140字刑法学 (総論)

 刑法総論に関する文章を140字以内にまとめ、可能な範囲で①法的判断枠組み、②事実の分析・評価に分けています。 twitter.com; http://twpf.jp/right_droit 

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目次
Ⅰ[序論]

Ⅱ[違法性(違法)に関するもの]
1. 〔構成要件〕 ■行為 ●間接正犯 
2. 〔違法性阻却事由〕 ■正当防衛

Ⅲ[有責性(責任)に関するもの]
1. 〔責任要件〕 ■故意 ■過失
2. 〔責任阻却事由〕 ■ 違法の意識  ■責任能力

Ⅳ[処罰拡張事由]
1. 〔未遂〕
2. 〔共犯〕 ■共犯の基礎理論 ■共犯の錯誤 ■片面的共犯 ■ 共犯関係からの離脱 
Ⅴ[罪数]
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本論
[序論]
[・犯罪とは、構成要件に該当し違法で有責な行為である。]

[違法性(違法)に関する要件]
〔 構成要件〕
■行為
●間接正犯
刑法21/ 総論17/ 296/
被害者の自宅に宅配便で毒入り饅頭を送り、知らない被害者に食べさせて殺害する場合など、行為者の行為後に結果を直接惹起する他人の行為が介入するにもかかわらず、行為者が結果を自ら惹起したと見うるときがある(#間接正犯)。直接正犯とは事実上の違い。非身分者に身分犯の間接正犯は成立しない。
 山口『刑法総論』3版44頁参照。[事実の分析]

刑法22/ 総論18/ 297/
正犯として構成要件的結果を惹起したと認めるためには、#構成要件的結果惹起の原因を支配したといいうること(#正犯性)が必要である。正犯性は基本的に、構成要件的結果についての十分な認識・予見をもちつつそれを直接惹起した者に認められる。#正犯性の認められる行為者の行為を実行行為という。
 山口『刑法総論』3版68頁参照。[法的判断枠組み(法的概念などについての基礎理論)]

刑法23/ 総論19/ 298/
行為者の行為後、因果過程に介在する #他人の結果惹起に対する答責性(自律性)が、その他人の結果惹起行為への行為者の支配の限界を画する。そして、被害者の行為の介入、それと均衡する第三者の行為の介入事例解決のため、#故意行為の介入の有無(遡及禁止原則)が正犯性判断の重要な基準となる。
 山口『刑法総論』3版69頁、68頁参照。[法的判断枠組み(基礎理論)]

刑法24/ 総論20/ 299/
構成要件要素たる身分や目的のない第三者の行為により構成要件的結果を生じさせた場合、第三者の行為に構成要件該当性は肯定できない。しかし、#背後者に直接正犯が成立し第三者に共同正犯ないし幇助が成立しうるので、身分なき故意ある道具・目的なき故意ある道具を利用する間接正犯とすべきでない。
 山口『刑法総論』3版73頁参照。[法的判断枠組み(基礎理論)] R21①参照、80万円の横領につき、背後者甲が直接正犯、占有という身分のない乙に幇助犯が成立しうる(?)。


〔 違法性阻却事由〕 ■正当防衛
■正当防衛

刑法47/ 総論27/ 363/
急迫性要件は,予期された侵害の回避義務を課す趣旨ではないから、ほとんど確実に侵害が予期されたとしても、ただちに侵害の急迫性は失われない。しかし、単に予期された侵害を避けなかったにとどまらず、#その機会を利用し積極的に相手に加害行為をする意思で侵害に臨んだときは、急迫性要件を欠く。
 最判昭52・7・21刑集31-4-747(『判例プラクティス刑法Ⅰ』〔188〕204頁)参照。[法的判断枠組み(判例)]

刑法48/ 総論28/ 364/
予期した侵害を回避・退避しないだけでなく、その機会を利用し積極的に相手に加害行為をするため、侵害に臨み、相手に攻撃を加える場合、実質は単に相手を侵害する場合と同視可。その反撃行為には、#緊急行為性(侵害からの保護を求める余裕がない状況での行為)がないので、侵害の急迫性が失われる。
 山口『刑法総論』3版126頁(最判平52・7・21刑集31-4-747)参照。[法的判断枠組み(理論的説明)]

 

刑法総論32/ 418/ 侵害の予期だけでは侵害の急迫性は失われないが,その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思(#積極的加害意思)で侵害に臨んだ場合,予期された侵害に対する反撃行為に,侵害からの保護を求める余裕がない状況でなされる行為(緊急行為)としての性格が失われる(侵害の急迫性要件みたさない)。

[山口『刑法総論』3版126頁(最判平52・7・21刑集31-4-747)参照。やっぱりこういう場合の事実をどう分析・評価するかという記述といえる(訂正)。]]

 

刑法46/ 総論26/ 362/
Xが自動車のダッシュボード内に本件刃物を入れておいたことは不法な刃物の携帯(#侵害発生以前からの不法な携帯)にあたり、それを護身用にポケットに移し替え携帯したとしても、不法な刃物の携帯の一部と評価できるので、検察官が本件刃物を現認した時点でのXの携帯行為には、違法性阻却余地なし。
 『判例プラクティス刑法Ⅰ』205頁〔189〕(最判平17・11・8刑集59-9-1449)、銃砲刀剣類所持等取締法2条2項、3条1項等、参照。[事実の分析・評価]


刑法49/ 総論29/ 365/
#喧嘩闘争は全般的に観察することを要し、闘争行為中の瞬間的な部分の攻防の態様により事を判断してはならないが、#喧嘩闘争においてもなお正当防衛成立の余地がある。
原審は、闘争全般を観察しなかったか、喧嘩闘争には常に全く正当防衛の観念を容れる余地がないとの前提に立ったかの点で、不当。
 最判昭32・1・22刑集11-1-31(『判例プラクティス刑法Ⅰ』〔191〕207頁)参照。[法的判断枠組み(判例)]

刑法50/ 総論30/ 366/
①侵害の予期があっても侵害の急迫性は直ちに失われないが、#積極的加害意思ある場合は急迫性が失われ、正当防衛は否定される。②憤激・逆上し、攻撃の意思が存在しても、防衛の意思は必ずしも否定されないが、積極的加害行為と認められ、#もっぱら攻撃意思で反撃が行われる場合、それは否定される。
 山口『刑法総論』3版134頁参照。[法的判断枠組み(判例)]

刑法51/ 総論31/ 367/
Aの暴行脅迫とXの刺突行為の時間的接着。Aの暴行脅迫意思放棄を思わせる行動も認められない。Xは64歳、身長168cm、体重67kgなのに対し、Aは44歳、身長178cm、体重87kgのがっしりとした体格、脱出にはAの横を通るしかない等を考え合わせると、#侵害の急迫性は失われない。
阪高判平16・7・23高刑速(平16)154頁(『判例プラクティス刑法Ⅰ』〔196〕212頁)参照。[事実の分析・評価例]

 

● 自招侵害

刑法総論33/ 419/ ①不正な暴行による侵害招致,②侵害は暴行直後に近接場所で行われた一連一体の事態,③侵害がそれを招致した暴行の程度を大きく超えない場合,正当防衛ができる状況(#緊急行為性)なく,正当防衛否定。ただし,暴行でなく,言葉による挑発の場合や,侵害程度が被告人による暴行の程度を大きく越える場合除く。

[山口『刑法総論』3版127頁、128頁(最決平20・5・20刑集62-6-1786)参照。事実の分析・評価。]

 


[有責性(責任)に関する要件]
〔責任要件〕 ■故意 ■過失 
■ 故意
刑法3/ 総論1/ 68/
故意とは「罪を犯す意思」(#刑法38条1項)すなわち犯罪事実の認識をいう。犯罪事実とは行為の違法性を基礎づける事実である。違法性を基礎づける点で構成要件が原則、違法性阻却事由が例外であり、故意があるというためには、構成要件該当事実、違法性阻却事由の不存在の双方の認識が必要である。
 平野『刑法概説』75、78頁参照。

 

刑法13/ 各論9/ 153/
「罪を犯す意思」(#刑法38条1項、故意)は、故意犯の構成要件(構成要件的故意)かつ責任要件である。犯罪事実の表象・認容が認められれば、構成要件該当性・有責性が基礎づけられ、犯罪事実の表象・認容を欠けば、構成要件該当性そのものが阻却される。期待可能性がなければ、責任が阻却される。
 団藤『刑法綱要総論』290、291頁参照。[法的判断枠組み(理論・体系的説明)。故意(mens rea)=TB(構成要件)・S(責任)。If there is no mens rea, then there is no TB. If there is no 期待可能性, then there is no S.
 そもそも故意は、責任(S)の領域の問題である。しかし、小野博士(団藤綱要134頁参照)・団藤教授は、故意は構成要件かつ責任要件(責任要素)であるとする。もっとも構成要件としての故意は、それを主観的・客観的な全体として考察した『違法類型』としての『客観的構成要件要素』と見ているようである(同頁参照)。さらに、この構成要件的故意(構成要件としての故意)は、責任要素の定型化としての意味も持ち、『有責類型』でもあるとされる(同書136~138頁参照)。]

 

刑法9/ 総論6/ 125/
母と妻からこもごも小言を言われ酒癖の悪いXは憤懣やる方なく、囲炉裏の反対側の両人めがけ憤激の余り本件鈎吊し(かぎつるし)を振りつけ、母Bの前頭部にあてたものである。Xは両人のいずれかにあたることを認識しながらこれを振ったのであり、その暴行はいわゆる択一的故意によるといえる。#刑法
 東京高判昭35・12・24下刑集2-11・12-1365『判例プラクティス』刑法Ⅰ総論〔90〕参照。[事実の評価例]

刑法10/ 総論7/ 126/
パーティー会場でABに一緒に出されるグラスの一方だけ致死量の毒薬を混入するような、いわゆる択一的殺意ある場合、1個の故意(殺意)で複数の故意犯(既遂犯と未遂犯)成立を肯定できる。既遂の可能性で足りる未遂概念の特性による。併存しうるのは未遂犯に限られ、未遂罪二罪も成立しうる。#刑法
 山口『刑法総論』2版211頁参照。[法的判断枠組み(理論的説明)]

 

●事実の錯誤
◆構成要件該当事実の錯誤

◆違法性阻却事由の錯誤
刑法14/ 総論10/ 183/
Xは急迫性を錯覚し、自己の生命身体を守るため、やむなく傷害に及んでおり、急迫不正の侵害がないのにあるものと誤信し、その錯誤に過失は認められない。したがって、錯誤により犯罪の消極的構成要件(違法性阻却事由)たる正当防衛を認識したもので、犯罪事実の認識を欠き、#故意 は認められない。
 広島高判昭35・6・9高刑集13-5-399『判例プラクティス』Ⅰ総論〔222〕参照。[事実の評価例(誤想防衛)。なお、山口『刑法総論』2版195頁L4①参照。]

 

刑法16/ 総論12/ 185/
急迫不正の侵害が存在し、過剰な防衛行為があるときに、①過剰性の認識・予見なければ、違法性阻却事由不存在の認識なく、故意が認められず(誤想防衛)、犯罪不成立。②その場合に、過剰性の認識・予見可能性あれば、過失犯(過失の #過剰防衛)。③過剰性の認識・予見あれば故意の過剰防衛である。
 山口『刑法総論』2版196頁参照。[法的判断枠組み。
 山口教授のいう過失の過剰防衛は、単なる過失犯とも思えるが、36条2項が適用されうるということだろうか?ただし、山口197頁の誤想過剰防衛において、過失犯が成立した場合の取扱いと同じく、刑の免除はできないと解すべきできではないだろうか?]

刑法15/ 総論11/ 184/
急迫不正の侵害がないのにあると誤信し、それに対する対抗行為が、誤想した侵害が実際に存在するとした場合の許容範囲を超えていたとき、如何。行為者に過剰性の認識・予見があれば、故意の #誤想過剰防衛 となる。なければ、故意はないが、その認識・予見可能性あれば、過失の誤想過剰防衛となる。
 山口『刑法総論』2版196頁参照。[法的判断枠組み。
1. なお、故意の誤想過剰防衛も、過失の誤想過剰防衛も、故意犯に対する刑法36条2項による刑の減免の余地の問題である。
2. これに対して、急迫不正の侵害を誤想したことについてそもそも過失がある場合には、過失犯の成否の問題である。
 その場合には、すでに過失犯が成立しているので、過剰性について認識・予見がある場合に(故意の過剰防衛?)、違法な過剰防衛となる事実について、その限度での故意犯に相当する部分に対し、36条2項を適用するとしても、すでに成立している過失犯の刑よりも軽く処断することはできないと解する。
 具体的には、刑の免除はできない(山口197頁参照)。
3. 以上、自分なりに、山口教授の説明を敷衍しようと試みたが、成功しているかどうかわからない。]


■過失
刑法11/ 総論8/ 127/
過失犯成立には、構成要件たる因果関係の認識・予見可能性を要する。行為者に認識・予見可能だった因果経過と実際の因果経過とが違っても、構成要件としての因果関係存在の点で両者が符合し、かつ、結果の具体的予見(予見の具体性)を担保しうる因果経過の基本的部分の予見可能性があればよい。#刑法
 山口『刑法総論』2版235・236頁参照。[法的判断枠組み(理論的説明)。札幌高判昭51・3・18高刑集29-1-78(北大電気メス事件)の言い回しと、山口教授の説明とをなんとか組み合わせた。
 正直に書くと、北大電気メス事件の「因果関係の基本的部分」という言い回しが、故意の錯誤論の裏返しだ(と思う。私の理解がまだ足りていないかもしれませんが)ということに、上記の文章まとめていて気が付きました。それまでは、単なる暗記にすぎませんでした。]
 刑法T29(11ウ)参照。


〔責任阻却事由〕
■ 違法の意識
刑法4/ 総論/ 69/
故意が認められれば、通常は違法の意識に達していたと考えられるので、自己の行為の違法を意識してなくとも、故意犯としての責任を問われる(#刑法38条3項本文)。ただ、違法の意識に達しないことに相当な理由がある、違法の意識の可能性すらない場合、責任が阻却され刑が減軽される(ただし書)。
 平野『刑法概説』92頁参照。[法的判断枠組み。いわゆる制限責任説。
 最大判昭44・6・25刑集23-7-975(夕刊和歌山事件)は、このような場合には、「犯罪の故意がな」いとするが、故意が認められた上での、情状に関することであるから、表現としては妥当でない。
 判例は厳密な意味で「故意がな」いと書いているのではない、いわゆる(制限)故意説(平野・概説94頁説明参照)をとったものではないと考える。
 大越『刑法各論』3版89頁説明(判例=制限故意説?)参照。]

 

■ 期待可能性

 

責任能力

責任能力

刑法総論36/ 責任10/ 504/ 責任能力は,刑法39条,41条に規定がある。#罰しない場合が責任無能力_刑の減軽の場合が限定責任能力。責任無能力者は非難できない。#責任能力は犯罪行為時に要。責任能力は責任の要素。責任要件としての故意・過失の認定後,責任阻却事由として責任無能力が問題となる。,#個々の行為について問題となる。
[平野『刑法概説』100頁-101頁参照。法的判断枠組み(基礎理論)]

 


[処罰拡張事由]
〔未遂〕
[・実行の着手(43条本文)とは、#構成要件の要素をなす行為あるいはこれに接着する行為で、#結果発生の切迫した危険のある行為 をいう。未遂処罰の実質的理由は、このような #結果発生の危険発生の防止 をも含むと考えるからである。]

 

〔共犯〕 ■共犯の基礎理論 ■共犯の錯誤 ■片面的共犯 ■ 共犯関係からの離脱 
■共犯の基礎理論
刑法20/ 総論15/ 247/ 他の共犯者の行為に加担し、他人の行為を通じ、法益侵害結果発生に心理的・物理的因果性を及ぼしたことが共犯処罰根拠である。共犯も間接的にせよ、自ら因果的に引き起こした事態に、その限度でのみ責任を負う(個人責任原理)。ここにいう因果性は #促進的因果関係 で足り、条件関係までは不必要。
[『判例プラクティス刑法Ⅰ総論』〔374〕(東京高判昭25・9・14高刑集3-3-407)395頁参照。法的判断枠組み(基礎理論)。]

 

刑法総論35/ 共犯13/ 488/ 共犯行為の危険性は,#実行行為を惹起・促進する客観的危険性である必要あり。正犯がそれを実行行為に利用する可能性が考えられないではないという程度では足りない

#犯行の具体的契機の存在や_一般的可能性を超える具体的侵害利用状況がなければ,客観的危険性は認められない(中立的行為による幇助)。

[山口『刑法総論』3版321頁-322頁(最判平23・12・19刑集65-9-1380(Winny事件)。前半,法的判断枠組み。後半,事実の分析・評価例。)]


■共犯の錯誤
刑法総論25/ 313/
教唆、幇助、共同正犯、単独正犯(間接正犯)は、構成要件該当事実の異なった惹起形態にすぎないので、これらの間で実質的に軽い惹起形態の限度で実質的符合を認め、その限りで、#客観的に実現された事実と認識・予見されていた事実の共通部分につき、犯罪の成立を肯定できる(#関与形態間の錯誤)。
 山口『刑法総論』3版364頁参照。[法的判断枠組み(基礎理論)]

刑法総論24/ 312/
①教唆の意思で幇助となった場合、幇助(共通部分)成立。②幇助の意思で教唆となった場合も幇助成立。③間接正犯の意思で教唆となった場合、教唆成立。④教唆の意思で間接正犯となった場合も教唆成立。なお、③の場合、被利用者が気づかずに実行する可能性があるので、#間接正犯の未遂も成立しうる。
 山口『刑法総論』3版365頁参照。[事実の分析・評価例]


■片面的共犯 (判例、山口教授などは否定。大越教授は肯定。その違いは、#意思の連絡 をどう考えるかにある。)
刑法27/ 総論21/ 302/
幇助の因果関係は正犯行為を介す必要があるが(因果共犯論・惹起説)、正犯の心理を介さず正犯行為を物理的に促進し結果との因果関係を生じうるので、#片面的幇助は肯定。しかし、共同正犯は構成要件該当事実の共同惹起だから、その共同性の担保のため意思連絡が必要なので、#片面的共同正犯は否定。
 山口『刑法総論』3版366頁(大判大14・1・22刑集3-921、大判昭3・3・9刑集7-172、東京地判昭63・7・27判時1300-153など。大判大11・2・25刑集1-79など)、367頁参照。[法的判断枠組み(判例)]

刑法28/ 総論22/ 303/
片面的共犯は、意思疎通なく、共同加功意思ある者が、他者の犯罪行為への一方的関与である。意思疎通ある典型的共犯と、意思疎通なく単に正犯が競合する同時犯との中間。片面的共同正犯否定、片面的幇助犯肯定。#共同者間の意思疎通こそが共同正犯に特有の一部実行の全部責任を基礎づけるからである。
 大越『刑法総論』4版194頁参照。[法的判断枠組み(判例。責任共犯説)]

刑法29/ 総論23/ 304/
人食い虎のいる部屋に人を押し込め被害者が食い殺されたら、押し込めた者に殺人罪が成立するが、殺人者Aが待つ部屋に押し込め、Aにより殺された場合、押し込めた者に殺人罪(間接正犯)不成立。#自律性・当責性を備えたAに殺意ある限りAの行為を介し死亡結果惹起を支配したといえないからである。
 山口『刑法総論』3版367頁、368頁参照。[事実の分析・評価例]

[・片面的共犯とは、意思の疎通なく、共同加功の意思を有する者が、他者の犯罪行為に、一方的に関与する場合である。意思疎通のある通常の共犯と、単に正犯が競合しているにすぎない同時犯との中間の概念である。
 判例は、片面的従犯は肯定するものの、片面的共同正犯は否定する。意思疎通こそが、共同正犯の一部実行全部責任を基礎づけると考えるからであろう。
 しかし、共同正犯の全部責任は、因果関係に基づくものと解され(惹起説)。犯罪結果惹起の態様はさまざまで、相手の心理を通じて行う方法、相手の行為・結果に直接働きかける物理的な方法によっても、共同正犯たりうるといえ、犯罪結果惹起に共同者間の意思疎通は必然ではない。(疑問:物理的な方法による共同惹起がありうるのか?やはり、共同性を担保するためとする山口説がすんなり来るように思う。)
 したがって、たとえば、甲が暴行をもちいて乙女を強姦しつつあるときに、共に犯罪を犯す意思で、甲の気づかない間に乙女の足を押さえていた丙に、強姦罪の片面的な共同正犯(60条)が成立すると解する。(この場合、甲も共同正犯かとの疑問ももったが、片面的というのは、その名前の通り、片面的に一方の共犯にしか生じないものといえる。)]

 


■共犯関係からの離脱
刑法5/ 総論/ 70/
共犯関係からの実行の着手前(#刑法43条本文)の離脱者には、予備罪を除き、刑事責任は生じない。実行着手前に①翻意して離脱の意思を表明し②それを他の共謀者が了承することが必要である。ただ、共謀者団の頭である者については、共謀がなかった状態に復元しなければ、離脱を認めるべきではない。
 山口『刑法総論』2版 352、353頁参照。
[Q:住居侵入窃盗の共謀の下、住居侵入後窃盗着手前に①・②を満たした場合は?
A:リプライ有難うございます😂
 130条前段の構成要件を検討しみたしていれば、住居侵入罪(共犯)のみが成立しうる。235条の実行の着手(犯罪実現の現実的危険性ある行為、具体的には物色等)前なので、①②をみたせば、離脱者は窃盗罪の未遂も既遂も責任を負わない。窃盗の予備罪もないからである。
 いわゆる組織的犯罪処罰法違反(6条の2第1項2号・別表第三2号ネ参照)除く。]

刑法17/ 総論13/ 244/
被告人は、見張り役が住居内の共犯者に電話で「先に帰る」などど #一方的に伝えた のを認識していただけで、犯行防止措置をとることなく、見張り役らと共に離脱したにすぎず、たとえ、強盗着手前であり、残された共犯者らが被告人の離脱を了知していても、当初共謀が解消したということはできない。
 最決平21・6・30刑集63-5-475、平成21年度『重要判例解説』〔刑法3〕179頁参照。[事実の評価例]

刑法18/ 総論13/ 245/
共犯処罰根拠は因果的惹起にあるから、自らそれまでの因果的寄与を撤回し犯罪結果との因果性を遮断すれば、共犯処罰根拠を欠き離脱以降に生じた犯罪事実の責任を負わない。実行着手前に離脱の意思を表明し、他の関与者の #了承 があれば、共同正犯関係は解消する。ただし、一方的通告では足りない。
 平成21年度『重要判例解説』〔刑法3〕179頁、180頁(最決平21・6・30刑集63-5-475)参照。[法的判断枠組み。
 葛原力三先生は、「継続者の了承は離脱者の因果的寄与とは関係しない」と書かれているが、納得して了承すれば、認識(了知)以上に、心理的影響力(心理的因果性)を除去できるのではないのかな?
 私の理解が足りていないだけなんでしょうね?
 他の関与者の了承があれば、共同正犯関係の解消を認める一連の裁判例があるようですので、とりあえず、因果性遮断論(因果的共犯論)と、了承とを組み合わせて書いても、あながち間違いではないのだろうと思います。]

刑法19/ 総論14/ 246/
いったん犯罪遂行を共謀しても、着手前に他の共謀者に実行中止を明示し他の者が #了承 し、犯罪を実行した場合、前共謀は全くなかったものと評価でき、他の共犯者の実行した犯罪の責を分担すべきでない。
Xは自発的に犯意放棄し他の共謀者に明示しており、他3名が了承し窃盗に及んだのは明らか。
 東京高判昭25・9・14高刑集3-3-407『判例プラクティス刑法Ⅰ総論』〔374〕395頁参照。[法的判断枠組み+事実の分析・評価例]


刑法6/ 総論/ 71/
共犯関係からの、実行の着手後(#刑法43条本文)既遂前の離脱の要件は、①離脱意思の表明、②他の共謀者の了承、③他の共謀者が現に行っている実行行為を中止させ、以後は自己を含め他の共謀者の誰もが当初の共謀に基づく実行行為を継続することのない状態の作出である。未遂の限度で共犯となる。
 山口『刑法総論』2版 352~355頁、最決昭元・6・26刑集43-6-567、R19①、参照。


[罪数]
刑法8/ 総論5/ 104/
「1個の行為」(#刑法54条1項前段)とは、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が、社会的見解上1個のものとの評価を受ける場合をいう。公務執行妨害罪と傷害罪、収賄罪と盗品等無償譲受け罪などである。複数罪の内、最も重い刑(の罪)により処断する。
 ⇒複数の罪の内、最も重い刑を定めた罪の、その法定刑により処断する。
 辰巳『趣旨・規範ハンドブック』5版刑事系77頁、山口『刑法総論』2版379頁、参照。[法的判断枠組み(判例)、最大判昭49・5・29刑集28-4-114参照]

The end of the list
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参照:辰巳『趣旨・規範ハンドブック』。『判例プラクティス』、『判例百選』、『重要判例解説』。LEX/DB。『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』刑事系。『工藤北斗の合格論証集』。受験新報。
 山口『刑法総論』『刑法各論』、平野『刑法概説』、西田『刑法各論』、団藤『刑法綱要総論』、大越『刑法総論』有斐閣Sシリーズ。等