ミニマム法律学

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①請負契約目的物の所有権の帰属,②元請契約と下請契約の関係,③第三者による未完成建物の完成,等 (契約各論,等)

法律に関し,140字以内にまとめ,可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価(例)に分けています。間違い等のご指摘等,よろしくお願い致します。 twitter.com Read:

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●土地と建物(未完成のものも含む)の関係

[・土地所有者が付合(民法242条)によって建物所有権を取得することはなく、土地と建物は別個独立の不動産である(370条参照)。建造物は、建築途上で屋根・周壁等によって外気分断性を備えた段階で、未完成であっても建物(不動産)となるが、そのような未完成建物も土地に付合しない。]

[・外気分断性のまだない未完成建物という動産(86条2項)も、土地には付合しない。付合をはじめとする添付の規定は任意規定であるところ、請負契約に基づく建物建築がなされている場合には、いずれ土地から独立した建物(不動産)となることが予定されているのだから、当事者間には添付規定の適用を排除する合意があると考えられるからである。]

 

民法50/ 物権総論11/ 468/ 建物は土地に付合(民法242条)せず,土地,建物は別個独立の不動産(370条参照)。#建築途上で屋根・周壁等により外気分断性を備え建物(不動産)となる前の未完成建物(動産,86条2項)も同様。添付は任意規定。#建築請負契約にいずれ独立した建物になるという当事者間の添付規定適用排除合意ありといえるから。

[『事例から民法を考える』285頁参照。事実の分析・評価(契約の解釈)。]

 

●建築請負における建物所有権の帰属

[・地上に建物を新築する場合の建物所有権の帰属。①注文者が材料の全部または主要部分を提供した場合、所有権は原始的に注文者に帰属する。②請負人が材料の全部または主要部分を提供した場合には、請負人が所有権を取得し、引渡しによって注文者に移転する。③請負人が材料を提供しても、特約があれば竣工と同時に注文者の所有物となる。注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、特約の存在が推認され、特段の事情のない限り、建物所有権は完成と同時に注文者に帰属する。

 もっとも、判例は、特約の存在を比較的ゆるやかに認める。]

 

民法58/ 契約各論6/ 486/ 新築建物所有権。①注文者が材料全部・主要部分提供⇒原始的注文者帰属。②請負人が材料全部・主要部分提供⇒#請負人に帰属し引渡しにより注文者に移転。③請負人材料提供でも,特約あれば注文者所有。#注文者が代金全部・大部分支払済み⇒特約の存在推認。特段の事情なき限り,建物所有権は注文者帰属。

[内田『民法Ⅱ』3版276頁-277頁参照。事実の分析評価例(判例)。]

 

●注文者帰属説の妥当性

[・建築物の所有権が注文者に帰属するという特約があったか、当事者の意思を問題とすることなく、定型的に特約の存在ありと考えるのは妥当か。

 仮に、注文者が完成建物を引渡時に検査して、基礎工事の材質や強度に重大な契約違反を見つけたとする。もし、工事のやり直しを要求するのが合理的であるなら、取り壊される建物の所有権が原始的に注文者に帰属していると考えるより(それでは、取壊し後の廃材まで注文者の物になる)、建物はいったん請負人に帰属し、引渡しを終えてはじめて注文者に帰属すると考えた方が合理的である。

 そうであれば、あえて物権法の原則に反し、また、当事者の意思を認定できない場合にまで、注文者帰属説を貫かねばならない理由に乏しい。]

 

民法59/ 契約各論7/ 487/ 当事者意思を問うことなく,新築建物所有権注文者帰属特約を定型的に認定? 仮に,注文者が完成建物を引渡時検査し,基礎工事の重大契約違反により,工事やり直しが合理的な場合,取り壊される建物・廃材所有権が注文者原始的帰属とするより,#建物はいったん請負人帰属_引渡しで注文者帰属とする方が合理的。

[内田『民法Ⅱ』3版278頁参照。事実の分析・評価例。]

 

●元請契約と下請契約の関係

[・元請契約に、契約が中途解約された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の特約があった事案において、建物建築工事を元請負人から一括下請負の形で請け負う下請契約は、その性質上元請負契約の存在および内容を前提とし、元請負人の債務を履行することを目的とするものであるから、下請負人は、注文者との関係では、元請負人のいわば履行補助者的立場に立つものにすぎず、注文者のためにする建物建築工事に関して、元請負人と異なる権利関係を主張しうる立場にはない。]

 

民法57/ 契約各論5/ 485/ 中途解約時,出来形部分所有権,注文者帰属特約付の元請契約の元請負人からの,建物建築工事一括下請負契約は,性質上元請負契約の存在・内容を前提とし,元請負人債務を履行する目的のものだから,#下請負人は_注文者との関係で_元請負人の履行補助者的立場に立ち,元請負人と異なる権利関係を主張しえない。

[『事例から民法を考える』290頁_291頁(最判平5・10・19民集47-8-5061)参照。事実の分析・評価(判例)。]

 

 

元請契約と下請契約の関係

[・基本となるのは注文者甲・請負人乙間の元請契約であり、元請け契約の存在および内容を前提として、乙と下請負人丙間に下請契約が成立する。比喩的にいえば、元請契約は親亀であり、下請契約は親亀の背に乗る子亀である。丙は乙との間で契約を締結した者で、乙に対する関係での丙の権利義務は下請契約によって定まるが、その締結が甲の関与しないものである限り、丙は下請契約上の権利をもって甲に直接対抗することはできず、丙のする下請契約の施行も、甲乙間の元請契約の存在と内容を前提とし、元請契約上の乙の債務の履行としてのみ許容される得る。

 このように、注文者甲に対する関係において、下請負人丙はいわば元請負人乙の履行補助者的立場にあるものにすぎず、下請契約が元請契約の存在と内容を前提として初めて成立し得るものである以上、特段の事情のない限り、丙は、契約が中途解除された場合の出来形部分の所有権帰属に関する甲乙間の約定の効力をそのまま承認するほかない。甲に対する関係において丙は独立平等の第三者ではなく、基本となる甲乙間の約定の効力は、原則として下請負人丙にも及ぶ。子亀は親亀の行先を知ってその背に乗ったものであるからである。]

 

民法56/ 契約各論4/ 484/ 注文者甲と請負人乙の元請契約,乙と下請負人丙の下請負契約につき,#基本は元請契約_その存在・内容を前提に下請け契約成立。比喩的に,元請契約は親亀,下請契約は親亀の背に乗る子亀。丙の権利義務は後者により定まるが,甲関与なくば甲に対抗できず,丙の契約施行も元請契約上の乙債務履行としてのみ可。

[『事例から民法を考える』291頁(最判平5・10・19民集47-8-5061可部恒雄裁判官補足意見)参照。事実の分析・評価例。]

 

 

●元請契約と下請契約の関係

[・元請契約と下請契約との関係につき、下請人が下請けであることを認識して契約関係に入っているのであれば、元請契約と下請契約は密接相互に関連する複合契約を構成するものであり、下請負人は、元請契約にも拘束されることが正当化されるといえる。]

 

●未完成建物を第三者が完成させた場合における完成建物の所有権帰属

[・未完成建物の出来形部分の所有権が注文者でなく、請負人・下請負人に帰属する場合に、第三者がそれをもとに建物を完成させたとき、契約関係はないので、もっぱら物権法理により処理される。]

[・建物建築については加工の規定が適用される。なぜなら、動産に動産を単純に付合させるだけでそこに施される工作の価値を無視してもよい場合と異なり、建物建築のように、材料に対して施される工作が特段の価値を有し、仕上げられた建物の価格が原材料のそれよりも相当程度増加するような場合には、むしろ民法の加工の規定に基づいて所有権の帰属を決定するのが相当であるから。]

 

民法51/ 物権総論12/ 469/ 未完成建物の出来形部分所有権が注文者でなく請負人等に帰属し第三者が建物を完成させた場合,#契約関係ないため物権法理で処理。動産に動産を単純付合させ工作価値を無視しうる場合と違い,#建物建築は材料に施される工作が特段の価値を有し_完成価格が原材料より相当程度増加するので,加工規定による。

[『事例から民法を考える』293-294(最判54125民集33-1-26)参照。事実の分析・評価例。]

 

民法55/ 物権総論14/ 483/ #未完成段階の動産としての価格と加工者の付加材料・工作による付加価値額との比較基準時は仕事完成時。加工量は完成建物全体について把握されるべき。一部分断し作業のある段階で,動産が法律上独立不動産たる建物になった瞬間に,従来の動産価格と,材料価格・付加価値額の合算とを比較すべきではない。

[『事例から民法を考える』294頁-295頁(最判昭54・1・25民集33-1-26)参照。法的判断枠組み(判例は,上記のように考えることは,「当然である」とする)]

 

●添付規定によって出来形部分の所有権を失う場合

[・添付規定によって、添付物の所有権を失う当事者は、所有権を取得した当事者に、償金請求できる(民法248条・703条・704条)。この場合、添付規定を「法律上の原因」として所有権を取得しているので、一般の不当利得(703条・704条)の要件は具備しないが、所有権取得者は、所有権を失う者の損失において(対価を支払うことなく)利得しているという実質があるから、248条は償金請求権を規定し、その内容は703条・704条に従うものとしたものである。]

 

民法53/ 物権総論13/ 479/ 添付規定により,添付物の所有権を失う当事者は,所有権を取得した当事者に,償金請求可(民法248条・703条・704条)。#添付規定を「#法律上の原因」としての利得なので,#一般不当利得要件は具備しないが,利得者は,#所有権を失う者の損失において_対価支払いなく_利得する実質がある。これが248条規定理由。

[『事例から民法を考える』297頁参照。法的判断枠組み(条文制度の説明)。]

 

■不当利得

●転用物訴権

法定債権5/ 394/ 本件ブルドーザー修理はA社依頼によるので、XはA社に修理代金債権を取得するから、修理によるYの利得はいちおうA社の財産に由来し、XはYにこの利得の返還請求権を有しないが、A社無資力のため、#その修理代金債権の全部・一部が無価値な限度で、Yの利得はXの財産・労務に由来するといえる。

[最判昭45・7・16民集24-7-909(『民法基本判例集』2版〔249〕282頁)参照。事実の分析・評価。賃借人が賃借物の修理を依頼した場合、原則、修理は、賃借物の所有者の修理による利得に対し、直接の因果関係を認められないが、例外的に賃借人が無資力で、修理代金債権が無価値ならば、その限度で直接の因果関係が認められる、という法的判断枠組み(規範)を定立しているのであろうか?]

 

[・甲・乙間の契約に基づいて甲から乙に給付がなされたが乙から甲に対する対価支払いがなされていない場合において、その利得がさらに乙から丙に移転したときに、甲が(乙に対する債権があるにもかかわらず)契約関係にない丙に対してその利得の返還を求める権利が転用物訴権である。

 しかし、これでは、丙が乙に対してその利得の対価を支払っている場合には、丙に二重支払を強いることになって不適切だし、甲も本来は乙の一般債権者なのであって乙の無資力のリスクは、甲が負うべきである。

 したがって、転用物訴権が成立するのは、上記の丙が対価関係なしに利得を受けたときに限られると解すべきである(判例参照)。]

 

民法52/ 法定債権6(不当利得)/ 478/ 甲乙間契約に基づき甲が乙に給付したが,対価支払いなく,乙の利得が丙に移転した場合,#甲が_乙に債権をもつにもかかわらず_契約関係にない丙に利得返還を求める権利が転用物訴権。丙が支払っている場合,二重支払,甲も乙の一般債権者にすぎず,不適切。#丙が対価関係なしに利得を得たときに限られるべき。

[『事例から民法を考える』297頁-298頁(最判昭45・7・16民集24-7-909(ブルドーザー事件),最判平7・9・19民集49-8-2805)参照。事実の分析・評価例(判例)]