、二重処罰は許されない関係)にあるときに、これを回避するために別訴を許さず訴因変更によるべき、一個の訴訟手続の中で解決を図るべきといえる。この場合に、「公訴事実の同一性」が認められる。]

 

刑訴法18/ 公判7/ 135/ 「Xは公務員Yと共謀し、Yの職務上の不正行為への謝礼の趣旨でWから賄賂収受」という加重収賄の訴因と「XはWと共謀し、同趣旨でYに賄賂供与」という贈賄の訴因とは、賄賂が事実上共通であれば、両立せず、一連の同一事象への法的評価が違うに過ぎず、基本的事実関係が同一であるといえる。#公判

[最決平53・3・6刑集32-2-218『刑事訴訟法判例百選』9版〔47〕参照。事実の評価例。]