不法行為/ 損害賠償の範囲

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●損害賠償の範囲

[・損害賠償の範囲は、①まず賠償を求められている損害が加害行為と事実的因果関係に立つかどうかが判断される(事実認定)。それが肯定されるならば、②事実的因果関係に立つ損害のうちどこまでのものが保護範囲に含まれるかが判断され(法律解釈とその適用)、含まれるべきだという規範的判断が下されるならば、③保護範囲内の損害について金銭的評価が行われる(裁量的判断)。]

 

法定債権13/ 548/ 損害賠償の範囲は,①#賠償請求される損害が加害行為と事実的因果関係に立つか判断し(事実認定),肯定されるなら,②#事実的因果関係に立つ損害のうちどこまでが保護範囲に含まれるか判断し(法律解釈とその適用),含まれるべきと規範的判断が下されれば,③#保護範囲内の損害につき金銭的評価(裁量的判断)。

[平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版110頁(内田『民法Ⅱ』3版390頁)参照。法的判断枠組み(平井理論)]

 

●保護範囲

[・保護範囲は、生じた損害に対する責任を加害者に帰せしめるのが妥当かどうかどの規範的判断であるから、不法行為の要件のうちの故意・過失と密接にかかわることになる。

 まず、故意不法行為においては、原則として事実的因果関係のある損害はすべて賠償されるべきだが、異常な事態の介入の結果生じた損害についてはこの限りでない。

 これに対して過失不法行為においては、保護範囲は、ある損害に対して加害者がそれを回避する義務を負っていると判断されるかどうか、すなわち、ある損害が損害回避義務(過失判断の基準となる行為義務)の及ぶ射程距離内あると判断されるかどうかによって画定される(行為義務の射程、義務射程)。]

 

法定債権15/ 550/ 保護範囲は,故意不法行為では,原則,#事実的因果関係ある損害はすべて賠償さるべきだが,異常な事態介入の結果生じた損害は除く。過失不法行為では,加害者がある損害を回避する義務,すなわち損害回避義務(過失判断の基準となる行為義務)の及ぶ射程距離(#義務射程)内あると判断されるかにより画定される。

[・内田『民法Ⅱ』3版431頁,平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版(1992年)110頁,参照。不法行為による損害賠償の範囲についての法的判断枠組み]

 

 ●損害の金銭的評価

[・民法が金銭賠償の原則に立脚する以上(722条1項・417条)、保護範囲内の損害は「金〇〇円」と表示されて賠償請求されなければならず、判決主文は「金〇〇円を支払え」と表示されなければならない(損害の金銭的評価)。

 金額への表示は、事実の確定ではないという意味において、何らかの評価作用の産物である。この点で、金銭的評価は事実的因果関係とは異なる性質を有する。

 しかし、評価作用であるとしても、保護範囲の確定における法律論の定立・適用という規範的判断とも異なる。具体的金額を決定するのは、規範の適用ではなく、あくまで個別的・具体的事案における裁判官の創造的・裁量的判断である。すなわち、その場合に、①諸般の事情を参酌して算定でき(事実審裁判官の専権)、②算定の根拠を示すことを要せず、かつ③事実認定ではなく評価である以上、立証責任の観念を容れる余地がない。]

 

法定債権16/ 551/ 損害の金銭的評価(「金〇〇円」)は,#事実確定ではなく評価作用。事実的因果関係と異なる性質。

保護範囲のような規範的判断(法律論)とも別。具体的金額決定は,#規範適用でなく_個別的・具体的事案での裁判官の創造的・裁量的判断。①諸般の事情参酌し算定,②算定根拠表示不要,③立証責任観念入らない。

[・平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版(1992年)129頁-130頁参照。損害の金銭的評価の性質]

 

 ●寄与度減責

[・因果関係が全損害に及ぶとの民法719条1項後段の推定は及びつつ(事実的因果関係あり)、保護範囲ないしは、その範囲内の損害に対する寄与度が、損害全額にまでは及ばない場合(寄与の度合いが明らかに著しく小さい場合)がある。換言すると、当該加害行為が損害発生に寄与した割合の限度で賠償義務を負うとの原理(寄与度減責、帰責性の原理)が働く場面といえる。

 損害一体型における1項後段の類推適用による推定は、事実的因果関係についてなされるに過ぎないとみるべきだから、効果においてこのような考慮をすることは背理ではない。]

 

法定債権17/ 552/ 損害一体型では,因果関係が全損害に及ぶとの民法719条1項後段の推定は及びつつ(事実的因果関係あり),#保護範囲ないし,その範囲内の損害に対する寄与度が損害全額にまでは及ばない場合あり。当該加害行為が損害発生に寄与した割合の限度で賠償義務を負うとの原理(#寄与度減責,帰責性の原理)が働く場面。

[・内田『民法Ⅱ』3版538,447頁参照。共同不法行為(損害一体型,民法719条1項後段類推適用)において,寄与の度合いが明らかに著しく小さい加害者がいる場合の理論構成(法的判断枠組み)]

 

 ●事故+医療過誤

[・Aの過失による交通事故の後、被害者Cを治療した医師Bの過失で被害が拡大した場合、判例では通常、共同不法行為とされる。しかし、加害行為の一体性(民法719条1項前段)はない。

 この場合、Aの加害行為と全損害とは事実的因果関係があるが、Bの加害行為と一部の損害とは事実的因果関係はない。ただ、その部分を確定することが困難なことが多いだけである。そこで、その限りで損害一体型(同条項後段類推)といえる。

 したがって、医師が自己の加害行為と因果関係のない損害を明らかにすれば、その部分は責任を負わないと解する。反面、医師の行為が加わって損害が拡大したという事情を考慮すると、Aの賠償義務についても賠償額の減額がなされる場合もあるといえる。これは、因果関係の不存在による免責ではなく、保護範囲が及ばないこと、あるいは寄与度を理由とする減額である。]

 

法定債権18/ 553/ A過失の交通事故後,被害者治療した医師Bの過失で被害拡大の場合,Aの加害行為と全損害とに事実的因果関係あるが,Bの加害行為と一部損害とにはない。ただ,その部分を確定困難(#損害一体型,民法719条項後段類推)。医師の行為と因果関係なき損害,立証されれば,その部分,責任なし(保護範囲外,#寄与度減責)。

[内田『民法Ⅱ』3版540,535頁参照。事故+医療過誤型の共同不法行為(損害一体型,民法の719条1項後段類推適用)における賠償額の減額のしくみ(法的判断枠組み)]