ミニマム法律学

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横領罪 (刑法各論)

法律に関し,140字内にまとめ(https://twitter.com/right_droit ; http://twpf.jp/right_droit)、可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価(例)に分けています。間違い等ありました、ご指摘お願い致します。

 

■横領罪 (●総説 ●客体 ●横領行為 ●罪数 ●業務上横領罪)

 

●総説

刑法各論15/ 317/ 委託物横領罪は、①#物の所有権が第一次的な保護法益であり、②委託関係、すなわち、#委託に関する財産上の利益が、副次的保護法益である。窃盗罪における占有侵害に対応する法益侵害だが、#委託関係は物の占有よりも弱いものなので、法定刑は軽い。#賃借権や質権を侵害しても横領罪は成立しない。

[山口『刑法各論』2版288頁(大判明44・10・13刑集17-1698)、289頁参照。法的判断枠組み(保護法益)。]

 

 

●客体

刑法26/ 各論6/ 301/ #被害者への返還にそなえる必要があるという意味で、#無権限者による保管の委託も保護に値する。委託物横領罪の委託関係はその場合も含むと解する。窃盗犯人が保管を委託した盗品につき、同罪が成立しうる。もっとも、#それが盗品保管罪を構成する場合、保護に値せず、遺失物等横領罪の問題となる。

[山口『刑法各論』2版293頁参照。事実の分析。記述の意味するところが、今一つ理解できていません。自分なりに考えて、①保管者に盗品性の認識のない場合、②盗品性の認識のある場合(=犯罪行為となる)に分けて書いています。後日、訂正するかもしれません。]

 

 

刑法各論12/ 314/ 委託された金銭の保管手段として預金する場合、預金による金銭の占有を否定すれば、#払い戻す金銭につき横領罪が問題になるが、#振込・振替送金の場合に金銭を手にしないので、#委託物横領罪は成立せず背任罪が問題となるにどどまり均衡を失する。したがって、#預金による占有を肯定すべきである。

[山口『刑法各論』2版295頁(大判大元・10・8刑録18-1231)参照。法的判断枠組み(基礎理論)。R21①参照。]

 

刑法各論13/ 315/ 預金の占有は、事実上の処分可能性でなく、#銀行および預金者に対する関係で認められる預金の払戻権限で基礎づけられる。払戻権限を有する者に(一定の金額につき)預金の占有が認められる。預金通帳と登録印鑑を窃取した犯人が払戻しを行った場合、払戻権限がないので銀行に対する詐欺罪が成立する。

[山口『刑法各論』2版295頁(最判昭25・2・24刑集4-2-255)参照。法的判断枠組み(法的概念に該当するかの判断基準)]R21①参照。]

 

 

刑法25/ 各論5/ 300/ 振込依頼人の過誤による誤振込の場合、銀行は誤振込だとを知れば、民事判例上の預金債権成立にもかかわらず、受取人への支払拒絶をする正当利益が認められる。#正当な払戻権限を根拠とする預金の占有には、#誤振込か確認し一定措置をとるべき利益からの制約が及び、銀行に対する詐欺罪が成立しうる。

[山口『刑法各論』2版297頁、298頁LL7「振込依頼人の過誤によって生じた場合」参照。事実の分析(一定の制約を付した預金の占有を肯定)。]

 

 

 

刑法7/ 各論3/ 72/ 金銭流通の動的安全から、民事上金銭の所有と占有は一致するが、内部的所有権保護を目的とする委託物横領罪には妥当しないので、債権取立てを委任されて取り立てた金銭を不法に領得した場合、委託物横領罪(#刑法252条)が成立する。ただ、金銭は特定しないので、両替・一時流用などは該当しない。

[山口『刑法各論』2版302頁参照。法的判断枠組み(判例)。最判昭26・5・25刑集5-6-1186、大判昭8・9・11刑集12-1599等、参照。]

 

●横領行為

刑法各論16/ 324/ 「横領」(刑法252条)とは、#不法領得の意思を実現する一切の行為をいう。委託物横領罪の法定刑が器物損壊罪の法定刑より重いのは、窃盗罪の場合と同様、#物の効用の取得という強力な動機の存在に基づく責任加重に求めるべきだからである。したがって、他人の物を毀棄する行為は横領は含まない。

[山口『刑法各論』2版305頁参照。法的判断枠組み(文言の意味)。領得行為説。これに対し、委託物横領罪の「委託」とは、委託の趣旨に反する権限逸脱行為であるとする見解もある(越権行為説)。]

 

刑法各論17/ 325/ 横領罪における不法領得の意思は、#委託の意思に反した物の利用意思である。委託物横領罪では占有侵害が存在しないため、権利者の占有侵害に関わる排除意思は要件とされない。しかし、利用意思こそが責任加重を基礎づける本質的要素だからである。不法領得の意思を外部に発言させる行為あれば、既遂。

[山口『刑法各論』2版305頁、306頁参照。法的判断枠組み(下位規範)。横領行為の要件である不法領得の意思の意義。]

 

刑法各論18/ 326/ 行為者が委託物を、#もっぱら本人のために処分する意思で、費消した場合、不法領得の意思が否定され委託物横領罪、不成立。#法令に違反する行為であっても、その意思は認められうる。

町長が行政事務に属さない町会議員慰労の饗応その他に町の公金を支出した場合などは、もっぱら要件をみたさない。

[山口『刑法各論』2版310頁参照。法的判断枠組み、事実の評価例。]

 

 

●罪数

刑法各論19/ 327/ 自己が管理する他人の土地を第三者に売却し所有権移転登記をしたが、先行して当該土地に無断で抵当権設定をしていた場合、ほしいままに抵当権設定・登記後も、その不動産は他人物なのだから、ほしいままに売却し所有権移転登記すれば、#さらに横領罪成立。不可罰的事後行為ではない。後者のみ処罰可。

[山口『刑法各論』2版311頁、312頁(最大判平15・4・23刑集57・4・467)参照。事実の分析・評価例(判例)。同一被害者の同一被害物について同一構成要件の罪が成立する場合、後者のみ処罰される、ということだろうか?おそらくそうだろうと思ったが、詳しいことは、判例の原文・評釈をあたらなければわからない。後日、訂正可能性あり。]

 

 

●他罪との関係

論点1/ 329/ 21年刑法①:①#預金の占有(業務上横領)、②電子計算機使用詐欺、③私電磁的記録不正作出、④建造物侵入(違法目的、かすがい現象)、⑤間接正犯、⑥関与形態間・異なったTB間の錯誤(業務上横領罪の間接正犯の認識で窃盗幇助)、⑦共犯と身分。⑧片面的幇助。⑨同意監禁、⑩偽計業務妨害。等。

[平成21年度刑事系第1問参照。論点抽出。https://twitter.com/i/moments/903875373439492096

 

刑法各論20/ 330/ 物の返還請求権を免れるため、#横領の手段として本人を欺く行為がなされた段階で委託物横領罪が成立し、所有権侵害がすでに処罰対象となっているので、同一利益に向けられた2項詐欺罪は不可罰的事後行為として別途の処罰対象とはならない。不可罰的な行為に向けられた行為として、未遂も成立しない。

[山口『刑法各論』2版312頁、313頁参照。法的判断枠組み(2つの犯罪の関係)

 モーメントに追加、書替え。

https://twitter.com/i/moments/903875373439492096

 平成21年度刑事系科目第1問(検討中)預金の占有2、他4、間接正犯3、共犯と錯誤1、片面的共犯3、業務上横領罪1、偽計業務妨害1、計15。

 甲、80万円、①業務上横領における預金の占有、②電子計算機使用詐欺(業務上横領の不可罰的事後行為で不成立)、③私電磁的記録不正作出(被害者はA?銀行?)、④建造物侵入(違法目的での立ち入り。これと①③は牽連犯)、間接正犯、共犯関与形態間の錯誤。120万円、共犯関与形態間かつ異なった構成要件間の錯誤、業務上横領等の間接正犯の認識・予見で、窃盗幇助。⑤監禁(同意)。乙、80万円、片面的幇助、共犯と身分。120万円、⑥窃盗+③④。甲乙、⑦偽計業務妨害。罪数(かすがい現象)、等。]

 

 

●業務上横領罪

刑法各論14/ 316/ 他人の物の占有者でない者(非身分者)が、業務上占有者(身分者)による業務上横領罪の構成要件実現に共働した場合、#刑法65条1項は違法身分犯_同2項は責任身分犯を対象とするので、1項により違法身分犯たる委託物横領罪の共犯成立、身分者に2項により責任身分犯たる業務上横領罪の共犯成立。

[山口『刑法各論』2315頁、314頁(最判321119刑法11-12-3073のような処理は、非身分者について罪名と科刑の分離を認める点で妥当でない。なぜなら、科刑は犯罪が成立する限度で正当化されるものであり、科刑と罪名とを一致させることが処罰を受ける者にとって理解が容易となるからである。)、313頁参照。法的判断枠組み(学説)。]