ミニマム法律学

法律書等を読んで,理解し覚えられるように短くまとめて行こうと思っています。ツイッター→https://twitter.com/right_droit YouTube(判例原文の音読)→https://www.youtube.com/channel/UCqVOy5zBmI3GzOI_WF5Dc6Q/featured

2018年3月分ツイート: 59 (憲法16,行政法11;民法12,民訴法3,倒産法5;刑法5,刑訴法7)

法律書等を読んでの140字以内でのまとめ。法律論文試験で,①法的判断枠組み(大前提),②事実の分析・評価(小前提,あるいは,問題提起部分)のどちらに使えるかなど、考えています。間違い等ございましたら,ご指摘お願い致します。 twitter.com, http://twpf.jp/right_droit

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2018年3月31日(4)
民法総則10-12/ 536-538/ 占有者は所有の意思で占有するものと推定されるから(民法186条1項),占有者の占有が自主占有でないことを理由に取得時効成立を争う者は,#占有が他主占有にあたることにつき立証責任を負う。占有が自主占有かは占有開始原因事実で外形的客観的に決まり,賃貸借により開始された占有は他主占有とみられる。
[民法160条の「所有の意思をもって」という要件についての立証責任の所在]

/ 占有が自主占有かどうかは占有開始原因たる事実により外形的客観的に定められ,#賃貸借により開始された占有は他主占有とみられるので,取得時効効果の主張者が取得原因たる占有が賃貸借により開始された旨を主張する場合,#相手方が援用すれば,取得時効原因たる占有が他主占有であることにつき自白成立。
[先行自白]

/ 本件土地の占有が賃貸借により開始されたとのY供述が自白たることが明らかなので,まず自白の撤回,#真実に反しかつ錯誤に基づくものか審理し,撤回が許される場合は本件土地の占有開始時期・原因を,#撤回が許されない場合は賃貸借による占有の自主占有への変更を裏付ける新権原の存否を,それぞれ審理要。
[最判昭54・7・31判例時報942号39頁。事実のあてはめ部分]

行政法39/ 535/ ①法文の意味確定,②事実認定,③事実認定の構成要件へのあてはめ(#要件の認定),④手続の選択,⑤#行為の選択,⑥時の選択という各段階に応じ裁量の有無,裁判所による審査密度を検討。要件裁量は③,効果裁量は⑤の問題。③要件裁量の承認,④手続裁量,⑥時の裁量の登場により,行政庁の裁量領域も拡張傾向。
[『行政判例百選Ⅰ』6版〔76〕155頁,『LEGAL QUEST行政法』3版108頁,参照。行政庁の判断過程の段階ごとの考察と,裁判所による裁量統制]


2018年3月30日(1)
行政法38/ 534/ 行政行為を羈束行為と裁量行為に,後者を司法審査対象の法規裁量(羈束裁量)と対象外の自由裁量(便宜裁量)に分け,行政庁の裁量が要件の認定(#要件裁量)にあるか,行為の選択(#効果裁量)にあるか検討。行政庁の要件裁量を羈束裁量として否定し審査密度を高める試み。現在,要件の認定にも裁量を認める傾向。
[『行政判例百選Ⅰ』6版〔76〕155頁参照。行政裁量の統制についての伝統的学説(戦前)および戦後の傾向]


2018年3月29日(6)
行政法36,37/ 532,533/ #人の生命_身体に関わる利益は行政活動で常に考慮_尊重されるべきだから,国家賠償法上も法的保護利益(#反射的利益でない)。規制権限を付与した法令の目的が,例えば,水産動植物の繁殖保護なら,文言上明らかな直接目的に限らず,摂取する者の生命_健康という利益をも究極目的とみて保護範囲を拡張すべき。
[『LEGAL QUEST行政法』3版314頁-315頁(最判平16・10・5民集58-7-1802,水俣病関西訴訟)参照。規制権限に係る根拠規範の保護範囲内か(規制権限の不行使が違法となるか。大前提)]

/ 行政庁の権限行使裁量を尊重しつつ,#一定の場合_それが収縮し権限行使が義務づけられる(裁量収縮論)。#被規制者の利益より規制の受益者たる国民の生命_健康を重視すべき(健康権論),これを保護するための権限行使の裁量(行政便宜主義,自由裁量論)は認められず,#一定の場合_義務づけられる(作為義務論)。
[同書315頁参照。行政便宜主義ないし自由裁量論の否定(理論的説明)]

刑訴法55/ 531/ 宿泊など任意捜査方法として必ずしも妥当とはいい難いが,Xが任意に応じていたと認められるばかりでなく,事案の性質上,速やかな詳細な事情_弁解聴取の必要性があったなど,具体的状況を総合すると,結局,#社会通念上やむを得なかったもので,任意捜査として許容される限界を超えた違法なものとはいえない。
[最判昭59・2・29刑集38-3-479(高輪グリーン・マンション殺人事件,『刑事訴訟法判例百選』10版〔6〕)参照。結論]

刑訴法54/ 530/ 他面,Xは,初日宿泊時「どこかの宿泊所に泊めてほしい」旨の答申書を出しており,#記録上,取調べや宿泊を拒否,調べ室・宿泊施設からの退去,帰宅の申し出の証跡なく,取調べの強行,退去,帰宅の拒絶・制止もうかがわれないので,#諸事情を総合すると,結局,Xがその意思によりを容認し応じていたと認められる。
[最判昭59・2・29刑集38-3-479(高輪グリーン・マンション殺人事件,『刑事訴訟法判例百選』10版〔6〕)参照。小前提(事実の分析・評価例)]

刑訴法53/ 529/ X住居は遠くなく,帰宅できない特段の事情もない上,1日目夜は,捜査官が同宿しXの挙動を直接監視,2日目以降も,捜査官らがホテル周辺に張り込み監視,しかも午前中から深夜まで長時間連日,取調べが続けられたのであり,#Xは宿泊を伴う連日の長時間取調べに応じざるを得ず_期間も長く,任意取調べとして不当。
[最判昭59・2・29刑集38-3-479(高輪グリーン・マンション殺人事件,『刑事訴訟法判例百選』10版〔6〕)参照。事実の分析・評価]

刑訴法52/ 528/ 任意捜査で,強制手段(個人の意思を制圧し,身体,住居,財産等を制約し強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定なければ許容できない手段)は用いえないが,任意捜査たる被疑者取調べは,#事案の性質_容疑の程度_被疑者態度等諸般の事情を勘案し_社会通念上相当な方法_態様_限度でのみ許容される。
[最判昭59・2・29刑集38-3-479(高輪グリーン・マンション殺人事件,『刑事訴訟法判例百選』10版〔6〕)参照。任意捜査が許容されるか否かの判断の仕方]


2018年3月28日(6)
行政法35/ 527/ 損失補償の要否は総合考慮。①#対象が一般的でなく個別的であるほど,補償必要性大。②程度が,#財産権はく奪または本来の効用発揮を妨げるほど重大なら_受忍すべき理由なき限り補償要。③消極目的なら小。#積極目的なら大。④態様が,#本来の効用からみて財産権の内在的制約なら小。効用と無関係なら大。
[『LEGAL QUEST行政法』3版337頁-338頁(最判平17・11・1判時1928-25,最大判昭38・6・26刑集17-5-521,最判昭58・2・18民集37-1-59,東京地判平2・9・18行集41-9-1471)参照。損失補償の要否の判断の仕方]

行政法34/ 526/ 道路法70条1項の補償対象は,道路工事による土地の形状変更を直接原因とする損失に限られる。危険物の保管場所等に一定の離隔距離を保持すべき等の技術上の基準を定める警察法規により,工作物移転等を強いられ損失を被っても,#道路工事により警察法規に基づく損失がたまたま現実化したにすぎず,保障外。
[最判昭58・2・18民集37-1-59(受験新報776号(2015年10月))4頁参照。損失補償の要否]

倒産法51,52/ 524,525/ #破産管財人の報酬は,「破産財団の管理」等に関する費用(破148条1項2号)に含まれ,破産管財人自ら行った管財業務の対価として,自らその支払をして受けるのだから,#破産管財人源泉徴収義務を負う(所得税法204条1項2号)。源泉所得税の納付義務は,#共益的な支出なので_財団債権(破148条1項4号)にあたる。
[最判平23・1・14民集65-1-1(『倒産判例百選』5版〔20〕)参照。破産管財人の報酬についての源泉所得税の,破産手続における債権としての法的性格]

/ 破産管財人は,破産者から独立した地位で,破産手続開始決定前からの労働者と,直接の債権債務関係になく,#労使関係に準ずる特に密接な関係にはない。退職手当等支払の源泉徴収義務者としての地位を承継する法令上の根拠もないので,それらの「支払をする者」(所得税法199条)に含まれず,源泉徴収義務なし。
[破産手続き開始決定前の雇用関係に基づく,労働者への退職手当等の源泉徴収義務]

行政法32,33/ 522,523/ 国賠法1条1項にいう「公権力の行使」には,#公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解する。学校の教師は,学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っており,危険を伴う技術を指導する場合には事故発生防止のために十分な措置を講ずべき注意義務がある。
[最判昭62・2・6判時1232-100(『行政判例百選Ⅱ』6版〔223〕)参照。「公権力の行使」の範囲等]

/ 本件で,#スタート台に制止した状態で飛び込む方法でさえ未熟な者の多い生徒に対し_2_3歩助走をしてスタート台から飛び込む方法をさせることは_極めて危険であるから,これに対応する適切な指導,事故発生防止のための十分な措置,配慮をすべきであったのに,それをしなかった点,A教諭に,注意義務違反あり。
[事実の分析・評価部分]

 

2018年3月27日(3)
刑法各論24/ 521/ 判例における利用意思は,当初,経済的用法に従い使用・処分する意思と解されたが,経済的用法とはいいがたい場合,本来の用法に従い使用・処分する意思,#財物から生ずる何らかの効用を享受する意思でもよいと拡張。しかし,最初から被害品を携えて直ちに自首するつもりや,毀棄・隠匿の意思の場合には否定。
[山口『刑法各論』2版202頁(大判大4・5・21刑集21-663(教育勅語事件),最判昭33・4・17刑集12-6-1079,最決昭35・9・9刑集14-11-1457,東京地判昭62・10・6判時1259-137)参照。判例・裁判例]

刑法各論23/ 520/ 利用意思は,#財物から生ずる何らかの効用を享受する意思。強力な動機に基づき行われるため,責任が重く,窃盗罪の法定刑は毀棄罪のそれよりもかなり重い。#財物奪取行為について責任を加重する責任要素。遺失物横領罪の法定刑が軽いのは,#占有侵害ない点_違法性軽く_誘惑的で犯しやすい点_責任軽いため。
[山口『刑法各論』2版202頁-203頁参照。窃盗罪,毀棄罪,占有物離脱罪の罪質の比較]

刑法各論22/ 519/ 不法領得の意思は,#権利者を排除して他人の物を自己の所有物として(その経済的用法に従い)#利用_処分する意思(排除意思・利用意思)。一時使用のための財物の占有取得は,排除意思なし。利用意思により,毀棄罪と区別。排除意思は,#可罰的な法益侵害(利用妨害)を惹起しようとする意思で,#主観的違法要素。
[山口『刑法各論』2版197頁-199頁(大判大4・5・21刑集21-663(教育勅語事件),最判昭26・7・13刑集5-8-1437)参照。法定判断枠組み(大前提)]


2018年3月26日(2)
行政法31/ 518/ 不作為違法確認訴訟の原告適格は,処分(裁決)の申請者にある(行訴法37条)。#法令に基づく申請(3条5項)。取消訴訟の被告適格(11条),管轄(12条)準用。#法律に前置主義規定あれば_まず審査請求要(38条4項_8条)。訴訟提起後に処分がされた場合など,(狭義の)訴えの利益消滅。#不作為状態継続する限り提起可。
[『LEGAL QUEST行政法』3版260頁-261頁参照。訴訟要件]

行政法30/ 517/ ①許認可などを求める申請に対する不応答より生じた損害の賠償責任,②国民の生命_身体_財産等に対する危険防止のための規制権限行使の懈怠により生じた損害の賠償責任。①#不作為違法確認訴訟(行訴法3条5項_37条),#申請型義務付け訴訟(37条の3)も提起。②#規制権限行使の義務付け訴訟(37条の2)も提起。
[『LEGAL QUEST行政法』3版312頁-313頁参照。行政庁の不作為責任追求のための現行法上の制度枠組み]

 

2018年3月24日(1)

行政法29/ 516/ 権限不行使の違法は,①#国民の生命_身体_健康の毀損の危険の存在,②行政庁が危険の切迫を知り・容易に知り得た(#予見可能),③権限行使すれば容易に防止可(#結果回避可能),④行使なければ結果発生を防止できなかった(#補充性),⑤規制権限行使への被害者の期待が社会的に容認しうる(#期待可能)かで判断。
[『事例研究 行政法』2版125頁(東京地判昭53・8・3判時899-48,東京スモン訴訟第1審)参照。事例の分析・評価方法]

2018年3月22日(4)
人権59/ 515/ 立法裁量権行使は,憲法趣旨に沿い適切行使要。立法府の判断内容が政策上最適かは司法判断対象でない。#結論に至るまでの裁量権行使態様が適正か,当然考慮すべき事項を考慮せず,考慮すべきでない事項を考慮,さほど重視すべきでない事項に過大の比重を置いていないかは,司法的判断になじむ違憲審査対象。
[小山『「憲法上の権利」の作法』新版182頁-183頁(最大判平16・1・14民集58-1-56,参院議員定数不均衡訴訟平成16年判決,補足意見2)参照。判断枠組み]

人権58/ 514/ 「最低限度の生活」(生活保護法3条)は,#意味内容充填に綜合考量が必要な不確定概念で,厚生大臣に基準設定の裁量権がある。要保護者の生活に直接関係する要素だけでなく,国民所得,国の財政事情,国民感情,予算配分など,#多様な生活外要素も考慮可なら,その分行政裁量は広く,裁判所の審査密度は浅くなる。
[宍戸『憲法解釈論の応用と展開』165頁(最大判昭42・5・24民集21-5-1043の傍論,朝日訴訟)参照。判例の判断枠組みの分析]

人権56,57/ 512,513/ 公共施設管理者が,備品等破損防止のためビデオカメラ監視可とする法令に基づき行う場合,自己情報コントロール権(憲法13条)へのこの規制の目的が正当なら,手段は実質的に正当か。
カメラ設置により犯罪減少すれば効果的だが(#手段の合理性),隣のベンチに移るだけなら犯罪予防に役立たず違憲となりうる。

/ →警察官による巡回という,より緩やかな手段で犯罪予防(立法)目的を同じように達成できるなら,違憲。選択された手段に必要性がないため(#手段の必要性)。きわめて軽微な秩序違反防止のため監視という重大な制限が加えられるなら,制限によって得られる利益と失われる利益の均衡を失し,違憲(#比例原則)。
[小山『「憲法上の権利」の作法』新版16頁,14頁参照。事実の分析・評価例]


2018年3月21日(1)
人権55/ 511/ #合理的理由なく生存権保障を後退させる措置はとれない。①法令が基準額を最低限度として設定した以上,減額は最低生活水準を下回る蓋然性が高い,②憲法25条2項に基づく施策を絶えず充実拡充する要請,③#長く存続する社会保障給付に依拠し生活関係を築いてきた受給者の信頼保護から一定の制約あるから。
[曽我部ほか『憲法論点教室』147頁(宮訴訟第1審,東京地判昭49・4・24行集25-4-274。老齢加算廃止違憲訴訟福岡事件,最判平24・4・2判タ1371-89の須藤正彦裁判官意見)参照。理由付け]

 

 2018年3月分(1日-20日)ツイート: 31 (憲法11;民法9,民訴法3,倒産法3;刑法2,刑訴法3)

 2018年3月分(11日-20日)ツイート: 16 (憲法9;民訴法3,倒産法2;刑法1,刑訴法1)

2018年3月18日(3)
憲法総論3/ 510/ 立法権,司法権,行政権,憲法改正手続等についての組織規範・授権規範は憲法に不可欠だが,それは,より基本的な規範,#自由の規範たる人権規範に奉仕するもの。自然権を実定化した人権規定(実定法)は,#憲法の中核を構成する根本規範。これを支える核心的価値が人間の人格不可侵の原則(#個人の尊厳の原理)。
[芦部『憲法』5版10頁参照。法的基礎理論]

憲法総論2/ 509/ 国王といえど従わねばならない高次法(#根本法)がある。また,①人間は生まれながら自由・平等で,生来の権利(#自然権)をもつ,②#その自然権を確実にするため社会契約を結び_政府に権力行使を委任,③政府が権力を恣意的に行使し人民の権利を不当に制限する場合,#人民は政府への抵抗権をもつ(近代自然法)。
[芦部『憲法』5版5頁-6頁参照。法的基礎理論]

憲法総論1/ 508/ 専断的権力を制限し広く国民の権利を保障するという立憲主義の思想に基づく憲法が,#立憲的意味の憲法(近代的意味の憲法)。その趣旨は,#権利の保障が確保されず_権力の分立が定めらていない社会は_すべて憲法をもつものではない,ということ。その最も重要なねらいは,#権力を制限して人権を保障すること!
[芦部『憲法』5版5頁(フランス人権宣言16条)参照。法的基礎理論]


2018年3月17日(2)
人権54/ 507/ 国家は,国民一般に概括的に,社会施設の拡充増強・生活水準の確保向上責務を負い,国政上の任務を負うが,個々の国民への具体的,現実的義務はない。憲法25条で直接に個々の国民が,具体的,現実的権利を有するものではない。#社会的立法・社会的施設の創造拡充に従い,具体的,現実的生活権が設定充実される。
[最大判昭23・9・29刑集2-10-1235(『判例プラクティス憲法』増補版〔217〕参照)。一定の結論を導くための法的理由付けに使えそう。]

人権53/ 506/ 憲法25条2項は,社会生活の推移に伴う積極主義の政治として,#社会施設の拡充増強の努力を国家の任務と宣言。同条1項は,同様に積極主義であり,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得る国政運営(#生活水準の確保向上)を国家の責務と宣言。もっとも,主に,#社会的立法の制定_実施によるべき。
[最大判昭23・9・29刑集2-10-1235(『判例プラクティス憲法』増補版〔217〕参照)。事実の分析道具となる法的基礎知識。]


2018年3月16日(2)
刑訴法51/ 505/ 強制処分(刑訴法197条1項ただし書)は,#個人意思を制圧し_身体_住居_財産等を制約し強制的に捜査目的を実現するなど,特別の根拠規定なければ許容されない処分。その程度に至らない有形力行使も,何らか法益侵害のおそれあるので,#必要性_緊急性など考慮し_具体的状況下_相当と認められる限度でのみ許容。
[最決昭51・3・16刑集30-2-187(『刑事訴訟法判例百選』10版〔1〕),R27②採点実感(刑事系科目第2問)3頁,参照。法的判断枠組み(判例)]

刑法総論36/ 責任10/ 504/ 責任能力は,刑法39条,41条に規定がある。#罰しない場合が責任無能力_刑の減軽の場合が限定責任能力。責任無能力者は非難できない。#責任能力は犯罪行為時に要。責任能力は責任の要素。責任要件としての故意・過失の認定後,責任阻却事由として責任無能力が問題となる。,#個々の行為について問題となる。
[平野『刑法概説』100頁-101頁参照。法的判断枠組み(基礎理論)]


2018年3月13日(3)
倒産法50/ 破産法39/ 503/ 否認制度(破160条~176条)は,債権者を害する行為の効力を否定し責任財産充実を図る点,詐害行為取消権(民424条)と共通するが,#明文で詐害行為のみならず偏頗行為も対象とし_相手方の害意を要件としない場合があるなど詐害行為取消権より拡大強化されている。破産管財人のみによって行使される点も特色。
[『例題解説 新破産法』280頁-281頁参照。法的判断枠組み(基礎的な説明)]

倒産法49/ 破38/ 502/ 否認は,#破産手続開始前の_破産者財産を減少させ破産債権者を害し・破産債権者間に不平等な行為の効力を_破産財団との関係で否定し,財産回復を図る。手続開始後,破産財団に属する財産の管理処分権は破産管財人に移るが(破78条1項),手続開始前,財産不当廉価処分,一部債権者だけに弁済等なされうるため。
[『例題解説 新破産法』280頁参照。法的判断枠組み(基礎理論)]

民訴法95/ 501/ ①既判力は,公権的紛争解決,蒸し返し禁止の制度で,勝訴結果にかかわらず,当事者双方に生じ,職権調査事項。②参加的効力は,#補助参加人と被参加人との共同訴訟追行に基づく敗訴責任分担のための衡平の要請。被参加人敗訴の場合だけ。当事者援用要。理由中の敗訴理由となった事実認定,法律判断に生じる。
[森・『ベーシック・ノート民事訴訟法』新訂版302頁(参加的効力説,兼子・双書231頁など通説,最判昭45・10・22など),参照。法的判断枠組み(基礎理論)]


2018年3月12日(4)
人権52/ 500/ 人の生命・健康維持のため,環境破壊による個人,地域住民への被害の原因たる公害を除去,減少要。環境権は,#健康で快適な生活を維持する条件としての良い環境を享受_支配する権利。大気,水,日照等の自然的環境限定。遺跡,寺院,公園,学校等の文化的・社会的環境まで含めると広汎すぎ,権利性が薄まるので。
[芦部『憲法』5版262頁-263頁参照。法的判断枠組み等]

人権51/ 499/ 最低限度の生活水準の内容は,厚生労働大臣の裁量的決定にすべて委ねられている訳ではない。#何が最低限度の生活水準かは特定の時代の特定の社会においてある程度客観的に決定できるのでそれを下回る厚労大臣の基準設定は,憲法,生存権を具体化した生活保護法の適用上,#違憲・違法となる場合があるから。
[芦部『憲法』5版261頁参照。事実の分析・評価例等]

人権50/ 498/ 憲法25条は,政治的・道徳的義務を課したにとどまる(プログラム規定)とも説かれる。生存権は抽象的で不明確で,25条を直接の根拠に生活扶助請求権は導けないが,抽象的権利たりうる。#25条は_国に立法・予算を通じ生存権を実現すべき法的義務を課し_具体化された法律と憲法が一体として具体的権利となる。
[芦部『憲法』5版260頁参照。法的判断枠組み(基礎理論)]

人権49/ 497/ 生存権(憲法25条),教育を受ける権利(26条),勤労の権利(27条),労働基本権(28条)という社会権は,福祉国家の理想に基づき,社会的・経済的弱者を保護し実質的平等実現のために保障される。国民が人間に値する生活を営むことを保障する。法的には,#国に対する一定の作為請求権であるが_自由権的側面もある。
[芦部『憲法』5版258頁参照。法的判断枠組み(基礎理論)]


2018年3月11日(2)
民訴訟94/ 496/ 補助参加人は,自らの利益保全を最終目的とし,既存の訴訟当事者の意思に反しても参加でき,自己の名と費用投下において訴訟追行。単なる補助者ではなく,#当事者から独立した地位。しかし,独自請求を定立し訴訟当事者となるものではなく(#従たる当事者),あくまで他人の訴訟を補助する複合的性格を有する。
[『講義案民事訴訟法』再訂補訂版314頁,参照。法的判断枠組み]

民訴法93/ 495/ 補助参加の申出は,#参加の趣旨(いかなる訴訟でどちらの当事者に参加するのか),#理由(利害関係あることの事情)を明らかにし,参加後訴訟行為すべき裁判所にする(民訴法43条1項)。参加の理由具備は,当事者が異議を述べた場合に限り調査。異議が述べられたときは,参加人は,参加理由を疎明要(44条1項後段)。
[『講義案民事訴訟法』再訂補訂版313頁_314頁,森・『ベーシック・ノート民事訴訟法』新訂版301頁,参照。法的判断枠組み(条文制度)]

 

2018年3月分(1日-10日)ツイート:15 (憲法2;民法9,倒産法1;刑法1,刑訴法2)

2018年3月10日(3)
刑訴法50/ 494/ 対話の相手方が,#話者が知らないうちに会話内容を機械で正確に録音し,再生し,さらに話者(声質)の同一性の証拠として利用する可能性があることを知っておれば,#当然拒否することが予想される。拒否の機会を与えず,#秘密録音することは_相手方のプライバシー・人格権侵害。捜査機関による場合,原則違法。
[千葉地判平3・3・29判時1384-141(『刑事訴訟法判例百選』10版〔9〕)参照。事実の分析・評価]

刑訴法49/ 493/ おとり捜査は,捜査機関・協力者が身分や意図を秘し犯罪実行を働き掛け,相手方が応じ実行に出たところで現行犯逮捕等するもの。直接の被害者なき薬物犯罪等,#通常の捜査方法のみでは摘発困難な場合_機会あれば犯罪実行意思ありと疑われる者が対象なら_刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容される。
[最判平16・7・12刑集58-5-333(『刑事訴訟法判例百選』10版〔10〕)参照。事実の分析・評価例(判例)。法的な分析・評価ではあるが,法的判断枠組みたる上位規範とし大前提に使えるほどには,その抽象性・一般性が足りないと思う。
 今まで,法的判断枠組みと事実の分析・評価(例)に分ける試みを行ってきたが,法的な命題でも,答案作成時に大前提として使うべき場合と,それに至る問題提起段階で事実の分析道具として使うべき場合,ないし,事実のあてはめ段階での事実の分析道具として使うべき場合と,一つの同じ法的命題の機能・役割が,答案において変わり得るという考えに至りました。]

人権48/ 492/ 憲法17条は,国・公共団体への損害賠償請求権につき,#法律による具体化を予定。これは,#国・公共団体が公務員の行為による不法行為責任を負うのを原則とした上,公務員のどのような行為によりいかなる責任を負うかを立法府の政策判断にゆだねたものであって,#無制限の裁量権を付与する白紙委任ではない。
[・最大判平14・9・11民集56-7-1439(小山『「憲法上の権利」の作法』新版121頁,『判例プラクティス憲法』増補版〔213〕)参照。法的判断枠組み(判例)。]


2018年3月9日(2)
民法61,62/ 担保物権2,3/ 抵当権 490,491/ 債権者Sの所有する価額1000万円の甲土地に対して,Aが貸金債権800万円を担保するために抵当権を有している。Aがこの抵当権を,#AのBに対する債務1200万円を担保するための転抵当に供した。Aの債権の弁済期が2月10日,BのAに対する弁済期が1月10日のとき,Bにはどのような権能あるか。#設定はAB間だけで可。

/ #原抵当権登記に付記登記(民法376条2項)。しかし,債務者(S)や保証人,物上保証人,抵当不動産の第三取得者の弁済による原抵当権消滅を防ぐため,#原抵当権者から債務者への通知_債務者の承諾も対抗要件(377条1項)。債務者以外の者も弁済時,債務者に確認するのが普通だから。#確定日付ある通知・承諾不要。
[内田『民法Ⅲ』3版453頁参照。法的判断枠組み(条文制度)]


2018年3月8日(1)
民法60/ 契約各論8/ 489/ 注文者・請負人間では通常,施行程度が代金支払に見合い,請負人が材料提供でも,#実質的に注文者が材料費を負担している実態あり。工事途中の出来形部分の請負人(下請負人)の所有権の肯定は,請負代金債権(下請代金債権)確保のための技巧的手段。下請負人の債権は,基本的に元請負人の資力に依存するもの。
[『事例から民法を考える』292頁(最判平5・10・19民集47-8-5061可部恒雄裁判官補足意見。複合契約であれば,なぜ,親亀の背による子亀のように,下請負人は,元請負契約にも拘束されるのか)参照。事実の分析・評価例(元請契約と下請契約の関係の解釈。
 まだ,法的判断枠組み中の上位規範にまで昇華していないと思う。
 あるいは,答案の書きようによっては,法的判断枠組みとして法的三段論法の大前提として使えるかもしれない。)。]


2018年3月7日(1)
刑法総論35/ 共犯13/ 488/ 共犯行為の危険性は,#実行行為を惹起・促進する客観的危険性である必要あり。正犯がそれを実行行為に利用する可能性が考えられないではないという程度では足りない。
#犯行の具体的契機の存在や_一般的可能性を超える具体的侵害利用状況がなければ,客観的危険性は認められない(中立的行為による幇助)。
[山口『刑法総論』3版321頁-322頁(最判平23・12・19刑集65-9-1380(Winny事件)。前半,法的判断枠組み。後半,事実の分析・評価例。)]


2018年3月5日(2)
民法59/ 契約各論7/ 487/ 当事者意思を問うことなく,新築建物所有権注文者帰属特約を定型的に認定? 仮に,注文者が完成建物を引渡時検査し,基礎工事の重大契約違反により,工事やり直しが合理的な場合,取り壊される建物・廃材所有権が注文者原始的帰属とするより,#建物はいったん請負人帰属_引渡しで注文者帰属とする方が合理的。
[内田『民法Ⅱ』3版278頁参照。事実の分析・評価例。]

民法58/ 契約各論6/ 486/ 新築建物所有権。①注文者が材料全部・主要部分提供⇒原始的注文者帰属。②請負人が材料全部・主要部分提供⇒#請負人に帰属し引渡しにより注文者に移転。③請負人材料提供でも,特約あれば注文者所有。#注文者が代金全部・大部分支払済み⇒特約の存在推認。特段の事情なき限り,建物所有権は注文者帰属。
[内田『民法Ⅱ』3版276頁-277頁参照。事実の分析評価例(判例)。]


2018年3月4日(3)
民法57/ 契約各論5/ 485/ 中途解約時,出来形部分所有権,注文者帰属特約付の元請契約の元請負人からの,建物建築工事一括下請負契約は,性質上元請負契約の存在・内容を前提とし,元請負人債務を履行する目的のものだから,#下請負人は_注文者との関係で_元請負人の履行補助者的立場に立ち,元請負人と異なる権利関係を主張しえない。
[『事例から民法を考える』290頁_291頁(最判平5・10・19民集47-8-5061)参照。事実の分析・評価(判例)。]

民法56/ 契約各論4/ 484/ 注文者甲と請負人乙の元請契約,乙と下請負人丙の下請負契約につき,#基本は元請契約_その存在・内容を前提に下請け契約成立。比喩的に,元請契約は親亀,下請契約は親亀の背に乗る子亀。丙の権利義務は後者により定まるが,甲関与なくば甲に対抗できず,丙の契約施行も元請契約上の乙債務履行としてのみ可。
[『事例から民法を考える』291頁(最判平5・10・19民集47-8-5061可部恒雄裁判官補足意見)参照。事実の分析・評価例。]

民法55/ 物権総論14/ 483/ #未完成段階の動産としての価格と加工者の付加材料・工作による付加価値額との比較基準時は仕事完成時。加工量は完成建物全体について把握されるべき。一部分断し作業のある段階で,動産が法律上独立不動産たる建物になった瞬間に,従来の動産価格と,材料価格・付加価値額の合算とを比較すべきではない。
[『事例から民法を考える』294頁-295頁(最判昭54・1・25民集33-1-26)参照。法的判断枠組み(判例は,上記のように考えることは,「当然である」とする)]


2018年3月3日(3)
民法54/ 契約総論3/ 482/ 期限の定めのない債務の付遅滞には,履行請求(催告)要(民法412条3項)。541条の解除は,履行遅滞,帰責事由,相当期間を定めた催告要。しかし,#催告は相手方に最後の履行機会を与えるものなので,一度で十分。また,541条の催告の前提要件はない。したがって,#付遅滞の催告を解除の催告と兼用できると解する。
[『工藤北斗の合格論証集』民法132頁,内田『民法Ⅱ』3版89頁(帰責事由),90頁(相当の期間を定めた催告),参照(自分なりに,こういう内容だろうと言い換えて書いていますので,文献通りではありません)。法的判断枠組み(条文の解釈)]

憲法49/ 統治2/ 国会/ 481/ 内閣総理大臣は,内閣を代表して議案(#法律案含む)を国会に提出(憲法72条前段),議員内閣制の下の国会・内閣の協働,国会は法律案を自由に修正・否決できることから、内閣総理大臣が内閣を代表して法律案を提出することによる,#内閣の法律発案権(内閣法5条,)も,#国会単独立法の原則(憲法41条)に反しない。
[芦部『憲法』5版287頁,289頁,316頁参照。法的判断枠組み(制度,条文)。
https://twitter.com/toubennbenn/status/969882833433931777
を参考にしました。]

憲法/ 内閣/ 内閣提出の法律案の責任者はどなたでしょうか?
https://twitter.com/toubennbenn/status/969882833433931777

倒産法48/ 破37/ 否認権15/ 480/ 相当対価を得てした処分行為は,①#破産者の隠匿・無償供与など破産債権者を害する処分のおそれを現に生じさせる,②#行為時に隠匿等の処分意思を有していた,③#相手方がその意思を知っていた,という要件を破産管財人がすべて立証した場合に限り,否認可(破161条1項)。対象・要件を限定し取引安全に配慮。
[山本和彦『倒産処理法入門』4版102頁-103頁参照。法的判断枠組み(条文)。]

①請負契約目的物の所有権の帰属,②元請契約と下請契約の関係,③第三者による未完成建物の完成,等 (契約各論,等)

法律に関し,140字以内にまとめ,可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価(例)に分けています。間違い等のご指摘等,よろしくお願い致します。 twitter.com Read:

http://twpf.jp/right_droit

 

●土地と建物(未完成のものも含む)の関係

[・土地所有者が付合(民法242条)によって建物所有権を取得することはなく、土地と建物は別個独立の不動産である(370条参照)。建造物は、建築途上で屋根・周壁等によって外気分断性を備えた段階で、未完成であっても建物(不動産)となるが、そのような未完成建物も土地に付合しない。]

[・外気分断性のまだない未完成建物という動産(86条2項)も、土地には付合しない。付合をはじめとする添付の規定は任意規定であるところ、請負契約に基づく建物建築がなされている場合には、いずれ土地から独立した建物(不動産)となることが予定されているのだから、当事者間には添付規定の適用を排除する合意があると考えられるからである。]

 

民法50/ 物権総論11/ 468/ 建物は土地に付合(民法242条)せず,土地,建物は別個独立の不動産(370条参照)。#建築途上で屋根・周壁等により外気分断性を備え建物(不動産)となる前の未完成建物(動産,86条2項)も同様。添付は任意規定。#建築請負契約にいずれ独立した建物になるという当事者間の添付規定適用排除合意ありといえるから。

[『事例から民法を考える』285頁参照。事実の分析・評価(契約の解釈)。]

 

●建築請負における建物所有権の帰属

[・地上に建物を新築する場合の建物所有権の帰属。①注文者が材料の全部または主要部分を提供した場合、所有権は原始的に注文者に帰属する。②請負人が材料の全部または主要部分を提供した場合には、請負人が所有権を取得し、引渡しによって注文者に移転する。③請負人が材料を提供しても、特約があれば竣工と同時に注文者の所有物となる。注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、特約の存在が推認され、特段の事情のない限り、建物所有権は完成と同時に注文者に帰属する。

 もっとも、判例は、特約の存在を比較的ゆるやかに認める。]

 

民法58/ 契約各論6/ 486/ 新築建物所有権。①注文者が材料全部・主要部分提供⇒原始的注文者帰属。②請負人が材料全部・主要部分提供⇒#請負人に帰属し引渡しにより注文者に移転。③請負人材料提供でも,特約あれば注文者所有。#注文者が代金全部・大部分支払済み⇒特約の存在推認。特段の事情なき限り,建物所有権は注文者帰属。

[内田『民法Ⅱ』3版276頁-277頁参照。事実の分析評価例(判例)。]

 

●注文者帰属説の妥当性

[・建築物の所有権が注文者に帰属するという特約があったか、当事者の意思を問題とすることなく、定型的に特約の存在ありと考えるのは妥当か。

 仮に、注文者が完成建物を引渡時に検査して、基礎工事の材質や強度に重大な契約違反を見つけたとする。もし、工事のやり直しを要求するのが合理的であるなら、取り壊される建物の所有権が原始的に注文者に帰属していると考えるより(それでは、取壊し後の廃材まで注文者の物になる)、建物はいったん請負人に帰属し、引渡しを終えてはじめて注文者に帰属すると考えた方が合理的である。

 そうであれば、あえて物権法の原則に反し、また、当事者の意思を認定できない場合にまで、注文者帰属説を貫かねばならない理由に乏しい。]

 

民法59/ 契約各論7/ 487/ 当事者意思を問うことなく,新築建物所有権注文者帰属特約を定型的に認定? 仮に,注文者が完成建物を引渡時検査し,基礎工事の重大契約違反により,工事やり直しが合理的な場合,取り壊される建物・廃材所有権が注文者原始的帰属とするより,#建物はいったん請負人帰属_引渡しで注文者帰属とする方が合理的。

[内田『民法Ⅱ』3版278頁参照。事実の分析・評価例。]

 

●元請契約と下請契約の関係

[・元請契約に、契約が中途解約された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の特約があった事案において、建物建築工事を元請負人から一括下請負の形で請け負う下請契約は、その性質上元請負契約の存在および内容を前提とし、元請負人の債務を履行することを目的とするものであるから、下請負人は、注文者との関係では、元請負人のいわば履行補助者的立場に立つものにすぎず、注文者のためにする建物建築工事に関して、元請負人と異なる権利関係を主張しうる立場にはない。]

 

民法57/ 契約各論5/ 485/ 中途解約時,出来形部分所有権,注文者帰属特約付の元請契約の元請負人からの,建物建築工事一括下請負契約は,性質上元請負契約の存在・内容を前提とし,元請負人債務を履行する目的のものだから,#下請負人は_注文者との関係で_元請負人の履行補助者的立場に立ち,元請負人と異なる権利関係を主張しえない。

[『事例から民法を考える』290頁_291頁(最判平5・10・19民集47-8-5061)参照。事実の分析・評価(判例)。]

 

 

元請契約と下請契約の関係

[・基本となるのは注文者甲・請負人乙間の元請契約であり、元請け契約の存在および内容を前提として、乙と下請負人丙間に下請契約が成立する。比喩的にいえば、元請契約は親亀であり、下請契約は親亀の背に乗る子亀である。丙は乙との間で契約を締結した者で、乙に対する関係での丙の権利義務は下請契約によって定まるが、その締結が甲の関与しないものである限り、丙は下請契約上の権利をもって甲に直接対抗することはできず、丙のする下請契約の施行も、甲乙間の元請契約の存在と内容を前提とし、元請契約上の乙の債務の履行としてのみ許容される得る。

 このように、注文者甲に対する関係において、下請負人丙はいわば元請負人乙の履行補助者的立場にあるものにすぎず、下請契約が元請契約の存在と内容を前提として初めて成立し得るものである以上、特段の事情のない限り、丙は、契約が中途解除された場合の出来形部分の所有権帰属に関する甲乙間の約定の効力をそのまま承認するほかない。甲に対する関係において丙は独立平等の第三者ではなく、基本となる甲乙間の約定の効力は、原則として下請負人丙にも及ぶ。子亀は親亀の行先を知ってその背に乗ったものであるからである。]

 

民法56/ 契約各論4/ 484/ 注文者甲と請負人乙の元請契約,乙と下請負人丙の下請負契約につき,#基本は元請契約_その存在・内容を前提に下請け契約成立。比喩的に,元請契約は親亀,下請契約は親亀の背に乗る子亀。丙の権利義務は後者により定まるが,甲関与なくば甲に対抗できず,丙の契約施行も元請契約上の乙債務履行としてのみ可。

[『事例から民法を考える』291頁(最判平5・10・19民集47-8-5061可部恒雄裁判官補足意見)参照。事実の分析・評価例。]

 

 

●元請契約と下請契約の関係

[・元請契約と下請契約との関係につき、下請人が下請けであることを認識して契約関係に入っているのであれば、元請契約と下請契約は密接相互に関連する複合契約を構成するものであり、下請負人は、元請契約にも拘束されることが正当化されるといえる。]

 

●未完成建物を第三者が完成させた場合における完成建物の所有権帰属

[・未完成建物の出来形部分の所有権が注文者でなく、請負人・下請負人に帰属する場合に、第三者がそれをもとに建物を完成させたとき、契約関係はないので、もっぱら物権法理により処理される。]

[・建物建築については加工の規定が適用される。なぜなら、動産に動産を単純に付合させるだけでそこに施される工作の価値を無視してもよい場合と異なり、建物建築のように、材料に対して施される工作が特段の価値を有し、仕上げられた建物の価格が原材料のそれよりも相当程度増加するような場合には、むしろ民法の加工の規定に基づいて所有権の帰属を決定するのが相当であるから。]

 

民法51/ 物権総論12/ 469/ 未完成建物の出来形部分所有権が注文者でなく請負人等に帰属し第三者が建物を完成させた場合,#契約関係ないため物権法理で処理。動産に動産を単純付合させ工作価値を無視しうる場合と違い,#建物建築は材料に施される工作が特段の価値を有し_完成価格が原材料より相当程度増加するので,加工規定による。

[『事例から民法を考える』293-294(最判54125民集33-1-26)参照。事実の分析・評価例。]

 

民法55/ 物権総論14/ 483/ #未完成段階の動産としての価格と加工者の付加材料・工作による付加価値額との比較基準時は仕事完成時。加工量は完成建物全体について把握されるべき。一部分断し作業のある段階で,動産が法律上独立不動産たる建物になった瞬間に,従来の動産価格と,材料価格・付加価値額の合算とを比較すべきではない。

[『事例から民法を考える』294頁-295頁(最判昭54・1・25民集33-1-26)参照。法的判断枠組み(判例は,上記のように考えることは,「当然である」とする)]

 

●添付規定によって出来形部分の所有権を失う場合

[・添付規定によって、添付物の所有権を失う当事者は、所有権を取得した当事者に、償金請求できる(民法248条・703条・704条)。この場合、添付規定を「法律上の原因」として所有権を取得しているので、一般の不当利得(703条・704条)の要件は具備しないが、所有権取得者は、所有権を失う者の損失において(対価を支払うことなく)利得しているという実質があるから、248条は償金請求権を規定し、その内容は703条・704条に従うものとしたものである。]

 

民法53/ 物権総論13/ 479/ 添付規定により,添付物の所有権を失う当事者は,所有権を取得した当事者に,償金請求可(民法248条・703条・704条)。#添付規定を「#法律上の原因」としての利得なので,#一般不当利得要件は具備しないが,利得者は,#所有権を失う者の損失において_対価支払いなく_利得する実質がある。これが248条規定理由。

[『事例から民法を考える』297頁参照。法的判断枠組み(条文制度の説明)。]

 

■不当利得

●転用物訴権

法定債権5/ 394/ 本件ブルドーザー修理はA社依頼によるので、XはA社に修理代金債権を取得するから、修理によるYの利得はいちおうA社の財産に由来し、XはYにこの利得の返還請求権を有しないが、A社無資力のため、#その修理代金債権の全部・一部が無価値な限度で、Yの利得はXの財産・労務に由来するといえる。

[最判昭45・7・16民集24-7-909(『民法基本判例集』2版〔249〕282頁)参照。事実の分析・評価。賃借人が賃借物の修理を依頼した場合、原則、修理は、賃借物の所有者の修理による利得に対し、直接の因果関係を認められないが、例外的に賃借人が無資力で、修理代金債権が無価値ならば、その限度で直接の因果関係が認められる、という法的判断枠組み(規範)を定立しているのであろうか?]

 

[・甲・乙間の契約に基づいて甲から乙に給付がなされたが乙から甲に対する対価支払いがなされていない場合において、その利得がさらに乙から丙に移転したときに、甲が(乙に対する債権があるにもかかわらず)契約関係にない丙に対してその利得の返還を求める権利が転用物訴権である。

 しかし、これでは、丙が乙に対してその利得の対価を支払っている場合には、丙に二重支払を強いることになって不適切だし、甲も本来は乙の一般債権者なのであって乙の無資力のリスクは、甲が負うべきである。

 したがって、転用物訴権が成立するのは、上記の丙が対価関係なしに利得を受けたときに限られると解すべきである(判例参照)。]

 

民法52/ 法定債権6(不当利得)/ 478/ 甲乙間契約に基づき甲が乙に給付したが,対価支払いなく,乙の利得が丙に移転した場合,#甲が_乙に債権をもつにもかかわらず_契約関係にない丙に利得返還を求める権利が転用物訴権。丙が支払っている場合,二重支払,甲も乙の一般債権者にすぎず,不適切。#丙が対価関係なしに利得を得たときに限られるべき。

[『事例から民法を考える』297頁-298頁(最判昭45・7・16民集24-7-909(ブルドーザー事件),最判平7・9・19民集49-8-2805)参照。事実の分析・評価例(判例)]

 

最判平29・9・8裁時1683-3について (行政法)

法律に関し,140字内にまとめ(https://twitter.com/right_droit http://twpf.jp/right_droit)、可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価(例)に分けています。
そのほか、補足説明等を、[ ]内の文章に記載しています。間違い等のご指摘いただけたら有難いです。よろしくお願い致します。

 

最判2998裁時1683-3について

[・公健法(公害健康被害の保証等に関する法律)は,#障害補償費の支給に要する費用を,都道府県等がこれを支弁するとするが(47),42項認定を受けた者に対する障害補償費の支給に要する費用は,全額を独立行政法人環境再生保全機構により原因者から徴収する特定賦課金で充て(481,492,施行令261),最終的に原因者に負担させる。このような同法の仕組み等に照らせば,42項の認定を受けた者に対する障害補償費は,これらの者の健康被害に係る損害の迅速な填補という趣旨を実現するため,原因者が本来すべき損害賠償義務の履行に代わるものとして支給されるものと解するのが相当で,131項もこのことを前提とする。

 そうすると,都道府県知事は,同項の認定を受けた者が,当該認定に係る疾病による健康被害につき原因者に対する損害賠償請求訴訟を提起して判決を受け,民事上の損害賠償義務の全ての履行を既に受けている場合には,公健法に基づく障害補償費の支給義務の全てを免れる]

 

行政法27/ 472/ #障害補償費の支給費用は都道府県等が支弁し(公健法47条),4条2項認定者への障害補償費の支給費用は全額,原因者から徴収する特定賦課金で充て(48条1項,49条2項),最終的に原因者負担。#健康被害に係る損害の迅速な填補という趣旨で原因者が本来すべき損害賠償義務の履行に代わり支給されるものと解する。

[最判平29・9・8裁時1683-3(新・判例解説 Watch行政法 No.183)参照。法的判断枠組み。]

 

行政法28/ 473/ 公健法4条2項認定者への障害補償費は,損害の迅速な填補の趣旨,原因者が本来すべき損害賠償義務の履行に代わる支給(13条1項も同じ前提)。都道府県知事は,#認定者が_原因者への損害賠償請求訴訟判決で民事上_損害賠償義務全ての履行を受けている場合,公健法に基づく障害補償費の支給義務の全てを免れる。

[最判平29・9・8裁時1683-3(新・判例解説 Watch行政法 No.183)参照。事実の分析・評価例。]

 

[公害健康被害の補償等に関する法律 (昭和四十八年十月五日法律第百十一号)

 

(目的)

1条「この法律は、事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁(水底の底質が悪化することを含む。以下同じ。)の影響による健康被害に係る損害を填(てん)補するための補償並びに被害者の福祉に必要な事業及び大気の汚染の影響による健康被害を予防するために必要な事業を行うことにより、健康被害に係る被害者等の迅速かつ公正な保護及び健康の確保を図ることを目的とする。」

 

(認定等)

4条2項第二種地域の全部又は一部を管轄する都道府県知事は、当該第二種地域につき第二条第三項の規定により定められた疾病にかかつていると認められる者の申請に基づき、当該疾病が当該第二種地域に係る大気の汚染又は水質の汚濁の影響によるものである旨の認定を行なう。前項後段の規定は、この場合について準用する。

 

(補償給付の免責等)

13条1項補償給付を受けることができる者に対し、同一の事由について、損害の填(てん)補がされた場合(次条第二項に規定する場合に該当する場合を除く。)においては、都道府県知事は、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れる。

 

(費用の支弁)

47条「都道府県又は第四条第三項の政令で定める市は、次に掲げる費用を支弁する

一当該都道府県知事又は当該市の長が行なう補償給付の支給(第十四条第二項の規定による求償に対する支払を含む。以下この章において同じ。)に要する費用

二この法律又はこの法律に基づく命令の規定により当該都道府県知事又は当該市の長が行なう事務の処理に要する費用

 

(納付金)

48条1項「前条の規定により都道府県又は第四条第三項の政令で定める市が支弁する前条第一号に掲げる費用は、政令で定めるところにより、機構が当該都道府県又は第四条第三項の政令で定める市に対して納付する納付金をもつて充てる。」

 

(納付金の財源)

49条2項「前条の規定による納付金のうち、第四条第二項の認定に係る被認定者及び認定死亡者に関する補償給付の支給に要する費用に充てるためのものの全部並びに第二種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の二については、第六十二条第一項の規定により機構が徴収する特定賦課金をもつて充て、第二種地域に係る指定疾病による被害に関して行なう公害保健福祉事業に要する費用に充てるためのものの三分の一については、第五十一条の規定に基づく政府の補助金をもつて充てる。」]

 

[公害健康被害の補償等に関する法律施行令 (昭和四十九年八月二十日政令第二百九十五号)

 

(納付金の額)

26条1項「法第四十八条第一項の規定により機構が都道府県又は法第四条第三項の政令で定める市に対して納付する納付金の額は、各年度において、都道府県知事又は同項の政令で定める市の長が行う補償給付の支給に要する費用の額(その額が当該年度において現に要した費用の額を超えるときは、現に要した費用の額)の全額に相当する額とする。」]

 

会社法/ 計算・債権者保護制度

法律に関し,140字以内にまとめ,可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価(例)に分けています。間違い等のご指摘等,よろしくお願い致します。 twitter.com 

http://twpf.jp/right_droit

 

●会計と法規制

[・会社が自らの財政状態や経営成績を定期的に把握し、関係者(株主、会社債権者など)に開示することを、#会計 という。株式会社は、事業を行い、その利益を株主に分配する(会社法105条2項参照)。そのための前提として、会計が必要である。

 会社の利益は、①#会計帳簿(会社法432条1項、2項)、具体的には、元帳、仕訳帳、伝票、②#計算書類・事業報告書・附属明細書(連結計算書類が作成されることもある。#決算)の、2つの段階を経て記録される。複式帳簿という方法による。

 会計についてのルールは、会社法に定められるほか、会社法施行規則、会社計算規則、金融商品取引法法人税法など、に定められている。しかし、具体的に定めるべきルールは膨大で、その変化も速いため、法令で全てを定めるのではなく、一般に公正妥当と認めれる企業会計の慣行(#公正な会計慣行)に従うべきものとされる(会社法431条、計算規則3条も参照)。これによって、特段の事情がないにもかかわらずそのような慣行に従わないことは、会社法に反することになる。企業会計審議会が定めた #企業会計原則 や、公益財団法人財務会計基準機構企業会計基準委員会の設定する会計基準などが、そのような慣行にあたる。

 1つの事実について複数の会計処理のいずれかを会社が選択できる場合、原則として会社は選択した会計処理方法を継続して適用しなければならない。正当な理由なくみだりに変更してはならない(#継続性の原則)。]

 

会社法94/ 計算3/ 470/ 会社利益は,①#会計帳簿(会社法432条,元帳,仕訳帳,伝票),②#計算書類・事業報告書・附属明細書の2段階(決算)を経て記録(複式帳簿)。会計ルールは,会社法,施行規則,計算規則,金融商品取引法,法人税法などに規定。具体的ルールは膨大,変化も速いため,#公正な会計慣行に従うべきもの(431条,計算規則3条)。

[『LEGAL QUEST会社法』3版256頁-257頁参照。法的判断枠組み(制度,条文)。]

 

●閲覧謄写請求た株主の親会社と請求を受けた会社とが競争関係にある場合

商法17/ 会社法17/ 87/ 閲覧謄写請求した株主の親会社と、請求された会社とが競争関係にある場合、#会社法433条2項 3号の「請求者」と「実質的に競争関係」にある場合にあたる。競業者等が会計帳簿等の閲覧等により会社の秘密を利用し、会社に甚大な被害を生じさせないよう未然に防止する必要は変わらないからである。

[辰巳『趣旨・規範ハンドブック2民事系』6355頁(東京地判平19・9・20)参照。事実の分析・評価例。]

 

●分配可能額の規制に違反する剰余金の配当等

[・会社債権者の利益保護のために分配可能額が定められ、剰余金の配当等はその限度内でしか許されない(会社法461条)。この規制の実効性確保のため、違反して剰余金配当等が行われた場合、一定の者に会社に金銭を支払う義務が負わされる。]

[・まず、分配可能額規制違反の行為により金銭等の交付を受けた者は、交付を受けた金銭等すべての帳簿価額に相当する金銭を、会社に対して支払う義務を負う(462条1項柱書。同条3項ただし書参照)。過失の有無を問わないが、免除について制限がない。

 会社の債権者は、債権額の範囲内で、義務を負う株主に対し、自己への支払いを請求できる(463条2項)。]

[・金銭等の交付を受けた者に支払い義務を履行させることが難しい場合もあるので、会社法は、①当該行為に関する職務を行った業務執行者(462条1項柱書)と、②総会議案提案取締役・取締役会議案提案取締役等(同条項各号、計算規則160条・161条)にも責任を負わせる。

 すなわち、①②の者は、分配可能額規制に違反して配当された剰余金等の帳簿価額の総額に相当する金銭を、連帯して会社に支払う義務を負う。

 ①②の者は、その職務を行うについての無過失を証明すれば、義務を免れる(462条2項)。また、それらの義務は、行為時の分配可能額を限度として、総株主の同意によって免除できる(同条3項)。

 ①②の者が義務を履行すれば、金銭等の交付を受けた者に求償できる。ただし、違反につき善意であった株主は求償義務を負わない(463条1項)。]

[・分配可能額規制違反の剰余金配当等につき、監査役や会計監査人なども、会社に対して任務懈怠責任を負う可能性がある(423条1項。]

 

会社法93/ 計算2/ 470/ 社債権者利益保護のため,分配可能額内でのみ剰余金配当等が可(会社法461条)。実効性確保のため,違反した剰余金配当等につき,一定の者は会社への金銭支払義務を負う。金銭等の交付を受けた者は,#交付を受けた金銭等すべての帳簿価額に相当する金銭支払義務を負う(462条1項柱書)。過失の有無問わない。

[『LEGAL QUEST会社法』3版285頁,R23②,参照。法的判断枠組み(条文制度)。]

 

責任財産の保全 (債権総論)

 

法律に関し,140字内にまとめ( @right_droit , http://twpf.jp/right_droit)、可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価(例)に分けています。間違い等ありました、ご指摘お願い致します。

 

責任財産保全(債権の対外的効力)〕

債権者代位権

債権者代位権

[・債権者代位権の要件は、①債権保全の必要性(債務者の無資力)、②債務者が代位対象となる権利を行使していないこと、③代位対象となる権利が債務者の一身に専属する権利でないこと、④被保全債権が弁済期にあること(ただし、裁判上の代位、保存行為の場合はこの要件は不要)、である(民法423条1項2項)。

 債権者代位権は、責任財産保全を趣旨とするから、原則として被保全債権は金銭債権であるが、例外として、非金銭債権の保全に転用される場合があり、その場合、①の債権保全の必要性(債務者の無資力)の要件は不要である。

 要件③は、権利行使について権利主体の意思を尊重するためのものである。したがって、離婚に伴う財産分与請求権、名誉毀損を理由とする慰謝料請求権については、具体的な金額が確定した後にのみ、代位行使可能と解すべきである。遺留分減殺請求権については、遺留分権利者が権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債務者の一身に専属する権利にあたると解すべきである。

 債権者代位権は建前上、総債権者の共同担保として責任財産保全を目的とする制度ではあるが、判例上は、代位債権者に対して事実上の優先弁済効が生じることが認められている。]

 

民法48/ 債権総論14/ 460/ 債権者代位権,①債権保全の必要性(#債務者無資力),②債務者が権利未行使,③債務者の一身専属権でない,④被保全債権が弁済期(裁判上代位,保存行為除く)が要件(民法423条)。#責任財産保全の趣旨から,原則,金銭債権限定。例外,転用事例(①不要)。要件③,離婚に伴う財産分与請求権など,#具体的金額確定要。

[『基本から合格答案を即効で書けるようになる本②民事系』59頁参照。法的判断枠組み。]

 

 

■詐害行為取消権

詐害行為取消権

[・詐害行為取消権の要件は、①被保全債権が詐害行為前に存在していること、②債務者の無資力、③詐害行為、④債務者の詐害意思、⑤受益者または転得者の悪意、⑥財産権を目的とする法律行為を債務者が行ったこと、である(民法424条1項2項)。

 廉価売却や贈与など、客観的に責任財産を減少させることが明白な行為であれば、端的に③の詐害行為の要件をみたす。問題となるのは、計数上は責任財産を減少しないが詐害性が認められるような行為、たとえば、相当価格による不動産売却、弁済、相当価格による代物弁済、担保設定などである

 詐害行為取消権は責任財産保全するためのものなので(制度趣旨)、取消しの対象は財産権を目的とする法律行為に限られる。この点、財産処分の性質を有する身分行為、たとえば、離婚に伴う財産分与については、問題となる場合がある。判例は、民法768条の規定の趣旨(共同財産の清算、扶養、慰謝料)に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とならない、旨判示する。すなわち、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約、ないし、対価を欠いた新たな債務負担行為というべき場合には、詐害行為取消権の対象となる。

 詐害行為取消権の法的性質としては、詐害行為を取り消し、かつ、逸出財産の取戻しを請求するというものである。被告となるのは、受益者または転得者である。取消しの効果は、債権者と被告との間でのみ相対的に生じる。債務者との間では、取消対象の法律行為は以前有効である。]

 

 

民法40/ 債権総論9/ 417/ 詐害行為取消権の要件は,①被保全債権が詐害行為前に存在していること,②債務者の無資力,③#詐害行為,④債務者の詐害意思,⑤受益者または転得者の悪意,⑥財産権を目的とする法律行為を債務者が行ったこと,である(民法424条1項2項)。③は,計数上は責任財産を減少しないが詐害性が認められる行為が問題。

[『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』民事系57頁参照。法的判断枠組み(条文)。

 従来の判例は、不動産の売却は、価格が相当でも #詐害行為 になりうるとしてきた(大判明39・2・5民録12-133等)。現金に代わってしまうと、勝手に使われてしまう可能性が高まるからである。ただし、抵当権を消滅させるための弁済資金を調達することを目的とした不動産売却は詐害行為にならないとしたものがある(最判昭41・5・27民集20-5-1004)。他方、動産の相当対価での処分は、(改正破産法と同様、)取消しの対象とならないと考えるべきだろう(内田『民法Ⅲ』3版312頁、313頁参照)。https://twitter.com/right_droit/status/946040399717482497]

 

民法21/ 債権総論5/ 266/ 詐害行為取消権の対象は原則、財産権を目的とする行為であり、身分行為は取消しの対象とならない(民法424条2項)。もっとも、財産分与(768条)が #不相当に過大で債権者を害する場合、過大な部分は取り消しうる。当該部分は財産分与に仮託した隠匿行為といえ、身分性は失われるからである。

[『工藤北斗の合格論証集』民法2版99頁(最判昭58・12・19、最判平12・3・9)参照。法的判断枠組み(判例)。判例の原文までは読んでいませんので、言い回し等異なる場合もあるかもしれません。各自でご確認下さい。]

 

民法22/ 債権総論6/ 267/ 財産権を目的としない法律行為」(#民法424条2項)は、婚姻、離婚、養子縁組、相続の承認等である。もっとも、離婚に伴う財産分与につき、#768条3項の趣旨に反し不相当に過大で、#財産分与に仮託してされた財産処分と認めるに足りるような特段の事情があれば、詐害行為取消し対象となる。

[内田『民法Ⅲ』3版307頁(最判昭58・12・19民集37-10-1532)参照。法的判断枠組み(判例)。]

 

 

民法23/ 債権総論7/ 268/ 取消し(民法424条)の対象は狭義の法律行為に限定されず、#履行行為たる弁済も含まれる。しかし、#登記や債権譲渡通知等の対抗要件具備行為は含めるべきでない。厳格に債権者間の公平を求める破産手続等における否認さえ、対抗要件具備が本来履行行為であることから限定的にすぎないからである。

[内田『民法Ⅲ』3309頁参照。法的判断枠組み(制度間の比較)。破164条参照。]

横領罪 (刑法各論)

法律に関し,140字内にまとめ(https://twitter.com/right_droit ; http://twpf.jp/right_droit)、可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価(例)に分けています。間違い等ありました、ご指摘お願い致します。

 

■横領罪 (●総説 ●客体 ●横領行為 ●罪数 ●業務上横領罪)

 

●総説

刑法各論15/ 317/ 委託物横領罪は、①#物の所有権が第一次的な保護法益であり、②委託関係、すなわち、#委託に関する財産上の利益が、副次的保護法益である。窃盗罪における占有侵害に対応する法益侵害だが、#委託関係は物の占有よりも弱いものなので、法定刑は軽い。#賃借権や質権を侵害しても横領罪は成立しない。

[山口『刑法各論』2版288頁(大判明44・10・13刑集17-1698)、289頁参照。法的判断枠組み(保護法益)。]

 

 

●客体

刑法26/ 各論6/ 301/ #被害者への返還にそなえる必要があるという意味で、#無権限者による保管の委託も保護に値する。委託物横領罪の委託関係はその場合も含むと解する。窃盗犯人が保管を委託した盗品につき、同罪が成立しうる。もっとも、#それが盗品保管罪を構成する場合、保護に値せず、遺失物等横領罪の問題となる。

[山口『刑法各論』2版293頁参照。事実の分析。記述の意味するところが、今一つ理解できていません。自分なりに考えて、①保管者に盗品性の認識のない場合、②盗品性の認識のある場合(=犯罪行為となる)に分けて書いています。後日、訂正するかもしれません。]

 

 

刑法各論12/ 314/ 委託された金銭の保管手段として預金する場合、預金による金銭の占有を否定すれば、#払い戻す金銭につき横領罪が問題になるが、#振込・振替送金の場合に金銭を手にしないので、#委託物横領罪は成立せず背任罪が問題となるにどどまり均衡を失する。したがって、#預金による占有を肯定すべきである。

[山口『刑法各論』2版295頁(大判大元・10・8刑録18-1231)参照。法的判断枠組み(基礎理論)。R21①参照。]

 

刑法各論13/ 315/ 預金の占有は、事実上の処分可能性でなく、#銀行および預金者に対する関係で認められる預金の払戻権限で基礎づけられる。払戻権限を有する者に(一定の金額につき)預金の占有が認められる。預金通帳と登録印鑑を窃取した犯人が払戻しを行った場合、払戻権限がないので銀行に対する詐欺罪が成立する。

[山口『刑法各論』2版295頁(最判昭25・2・24刑集4-2-255)参照。法的判断枠組み(法的概念に該当するかの判断基準)]R21①参照。]

 

 

刑法25/ 各論5/ 300/ 振込依頼人の過誤による誤振込の場合、銀行は誤振込だとを知れば、民事判例上の預金債権成立にもかかわらず、受取人への支払拒絶をする正当利益が認められる。#正当な払戻権限を根拠とする預金の占有には、#誤振込か確認し一定措置をとるべき利益からの制約が及び、銀行に対する詐欺罪が成立しうる。

[山口『刑法各論』2版297頁、298頁LL7「振込依頼人の過誤によって生じた場合」参照。事実の分析(一定の制約を付した預金の占有を肯定)。]

 

 

 

刑法7/ 各論3/ 72/ 金銭流通の動的安全から、民事上金銭の所有と占有は一致するが、内部的所有権保護を目的とする委託物横領罪には妥当しないので、債権取立てを委任されて取り立てた金銭を不法に領得した場合、委託物横領罪(#刑法252条)が成立する。ただ、金銭は特定しないので、両替・一時流用などは該当しない。

[山口『刑法各論』2版302頁参照。法的判断枠組み(判例)。最判昭26・5・25刑集5-6-1186、大判昭8・9・11刑集12-1599等、参照。]

 

●横領行為

刑法各論16/ 324/ 「横領」(刑法252条)とは、#不法領得の意思を実現する一切の行為をいう。委託物横領罪の法定刑が器物損壊罪の法定刑より重いのは、窃盗罪の場合と同様、#物の効用の取得という強力な動機の存在に基づく責任加重に求めるべきだからである。したがって、他人の物を毀棄する行為は横領は含まない。

[山口『刑法各論』2版305頁参照。法的判断枠組み(文言の意味)。領得行為説。これに対し、委託物横領罪の「委託」とは、委託の趣旨に反する権限逸脱行為であるとする見解もある(越権行為説)。]

 

刑法各論17/ 325/ 横領罪における不法領得の意思は、#委託の意思に反した物の利用意思である。委託物横領罪では占有侵害が存在しないため、権利者の占有侵害に関わる排除意思は要件とされない。しかし、利用意思こそが責任加重を基礎づける本質的要素だからである。不法領得の意思を外部に発言させる行為あれば、既遂。

[山口『刑法各論』2版305頁、306頁参照。法的判断枠組み(下位規範)。横領行為の要件である不法領得の意思の意義。]

 

刑法各論18/ 326/ 行為者が委託物を、#もっぱら本人のために処分する意思で、費消した場合、不法領得の意思が否定され委託物横領罪、不成立。#法令に違反する行為であっても、その意思は認められうる。

町長が行政事務に属さない町会議員慰労の饗応その他に町の公金を支出した場合などは、もっぱら要件をみたさない。

[山口『刑法各論』2版310頁参照。法的判断枠組み、事実の評価例。]

 

 

●罪数

刑法各論19/ 327/ 自己が管理する他人の土地を第三者に売却し所有権移転登記をしたが、先行して当該土地に無断で抵当権設定をしていた場合、ほしいままに抵当権設定・登記後も、その不動産は他人物なのだから、ほしいままに売却し所有権移転登記すれば、#さらに横領罪成立。不可罰的事後行為ではない。後者のみ処罰可。

[山口『刑法各論』2版311頁、312頁(最大判平15・4・23刑集57・4・467)参照。事実の分析・評価例(判例)。同一被害者の同一被害物について同一構成要件の罪が成立する場合、後者のみ処罰される、ということだろうか?おそらくそうだろうと思ったが、詳しいことは、判例の原文・評釈をあたらなければわからない。後日、訂正可能性あり。]

 

 

●他罪との関係

論点1/ 329/ 21年刑法①:①#預金の占有(業務上横領)、②電子計算機使用詐欺、③私電磁的記録不正作出、④建造物侵入(違法目的、かすがい現象)、⑤間接正犯、⑥関与形態間・異なったTB間の錯誤(業務上横領罪の間接正犯の認識で窃盗幇助)、⑦共犯と身分。⑧片面的幇助。⑨同意監禁、⑩偽計業務妨害。等。

[平成21年度刑事系第1問参照。論点抽出。https://twitter.com/i/moments/903875373439492096

 

刑法各論20/ 330/ 物の返還請求権を免れるため、#横領の手段として本人を欺く行為がなされた段階で委託物横領罪が成立し、所有権侵害がすでに処罰対象となっているので、同一利益に向けられた2項詐欺罪は不可罰的事後行為として別途の処罰対象とはならない。不可罰的な行為に向けられた行為として、未遂も成立しない。

[山口『刑法各論』2版312頁、313頁参照。法的判断枠組み(2つの犯罪の関係)

 モーメントに追加、書替え。

https://twitter.com/i/moments/903875373439492096

 平成21年度刑事系科目第1問(検討中)預金の占有2、他4、間接正犯3、共犯と錯誤1、片面的共犯3、業務上横領罪1、偽計業務妨害1、計15。

 甲、80万円、①業務上横領における預金の占有、②電子計算機使用詐欺(業務上横領の不可罰的事後行為で不成立)、③私電磁的記録不正作出(被害者はA?銀行?)、④建造物侵入(違法目的での立ち入り。これと①③は牽連犯)、間接正犯、共犯関与形態間の錯誤。120万円、共犯関与形態間かつ異なった構成要件間の錯誤、業務上横領等の間接正犯の認識・予見で、窃盗幇助。⑤監禁(同意)。乙、80万円、片面的幇助、共犯と身分。120万円、⑥窃盗+③④。甲乙、⑦偽計業務妨害。罪数(かすがい現象)、等。]

 

 

●業務上横領罪

刑法各論14/ 316/ 他人の物の占有者でない者(非身分者)が、業務上占有者(身分者)による業務上横領罪の構成要件実現に共働した場合、#刑法65条1項は違法身分犯_同2項は責任身分犯を対象とするので、1項により違法身分犯たる委託物横領罪の共犯成立、身分者に2項により責任身分犯たる業務上横領罪の共犯成立。

[山口『刑法各論』2315頁、314頁(最判321119刑法11-12-3073のような処理は、非身分者について罪名と科刑の分離を認める点で妥当でない。なぜなら、科刑は犯罪が成立する限度で正当化されるものであり、科刑と罪名とを一致させることが処罰を受ける者にとって理解が容易となるからである。)、313頁参照。法的判断枠組み(学説)。]

行政行為等 (行政法)

法律に関し,140字内にまとめ(https://twitter.com/right_droit http://twpf.jp/right_droit)、可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価(例)に分けています。
そのほか、補足説明等を、[ ]内の文章に記載しています。間違い等のご指摘いただけたら有難いです。よろしくお願い致します。

 

 

[総論]

行政法の基本原則〕

■信義則・信頼保護原則

行政法7/ 91/ 地方公共団体が、基本的義務に反し既に具体的権利として発生している国民の重要な権利に関し、法令に違反し行使を積極的に妨げる一方的・統一的取扱いをし行使を著しく困難にし消滅時効にかからせた極めて例外的場合、当該公共団体に時効主張を許さずとも、国民の平等的取扱い理念に反しない。#地自法

[『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』公法系(平成26年1月)160、161頁、最判平19・2・6、参照。事実の評価例(判例)。]

 

[行政過程論(行政作用法)]

〔行政作用〕

■行政行為

●行政行為の定義

[・行政行為とは、行政作用のうち、具体的事項について対外的な法効果をもってなす権力的行為である。個別の実定法では、命令、禁止、許可、免許、承認、更正、決定、裁決等のさまざまな名称で用いられている。一般法的には、「行政の処分」(行手法2条2号、行審法1条2項、行訴法3条2項)とか、「行政処分」(地自法242条の2第1項2号)の概念がほぼこれに相当する。

 ただし、争訟法上の「処分」概念には、権力的事実行為も含むほか(行審法46条、47条、59条。旧行審法2条1項参照)、「行政庁の処分その他公権力の行使」(行訴法3条2項)を包括する広義の意味で用いられることが多く、具体的規律をする行政立法を包含するなど、必ずしも行政行為の概念とは一致しない。もっとも、「処分」ないし「行政処分」の語を、行政行為と同じ意味で用いることがある。]

 

行政法21/ 422/ #行政行為 とは,行政作用のうち,具体的事項について対外的な法効果をもってなす権力的行為である。個別実定法の,命令,禁止,許可,免許,承認,更正,決定,裁決等の名称に該当する。一般法的には,「行政の処分」(行手法2条2号,行審法1条2項,行訴法3条2項),「行政処分」(地自法242条の2第1項2号)にほぼ相当。

[『LEGAL QUEST行政法』3版64頁参照。法的判断枠組み(定義、条文)。]

 

行政法22/ 423/ 争訟法上の「#処分」概念は,#権力的事実行為 も含み(行審法46条,47条,59条),「行政庁の処分その他公権力の行使」(行訴法3条2項)と包括して用いることが多く,#具体的規律をする行政立法 を含むなど,必ずしも行政行為概念と一致しない。もっとも,処分,行政処分を,#行政行為 と同じ意味で用いることあり。

[『LEGAL QUEST行政法』3版64頁、65頁参照。法的判断枠組み(文言の意味、条文)。]

 

●申請拒否処分についての理由提示

[・1.理由提示制度(行手法8条1項、14条1項)の法的意義・趣旨は、①恣意抑制機能、慎重配慮確保機能、公正処分決定担保機能、②不服申立便宜機能(以上、判例)、③相手方に対する説得機能、④決定過程公開機能に求められる。

 提示されるべき理由の程度(付記理由の具体性)については、処分の根拠規定の適示だけでは足りず、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適応して結論に至ったかが、理由の記載自体からわかる程度に示す必要がある。審査基準はあらかじめ定められ公開されているので(5条)、その適用関係も提示する必要がある。

2. なお、処分時に示されなかった理由を事後に提示するとか、不十分であった理由を事後に完備したものにするなどの理由の追完は、理由提示制度の前述の趣旨を全く没却するもので許されない。

 ただ、いったん提示された(完備した)理由を事後的に追加・差替えすることは、許されると解する。]

 

行政法24/ 行政作用(行政行為)/ 458/ 理由提示(行手法8条1項,14条1項)の趣旨は,①#恣意抑制・慎重配慮確保・公正処分決定担保機能,②#不服申立便宜機能。理由の具体性は,処分の根拠規定適示では足りず,#いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適応し結論に至ったか_理由記載自体からわかる程度に示す。審査・適用基準の適用関係提示も要。

[『LEGAL QUEST行政法』3版91頁(最判昭60・1・22民集39-1-1等),92頁(最判平23・6・7民集65-4-2081,『行政法判例百選Ⅰ』6版〔128〕,「処分基準」(行手法12条1項参照)の適用関係に関する。等)参照。法的判断枠組み。]

 

行政法25/ 行政作用(行政行為)/ 458/ 処分時示さなかった理由事後提示,不十分だった理由を事後に完備したものにするなど,#理由追完は許されない。理由提示制度(行手法8条1項,14条1項)趣旨,①恣意抑制,慎重配慮確保,公正処分決定担保,②不服申立便宜,を全く没却するから。#いったん提示した完備した理由に事後的に別理由を追加_差替えは可。

[『LEGAL QUEST行政法』3版92頁(最判平11・11・19民集53-8-1862),91頁((最判昭60・1・22民集39-1-1等)参照。事実の分析・評価例。]

 

 

●行政行為の裁量

行政法15/ 286/ 行政行為は根拠規範の個別事案への法適用結果であり、行政庁の判断は、①法文の意味の確定、②事実認定、③当該事実への法適用(法への事実のあてはめ)、④実際にどのような行政行為を行うかの決定、という過程を経る。①②は裁判所判断が優越し、#③④段階についてのみ行政に終局的に委ねられ得る。

[『LEGAL QUEST行政法』3版108頁参照。法的判断枠組み(基礎的な説明)。]

 

行政法16/ 287/ 事実への法適用(法への事実の包摂)につき、行政庁の判断に終局性が認められる場合を #要件裁量(ただし、覊束裁量、法規裁量)、実際にどのような行政行為を行うかにつき終局性が認められる場合を #効果裁量という。#いつの時点で行うかの裁量、#いかなる手続を経て行うかの裁量の余地もある。

[『LEGAL QUEST行政法』3版108頁~110頁参照。法的判断枠組み(法概念の基礎的説明)。]

 

行政法17/ 288/ 法への事実の包摂につき、#不確定な法概念でもそれだけで要件裁量は認められない。通常人の経験則や社会通念により客観的に認定しうる場合は除く。#専門技術的・政治政策的判断も要する場合に認められうる。その場合も、司法審査を免れる自由裁量(便宜裁量)でなく、覊束裁量(法規裁量)と解する。

[『LEGAL QUEST行政法』3版109頁参照。法的判断枠組み(法律要件についての行政庁の裁量)。]

 

 

行政法1/ 33/ 裁量基準は、法律が与えた裁量の範囲内で合理的でなければならず、法律の趣旨・目的を逸脱した不合理なものであれば、それに従ってなされた行政処分も違法となる。もっとも、ある特定のケースへの機械的適用が、かえって法律の趣旨・目的を損なうような場合、個別的な特殊性への配慮を要する。#行政法

[『事例研究 行政法』2版350頁、351頁参照。法的判断枠組み。]

 

 

行政法14/ 285/ 被侵害利益が重大か、多数人の利益調節を要する場合、原告の権利保護の見地から、裁量判断の逸脱・濫用につき審査密度を高める必要がある。①#重要な事実の基礎を欠くか、②考慮不尽、他事考慮、事実評価の不合理により、#判断内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くならば、違法であると解する。

[『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』公法系168頁(最判18112民集60-9-3239小田急訴訟本案判決。『事例研究 行政法256頁)参照。法的判断枠組み(裁量について判断過程審査を行うべき場合、および、審査基準)。]