ミニマム法律学

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会社法/ 設立,株式,資金調達方法,企業の買収・組織再編

法律に関し,140字以内にまとめ,可能な範囲で,①法的判断枠組み,②事実の分析・評価 (例)に分けています。間違い等のご指摘等,よろしくお願い致します。 twitter.com 

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目次
〔総論〕

〔設立〕

〔株式〕 ■株式の譲渡・担保化と権利行使の方法 ■特殊な株式保有形態 等

〔機関〕 👉別稿: http://right-droit.hatenablog.com/entry/2018/02/04/194333

〔計算・債権者保護制度〕http://right-droit.hatenablog.com/entry/2018/02/24/231330

〔資金調達方法〕 ■募集株式の発行 ■新株予約権 ■ 社債 

〔組織再編〕 ■ 組織再編の意義 ■ 組織再編の手続 ■ 組織再編の無効の訴え

〔他〕 ■定款変更 ■解散・清算 

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本論
〔総論〕

〔設立〕

設立中の会社の発起人の権限

[・設立中の会社の発起人の権限は何か。発起人の権限内の行為は、設立後の会社に責任が及ぶので、問題となる。

 設立中の会社は、会社の設立を目的とするので、設立に直接必要な行為のみならず、設立のために事実上必要な行為もなしうる。したがって、その発起人の権限も設立に直接および事実上必要な行為に及ぶ。言い換えれば、#発起人の権限は会社設立のために法律上・経済上必要な行為にまで及ぶといえる。

 もっとも、会社設立のために事実上・経済上必要な行為すべてについて発起人の権限を認めてしまうと、設立後の会社の資本の充実・維持を害されるおそれがある。そこで、事実上・経済上必要な行為については、定款に記載がある範囲内でのみ、発起人の権限を認めるべきである(会社法28条参照)。]

 

会社法77/ 設立4/ 429/ 発起人の権限内の行為は,設立後の会社に及ぶ。設立中の会社は,設立を目的とするので,設立に直接必要な行為および事実上必要な行為もなしうる。したがって,発起人の権限も設立に直接・事実(#経済)上必要な行為に及ぶ。しかし,資本充実維持のため,#法律・定款の範囲で権限が認められる(会社法28条参照)。

[『工藤北斗の合格論証集』民法、商法・民事訴訟法21頁以下、会社法判例百選』2版15頁タテ2、参照。法的判断枠組み。]

 

●設立費用

[・定款には設立費用の額として70万円と記載されているのに、発起人が会社のためにAとの間で40万円を支出する契約とBとの間で60万円を支出する契約とを締結しているときの法律関係はどうなるか。

 この場合の法律関係は、行為の時系列によって効果が帰属するか否かが区別される。すなわち、Aとの取引が先に締結されたとすれば、成立後の会社はAには40万円を、Bには30万円を負担する。Bは残額の30万円を発起人等に対して請求するしかない。A、Bのいずれの取引が先になされたかが不明な場合には、A、Bは、債務の額に応じて按分した範囲で会社に請求できる。]

 

会社法75/ 設立2/ 427/ 定款の設立費用額が70万円なのに,発起人が会社のためAへの40万円支払契約,Bへの60万円支払契約を締結しているとき,法律関係如何。#行為の時系列により効果帰属が決まる。A取引が先なら,会社はAに40万円,Bに30万円負担。Bの残額は発起人等の責任。いずれが先か不明なら債務額に応じ按分し会社に請求可。
[『LEGAL QUEST会社法』3版51頁、R29②Q1(1)参照。法的判断枠組み、および事実の分析・評価。]

 

●財産引受けについて 

[・株式会社において、発起人が会社の設立を条件として、成立後の会社のために営業用の財産を譲り受ける行為を、財産引受けという(会社法28条2号)。開業準備行為ともいう。財産の過大評価により資本の充実・維持を害する危険があるので、厳格に規制されている(28条、33条参照)。

 まず、定款に記載されていなければ効力を生じない(28条柱書)。また、原則、検査役の調査(33条1項~6項)、または、価額の相当性につき弁護士等の証明(33条10項3号)を受ける必要がある。]

 

会社法76/ 設立3/ 428/ 発起人が会社設立を条件に,成立後の会社のため営業用財産を譲り受ける行為を,#財産引受け(開業準備行為)という(会社法28条2号)。財産の過大評価で資本充実・維持を害する危険があるので,#定款に記載なければ無効(28条柱書)。また,原則,検査役の調査(33条1項~6項),または弁護士等の証明(33条10項),要。

[有斐閣法律学小事典』4版430頁、304頁、『LEGAL QUEST会社法』3版51頁、R29②Q1(2)参照。法的判断枠組み。]

 

発起人の行為の効果が会社に及ばない場合の発起人の責任 

[・発起人の行為の効果が成立後の会社に及ばない場合、発起人が責任を負う。民法117条1項が類推適用される(改正民法の文言は少し変更されている)。同条項は本来、追認があれば遡って有効となる場合の規定である。本人たる会社がまだ成立していない場合は、同条項の類推適用である。

 また、発起人が明示的に会社成立を条件として開業準備行為をしたにもかかわらず、定款に記載しなかった場合、同117条2項に該当しない。なぜなら、発起人が、当該取引の後に、定款に記載することを怠ったのであり、取引時において相手方が「過失によって知らなかった」(同条項)ときとはいえないからである。したがって、同117条1項の類推適用により、相手方は発起人に、履行または損害賠償請求できる。]

 

会社法78/ 設立5/ 430/ 発起人の行為の効果が成立後の会社に及ばない場合,発起人は,#民法117条1項の類推適用により,責任を負う。発起人が明示的に会社成立を条件として開業準備行為をしたにかかわらず,取引後に,#定款記載を怠った場合,取引時に相手方が「過失によって知らなかった」とはいえないので,同条2項にはあたらない。

[会社法判例百選』2版15頁タテ2、R29②Q1(2)、参照。法的判断枠組み、後半は、29年民事系第2問設問1(2)では問われてはいないが、その事案について自分で考えてみた、事実の分析・評価例。]


商法54/ 会社法54/ 216/ #短答 #会社法。平成21年民事系第37問参照(予備校正答率49%)#設立 肢2,3正解
https://goo.gl/cifr1f
https://goo.gl/2UR3un
https://goo.gl/cmt6nW
https://goo.gl/WtjcZk

   

〔株式〕
■株式と株主 
商法62/ 会社法62/ 256/ 株式会社は社団法人であり、構成員(社員)を株主、社員たる資格(地位)を株式という。出資するか、他の株主から承継取得(個別承継、一般承継)して株主となる。#社員の地位が株式という細分化された割合的単位の形をとり、法律の認める範囲内で内容に一定のヴァリエーションを設けることもできる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版65頁、66頁参照。法的判断枠組み(基礎的な説明)。]

 

商法63/ 会社法63/ 257/ 株主が会社から経済的利益を受ける権利を自益権という。①剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号、453条)、②解散・清算後に残余財産の分配を受ける権利(105条1項2号、502条)など。①②を一切与えないとすることはできない(105条2項)。株式会社の #営利性 の現れ。
[『LEGAL QUEST会社法』3版67頁参照。法的判断枠組み(条文および制度の説明)。]

 

商法64/ 会社法64/ 258/ 株主が①会社経営に参与し、②監督是正する権利を共益権という。①#株主総会会社法295条)における #議決権(105条1項3号、308条)、#質問権(314条)、#提案権、#総会招集権など、②各種 #提訴権(828条、831条、847条等)、各種 #書類等の閲覧等請求権 がある。
[『LEGAL QUEST会社法』3版67頁参照。法的判断枠組み(制度の説明)。]

 

商法66/ 会社法66/ 260/ 自益権は単独株主権である(会社法454条3項、504条3項等)。議決権(308条)、代表訴訟の提起権(847条)や差止請求権(210条、360条等)なども同じ。株主総会の招集権(297条)や役員解任の訴えの提起権(854条)などは少数株主権である。#共益権は微妙な政策判断が必要。
[『LEGAL QUEST会社法』3版70頁参照。法的判断枠組み(株主の権利の背景)。]


商法65/ 会社法65/ 259/ 少数株主権を含む株主権も権利の一種である以上、濫用は許されない(民法1条3項)。
総会屋による株主名簿閲覧・謄写請求が、株主としての権利の確保等のためでなく、新聞等の購読料名下の金員の支払の再開、継続目的での #嫌がらせ、あるいは、#報復 と認定され、権利濫用とされた事例がある。
[『LEGAL QUEST会社法』3版71頁参照。法的判断枠組み(法の一般原則)、および、事実の分析・評価例。]


商法67/ 会社法67/ 261/ 株式買取請求権は、①事業譲渡等(会社法469条)、合併、会社分割、株式交換・株式移転(785条、797条、806条)、株式併合(182条の4)、株式譲渡制限(#116条1項1号2号)、全部取得条項を付す(同条項2号)、他(3号)、②単元未満株(#192条以下)の場合に認められる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版71頁、72頁参照。法的判断枠組み(制度および条文の確認)。]

 

■株式譲渡自由の原則・制限 

■株式の譲渡・担保化と権利行使の方法
商法29/ 会社法29/ 177/ 株主名簿の名義書換えなければ、株式譲受人は譲渡を会社に対抗できないが(#会社法130条1項2項)、株券占有者は真の権利者と推定され(131条1項)、株券提示により単独で名義書換請求できる(133条2項、施行規則22条2項1号)。その不当拒絶は、違法(831条1項1号参照)である。
[『LEGAL QUEST会社法』3版112、113、106頁参照。法的判断枠組み(条文)、事実の評価例。]

 

■特殊な株式保有形態 

 

■投資単位の調節

●株式の併合、分割

[株式の併合(会社法180条1項)とは、数個の株式をあわせて、より少ない数の株式にすることである。

 株式の分割(183条1項)とは、逆に、株式を分割して、より多い数の株式にすることである。

 どちらも、各株主の保有株式数を一律・按分比例的に減少または増加させるものである。

 

商法31/ 会社法31/ 186/  株式の併合(#会社法180条1項)は、数個の株式を合わせ、より少ない数の株式にすること、株式の分割(183条1項)は、逆に、既発行株式を、それより多い数の株式にすることである。前者には株主総会特別決議を要する。株主の地位を失い、端数の金銭処理に甘んじるべき株主が生ずるからである。

[『LEGAL QUEST会社法』3版125頁参照。法的判断枠組み(条文ないし制度の説明)。]

 

 

●株式の併合の手続

[・株式の併合をするには、株主総会の特別決議により、併合の割合や効力発生日等を定める必要がある(会社法180条2項・309条2項4号)。株主の利害に重大な影響を与えるものだからである。取締役は、当該株主総会で、株式併合を必要とする理由を説明しなければならない(180条4項)。

また、当該株主総会で、効力発生日における発行可能株式総数(113条参照)を定める必要がある(180条2項4号)。公開会社では、効力発生日における発行済株式総数の4倍を超えることができない(同条3項)。たとえば、従前の発行可能株式総数1万株、発行済株式総数3000株の公開会社が、2株を1株に併合する場合、効力発生日の発行済株式総数は1500株となるそのため、発行可能株式総数を、1500株の4倍以下、すなわち、6000株以下に変更する(減少させる)必要がある。既存株主の持株比率の低下の限界を定めるため(既存株主の持株比率維持のため)である。]

 

 

会社法85/ 株式12/ 440/ 株式併合は株主総会特別決議で,#併合割合,効力発生日,発行可能株式総数等の定め要(会社法180条2項・309条2項4号)。株主の利害に重大な影響があるから。取締役は株主総会で,#株式併合を要する理由説明要(180条4項)。公開会社の発行可能株式総数は,効力発生日における発行済株式総数の4倍以下(同条3項)。

[『LEGAL QUEST会社法』3版125頁、126頁、R29②Q2、参照。法的判断枠組み。]

   

●株主の保護

[・株式の併合は株主の利害に重大な影響を与えるため、併合により端数となる株式が単元未満株式に限られるような場合を除き(会社法182条の2第1項)、以下の株主保護手続がとられる。

 ①端数株式の買取請求権(182条の4)。②差止請求権(182条の3)。③事前の情報開示(181条。182条の2、施行規則33条の9)。④事後の情報開示(182条の6、施行規則33条の10)。]

 

会社法86/ 株式13/ 441/ 株式併合は株主の利害に重大な影響を与えるため,①#端数株式買取請求権(会社法182条の4),②#差止請求権(同条の3),③#事前情報開示(181条,182条の2.施行規則33条の9),④#事後情報開示(182条の6,施行規則33条の10)で保護される。併合により端数となる株式が単元未満株式だけの場合を除く(同条の2第1項)。

[『LEGAL QUEST会社法』3版126頁参照。法的判断枠組み(条文、制度)。]

 

●株式無償割当て

商法32/ 会社法32/ 187/ 株式無償割当て(#会社法185条)は、会社が株主の保有株式数に応じて、当該会社の株式を無償で交付するすることである。株式の分割と経済実質を同じくする。ただし、無償割当てでは、発行済株式と異なる種類の株式の割当ても可能である。分割は自己株式にも効力が及ぶが、無償割当てでは及ばない。

[『LEGAL QUEST会社法』3版128頁、129頁参照。法的判断枠組み(制度の解説)。]

 

 

●単元株制度 

商法33/ 会社法33/ 188/ 単元未満株主には議決権がない(#会社法189条1項。188条1項・308条1項ただし書)。株主提案権等、議決権前提の権利もない(303条等)。その他の権利は、残余財産請求権(189条2項5号)や配当請求権(同条項6号、施行規則35条1項7号ニ)等の自益権を除き、定款で排除できる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版130頁参照。法的判断枠組み(条文および制度の説明)。株主提案権につき、T19(40イ)参照。]

 

商法34/ 会社法34/ 189/ 単元未満株式を譲渡により取得した場合の株主名簿の名義書換請求権(#会社法133条)は、定款で排除可能であり(施行規則35条1項4号参照)、株券発行会社は単元未満株主に株券を発行しない旨を定款で定めうる(会社法189条3項)。このような定款の定めで、単元未満株式の流通阻止を図れる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版130頁参照。法的判断枠組み(条文および制度の説明)。]

 

 〔機関〕👉別稿: http://right-droit.hatenablog.com/entry/2018/02/04/194333

 〔計算・債権者保護制度〕http://right-droit.hatenablog.com/entry/2018/02/24/231330

 

〔資金調達方法〕
■募集株式の発行
商法41/ 会社法41/ 196/
#第三者割当て につき、①既存株主から新株主へのいわば利益移転(経済的価値の希釈化)の調整のため、有利発行規制(199条3項)があり、②既存株主の持株比率調整のため(支配にかかる利益保護)、差止請求権(210条2号)があり、授権資本制度(37条3項、113条3項)が限界を画する。
 『LEGAL QUEST会社法』3版307頁、308頁参照。[法的判断枠組み(制度の説明)]

 

商法42/ 会社法42/ 197/
#募集株式の発行等 は、株式会社が発行する株式の引受人の募集、株式会社の処分する自己株式の引受人の募集の2つの概念を含む(会社法199条1項)。
募集は、株式引受けの申込みの誘引であり、①株主割当て(202条)、②第三者(既存株主含む)割当て、③公募(実際、第三者割当て)をいう。
 『LEGAL QUEST会社法』3版307頁参照。[法的判断枠組み(条文の文言・制度説明)。事実の分析(公募は、わが国では一般に、証券会社が株式の総数を引き受けて投資家に販売している(買取引受け。205条)。)]

 

商法43/ 会社法43/ 198/
会社法199条以下に基づく株式発行の場合を、通常の株式発行という。
一方、①取得請求権付種類株式・取得条項付種類株式の対価として、②株式分割により、③株式無償割当て、新株予約権行使、吸収合併・吸収分割・株式交換に伴う株式発行により、株式数が増加する場合、#特殊の新株発行 という。
 『LEGAL QUEST会社法』3版307頁、308頁参照。[法定判断枠組み(概念の説明)]

商法20/ 会社法20/ 136/
会社法199条3項「特に有利な金額」は公正な発行価額より特に低い価額をいう。公正な発行価額には、価額決定前の株式価格との近接、騰落習性、売買出来高実績、資産・収益・配当・株式市況状況、発行済株式数、発行予定株式数・その消化可能性等を総合し、旧株主利益と資金調達との調和を要する。
 東京地決平16・6・1判時1873-159『会社法判例百選』2版〔24〕参照。[法的判断枠組み(条文の文言の説明。裁判例)]


新株予約権

 

社債

 

〔組織再編〕
■ 組織再編の意義
商法14/ 会社法14/ 37/
キャッシュアウトとは、ある者(買収者)が、株式会社(対象会社)の発行する株式の全部を、株主の個別の同意を得ることなく、金銭を対価として取得することをいう。経営政策上の合理性が認められる場合、差止請求権、株式買取価格の決定制度、情報開示など株主保護の仕組みの下で許容される。#会社法
 『LEGAL QUEST会社法』3版377、378頁参照。

商法45/ 会社法45/ 202/
#組織再編 手段の多様化。合併は、当事会社が合一するので、賃金体系統一の煩、簿外債務承継のリスクがある。平成11年創設の株式交換・株式移転によれば、それを回避できる。平成12年創設の会社分割によれば、事業譲渡と異なり、債権者の承諾を要せず、債務を他の会社に承継させうる利点がある。
 『LEGAL QUEST会社法』3版387参照、383頁参照。[法的判断枠組み(制度比較)]

商法15/ 会社法15/ 38/
承継型組織再編の対価は組織再編契約で自由に決められる(対価柔軟化)。代わりに、株式買取価格は「公正な価格」とされ、消滅会社等の株主が、組織再編による企業価値の増加分(シナジー等)の公平な分配を受けられる。新設型組織再編では、対価は、設立会社の株式の他は、社債等に限られる。#会社法
 『LEGAL QUEST会社法』3版391頁参照。

商法1/ 会社法1/ 9/
事業譲渡(#会社法467条 1項)とは、①一定の事業目的のために組織化され、有機的に一体として機能する財産を譲渡し、これによって、②事業活動を譲受会社に受け継がせ、③譲渡会社が、法律上当然に21条の競業避止義務を負うものをいう。法の解釈の統一性を保つため、21条以下と同様に解する。
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系335頁参照。[法的判断枠組み]

商法2/ 会社法2 / 10/
「事業の重要な一部の譲渡」(#会社法467条 1項2号)とは、株主の重大な利害に関わる事業再編か否か、量的・質的な側面から判断される。量的基準として、譲渡資産の帳簿価格のほか、売上高、利益、従業員数等を総合的にみて、事業全体の10%を超えていることが必要である。
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系336頁参照。 [法的判断枠組み]

■ 組織再編の手続 
商法35/ 会社法35/ 190/
組織再編が法令・定款違反の場合に、株主が不利益をうけるおそれあるとき、株主は差止請求できる(#会社法784条の2第1号、796条の2第1号、805条の2。簡易組織再編は除外)。対価が著しく不当な場合も、特別利害関係人の議決権行使(831条1項3号参照)などを理由に差止請求できる。
 『LEGAL QUEST会社法』3版413頁~415頁参照。[法的判断枠組み(条文構造、制度の説明、条文解釈)] R21②設問4(合併の差止請求)、6(株主総会決議取消しの訴え、無効確認の訴え)関連。

商法36/ 会社法36/ 181/
B社株主のA社がB社株主総会で議決権行使し、他の株主に著しく不当な対価で、組織再編が承認された場合、特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議として、決議取消訴訟提起が可能。その認容による法令違反として、#組織再編差止請求訴訟 提起も可能。その双方を本案に仮処分も求めうる。
 『LEGAL QUEST会社法』3版414頁(なお、249頁)参照。[法的判断枠組み(制度の説明)] R21②設問4(合併の差止請求)関連。


■ 組織再編の無効の訴え
商法3/ 会社法3/ 11/
会社法467条 1項違反の行為は、無効である。株主保護のためである。法的地位の早期安定の見地から、当事者双方から無効主張できるのが原則であるが、譲渡後長期間経過してから当事者の一方が無効を主張することは信義則に反し許されない。
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系336頁参照。 [法的判断枠組み]

商法4/ 会社法4/ 12/
親会社の株主総会特別決議を欠く、子会社株式等の譲渡の私法上の効力は無効である。#会社法467条 1項2号の2・309条2項11号が、特別決議を要求する趣旨は、子会社株式等の譲渡が親会社にとって事業譲渡と同様の影響を与えることに鑑み、親会社株主の利益を保護することにあるからである。
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系336頁参照。 [法的判断枠組み]

 

●キャッシュ・アウトの効力を争う方法 

 [・株式の併合や、全部取得条項付種類株式の全部取得には、効力を争う特別の訴えの制度はない。

 しかし、これらの行為に重大な法令違反がある場合(たとえば、株主総会決議を欠く場合)、当然に無効となる。

 また、これらに必要な株主総会決議または種類株主総会決議に取消事由(会社法831条1項)がある場合、訴えにより決議が取り消されれば、これらの行為も無効である。キャッシュ・アウト対価の不当性は、原則として価格決定手続(182条の5、172条)で、争われるべきである。もっとも、買収者の議決権行使により著しく不当な対価となった場合は、831条1項3号により決議は取り消しうべきものとなる。]

 

会社法79/ 企業再編19/ 431/ 株式併合,全部取得条項付種類株式の全部取得の効力を争う特別の訴えはない。しかし,#重大な法令違反の場合,当然無効。必要な株主総会決議,種類株主総会決議に #取消事由(会社法831条1項)ある場合,訴えで決議が取り消せば,これらの行為も無効。対価不当性は,原則,#価格決定手続(182条の5,172条)による。

[『LEGAL QUEST会社法』3版380頁参照。法的判断枠組み。]


商法5/ 会社法5/ 13/
株式買取請求権における「公正な価格」(#会社法785条、797条、806条)は、シナジー(合併による相乗効果)が生じない場合には、原則として、吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がなかりせば、その株式が有したであろう価格をいうと解する。最決平23・4・19
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系339、340頁参照。[法的判断枠組み]

商法6/ 会社法6/ 14/
株式買取請求権における「公正な価格」(#会社法785条 等)は、シナジーが生じる場合には、なかりせば価格に吸収合併等によるシナジーその他の企業価値の増加分を加えた価格とすべきである。株式買取請求権は、企業再編されなかった場合の経済状態の保障、シナジーの分配を保障するものだから。
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系339、340頁参照。[法的判断枠組み]

商法7/ 会社法7/ 15/
「公正な価格」(#会社法785条、797条、806条)の算定基準日は、株式買取請求をした日である。なぜなら、売買契約と同様の法律効果が発生する時点を基準とすべきと考えるからである。最決平23・4・19
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系340頁参照。[法的判断枠組み]

商法8/ 会社法8/ 16/
合併契約締結には「重要な財産の処分及び譲受け」(#会社法362条4項 1号)として、取締役会決議が必要だが、代表取締役が株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有することにかんがみ、取締役会決議なくとも、内部的意思決定を欠くにとどまるものとして、有効である。
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系341頁参照。[事実の評価例]

商法9/ 会社法9/ 17/
合併比率の不公正も、無効原因とはならない。①合併契約は当事者が互いに有利な条件で締結しようとするものだから、当事者の交渉力等の違いから、若干不公正な合併比率となることはありうるし、②反対株主は株式買取請求権を行使することにより、自己の利益を確保できるからである。#会社法828条
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系341、342頁参照。[事実の評価例]

商法10/ 会社法10/ 18/
合併承認の総会決議に瑕疵(取消事由)がある場合は、無効原因となる。なぜなら、総会決議が取り消され得る場合、合併が承認決議なしになされという瑕疵は重大であり、株主を保護する必要があるからである。#会社法783条1項、795条1項、804条1項、309条2項12号
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系342頁参照。[事実の評価例]

商法11/ 会社法11/ 34/
総会決議取消しの訴えと合併無効の訴えとの関係は、合併効力発生前は前者のみ、効力発生後は後者のみ可能となる。合併無効の訴えを設けたのは、法律関係の画一的確定をはかるため、合併無効原因となる各種の瑕疵を独立の訴えとして提起することを排斥する趣旨と考えられるからである。#会社法828条
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系342頁参照。[法的判断枠組み]

商法12/ 会社法12/ 35/
決議に取消事由があることを合併の無効原因とする場合の出訴期間は、取消訴訟の出訴期間(831条1項)、決議の日から3ヶ月以内とすべきとの見解もある。
しかし、#会社法828条 は無効原因を限定していないのであるから、合併無効原因の訴えの出訴期間通り、制限はないと解すべきである。
 『趣旨規範ハンドブック』6版2民事系342頁参照。[法的判断枠組み]

商法13/ 会社法13/ 36/
会社法782条1項、794条1項、803条1項、施行規則183条6号、192条7号、205条7号で、事前開示事項は「債務の履行に関する事項」と改められており、会社分割の法的安定を図るため、債務の履行の見込みがないことは、会社分割の無効原因とはしない旨改められたものと解する。
 辰巳『趣旨・規範ハンドブック2民事系』6版345頁、『LEGAL QUEST会社法』3版420頁、参照。[法的判断枠組み(条文の解釈)]

 

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参照:辰巳『趣旨・規範ハンドブック2民事系』、『LEGAL QUEST会社法』、『会社法判例百選』、『合格答案を即効で書けるようになる本 ②民事系』、 『事例で考える会社法』初版。

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