ミニマム法律学

法律書等を読んで,理解し覚えられるように短くまとめて行こうと思っています。ツイッター→https://twitter.com/right_droit YouTube(判例原文の音読)→https://www.youtube.com/channel/UCqVOy5zBmI3GzOI_WF5Dc6Q/featured

民訴法/ 補助参加; 独立当事者参加

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〔訴訟参加〕

⬛補助参加

 

⚫補助参加制度の趣旨

[・補助参加とは、他人間に係属中の訴訟の結果について利害関係を有する第三者(補助参加人)が、当事者の一方(被参加人、主たる当事者)を勝訴させることによって自己の利益を守るために訴訟に参加する形態である。補助参加人は、自らの利益を守るために自らの名と費用で訴訟を追行するが(独自の権能をもつ、従たる当事者)、相手方との間に自己の請求を持ち込んで審判を求める者ではない(従属的な側面)。]

 

民訴法97/ 576/ 補助参加は,#他人間に係属中の訴訟の結果につき利害関係を有する第三者(補助参加人)が,当事者の一方(被参加人,主たる当事者)を勝訴させることにより自己の利益を守るため訴訟参加する形態。#自らの利益を守るため自らの名と費用で訴訟追行_相手方との間に自己の請求を持ち込み審判を求めるのではない。

[安西『Law Practice 民事訴訟法』(2011年)301頁〔基本問題41〕参照。概念ないし制度の説明]

 

⚫補助参加の要件 

民訴法7/ 101/ 補助参加の要件は、①訴訟の結果に②利害関係を有することである(#民訴法42条)。②は、法律上の利害関係であり、私法上または公法上の法的地位・法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいう。判決効が及ぶ場合に限られない。①は、判決主文で判断される訴訟物たる権利・法律関係の存否を指す。

[『民事訴訟法講義案』再訂補訂版312、313頁参照。法的判断枠組み]

 

⚫補助参加の手続

[・補助参加の申出は、参加の趣旨(いかなる訴訟でどちらの当事者に参加するのか)および理由(利害関係があることの事情)を明らかにして、参加後に訴訟行為をすべき裁判所にしなければならない(民訴法43条1項)。

 参加の理由を具備するか否かの調査は、当事者が異議を述べた場合に限り、調査する。異議が述べられたときは、参加人は、参加の理由を疎明しなければならない(44条1項後段)。]

 

民訴法93/ 495/ 補助参加の申出は,#参加の趣旨(いかなる訴訟でどちらの当事者に参加するのか),#理由(利害関係あることの事情)を明らかにし,参加後訴訟行為すべき裁判所にする(民訴法43条1項)。参加の理由具備は,当事者が異議を述べた場合に限り調査。異議が述べられたときは,参加人は,参加理由を疎明要(44条1項後段)。

[『講義案民事訴訟法』再訂補訂版313頁_314頁,森圭司『ベーシック・ノート民事訴訟法』新訂版301頁,参照。法的判断枠組み(条文制度)]

 

 ⚫補助参加人に対する判決の効力

[・補助参加がなされた訴訟で下された判決は、その訴訟の当事者に効力が及ぶのはもちろん(既判力につき、民訴法115条1項1号)、一定の要件の下で、補助参加人にも効力が及ぶ(46条)。これは、補助参加人として十分に主張・立証を尽くした、あるいは尽くすことが期待できた事項については、補助参加人は自己を当事者とする第2の訴訟で補助参加訴訟で下された判断内容をもはや争うことができないという趣旨である。

 このような判決の効力は、既判力とは異質の補助参加に特殊な効力(参加的効力)であると解する。これは、参加人が被参加人と共同して訴訟を追行した以上、敗訴の責任を公平に分担すべきであるという公平の見地ないし禁反言の原則により根拠づけられる。]

 

民訴法98/ 577/ 補助参加訴訟の判決は,訴訟当事者に効力が及ぶのはもちろん(既判力,民訴法115条1項1号),一定要件の下,補助参加人にも及ぶ(46条)。#補助参加人として十分主張・立証を尽くした・尽くすことが期待できた事項につき_補助参加人は自己を当事者とする第2訴訟で補助参加訴訟の判断内容を争えないという趣旨。

[安西『Law Practice 民事訴訟法』(2011年)307頁〔基本問題42〕参照。補助参加訴訟の判決の効力]

 

⚫補助参加人の訴訟上の地位

[・補助参加人は、自らの利益保全を最終目的として、既存の訴訟当事者の意思に反してでも参加でき、自己の名と費用の投下において訴訟を追行する。単なる補助者ではない。その意味で、当事者からは独立した地位を有する。

 しかし、相手方との間に独自の請求を定立して訴訟当事者となるものではなく(従たる当事者)、あくまで他人の訴訟を補助し、被参加人の勝訴を通じて自己の利益保全を図るもの。つまり、自己固有の利益を保全するために、他人を補助するという複合的性格を有する。]

 

民訴訟94/ 496/ 補助参加人は,自らの利益保全を最終目的とし,既存の訴訟当事者の意思に反しても参加でき,自己の名と費用投下において訴訟追行。単なる補助者ではなく,#当事者から独立した地位。しかし,独自請求を定立し訴訟当事者となるものではなく(#従たる当事者),あくまで他人の訴訟を補助する複合的性格を有する。

[『講義案民事訴訟法』再訂補訂版314頁,参照。法的判断枠組み]

 

 

 ⚫既判力と参加的効力の相違点

[・①既判力は、公権的判断によって紛争を解決し、その蒸し返しを禁止する制度なので、勝訴の結果にかかわらず生じ、公権的要求から職権調査事項とされる。参加的効力は、補助参加人が被参加人と共同して訴訟追行したことに基づく敗訴の責任を分担させるための衡平の要請によるものであり、被参加人敗訴の場合だけに生じる。職権調査事項ではなく、当事者が援用した場合に取り上げれば足りる。②既判力は、当事者双方に対して生じる。参加的効力は、被参加人敗訴の場合に、参加人と被参加人との間に生じる。③既判力は判決主文中の判断に生じる。参加的効力は、理由中の敗訴理由となった事実認定や法律判断について生じる。]

 

民訴法95/ 501/ ①既判力は,公権的紛争解決,蒸し返し禁止の制度で,勝訴結果にかかわらず,当事者双方に生じ,職権調査事項。②参加的効力は,#補助参加人と被参加人との共同訴訟追行に基づく敗訴責任分担のための衡平の要請。被参加人敗訴の場合だけ。当事者援用要。理由中の敗訴理由となった事実認定,法律判断に生じる。

[森圭司『ベーシック・ノート民事訴訟法』新訂版302頁(参加的効力説,兼子・双書231頁など通説,最判昭45・10・22など),参照。法的判断枠組み(基礎理論)]

 

 ⚫参加的効力の範囲

[・参加的効力は既判力と異なる補助参加に特殊な効力であるが、その具体的差異は、①民訴法46条所定の除外例が定められているように具体的事情によって効力が左右されること、②判決効の存在は職権調査事項でなく当事者の援用を待つことのほか、③判決主文の判断のみならず理由中の判断にも及ぶこと、④被参加人敗訴の場合にのみ問題となり、被参加人・参加人間にしか及ばないことが挙げられる。]

 

民訴法99/ 578/ 参加的効力は既判力と異なる補助参加に特殊な効力。具体的差異:①民訴法46条所定の除外例のような具体的事情により効力が左右される,②#判決効の存在は職権調査事項でなく当事者の援用要,③#判決主文の判断のみならず理由中の判断にも及ぶ,④被参加人敗訴の場合のみ。被参加人・参加人間しか及ばない。

[安西『Law Practice 民事訴訟法』(2011年)308頁〔基本問題42〕参照。参加的効力の範囲,既判力との違い]

 

 

 

 

 

⬛独立当事者参加

⚫独立当事者参加の要件

[・独立当事者参加形態には2つある。「訴訟の結果によって権利が害されることを主張する」場合(民訴法47条1項前段)を詐害防止参加といい、「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する」場合(同項後段)を権利主張参加という。これらいずれかの要件をみたす場合には、別訴により自らの権利実現を図るという方法のほかに、他人間の訴訟に独立の当事者として参加できることになる。詐害防止参加は、馴れ合いにより事実上不利益が生ずる場合にできるとされるが、実際例は後者より少ない。権利主張参加は、係属中の所有権確認請求訴訟に第三者が所有権確認を求めて参加する例を典型例とする。]

 

 

民訴法100/ 579/ 独立当事者参加形態には,#詐害防止参加(民訴法47条1項前段)と,#権利主張参加(同項後段)とがあり,いずれか要件をみたせば,別訴で自らの権利実現を図る方法のほか,他人間の訴訟に独立当事者として参加できる。前者は,#馴れ合いにより事実上不利益が生ずる場合にできる。後者は,#所有権確認の例が典型例。

[安西『Law Practice 民事訴訟法』(2011年)317頁〔基本問題43〕参照。独立当事者参加形態の種類]

 

 

会社法/ 差別的行使条件付新株予約権の無償割当てと不公正発行

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新株予約権無償割当てを用いた買収防衛策と会社法上の問題点

 

⚫差別的行使条件付新株予約権の無償割当ての意義と募集新株予約権の発行の差止め

 

会社法101/ 企業の買収・結合・再編28/ 571/ 会社法247条は,「#第238条第1項の募集に係る新株予約権の発行」の差止請求であるため,247条を277条以下の新株予約権無償割当てに直接適用できない。しかし,#新株予約権無償割当ての内容次第で既存株主の不利益生がじうるため,247条類推適用により救済策として新株予約権無償割当差止請求を認めるべき。

[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版316頁(東京高決平17・6・15判時1900-156,東京地決平19・6・28金判1270-12)参照。会社法247条の類推適用]

 

 

⚫差別的行使条件付新株予約権の無償割当てと株主平等原則

 

会社法102/ 企業の買収・結合・再編29/ 572/ 株主は株主としての資格で新株予約権無償割当てを受けるが,#新株予約権の内容同一性が前提(会社法278条2項)と解されるので,株主平等原則(会社法109条)の趣旨が及ぶ。差別的行使条件付新株予約権無償割当ては,同原則の直接違反ではないが,#その背後にある衡平の理念に鑑み実質的に合理性の有無,判断要。

[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版317頁(最判平19・8・7民集61-5-2215)参照。新株予約権無償割当てと平等原則]

 

 

会社法103/ 企業の買収・結合・再編30/ 573/ #特定株主の経営支配権取得に伴い会社企業価値毀損_会社利益ひいては株主共同利益が害される場合,防止のための当該株主の差別的取扱いも,#衡平の理念に反し相当性を欠かない限り,株主平等原則に反しない。判断の前提事実の不存在・虚偽等,正当性を失わせるような重大瑕疵なき限り,株主自身の判断尊重。

[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版318頁(最判平19・8・7民集61-5-2215)参照。特定の株主の差別的取扱いに合理性が認められるかの判断の仕方]

 

⚫差別的行使条件付新株予約権の無償割当てと不公正発行

 

会社法104/ 企業の買収・結合・再編31/ 574/ #公開会社株主総会に他の株主選別権限は当然にはなく,特定株主による会社支配権取得阻止権限は認められない。決議が行われたとしても,差別的行使条件付新株予約権無償割当ては,直ちには正当化されない。不公正発行非該当につき,#買収防衛策を発動する会社側にかなり重い立証責任が課されると解する。

[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版319頁参照。公開会社における差別的行使条件付新株予約権無償割当ての合理性・適法性の立証責任]

 

◯違法な利益供与にあたるか

 [この論点については省略。後日書き足すこともあるかも知れませんが,関心を持たれている方は,上記文献等でご確認下さい。]

 

2018年4月分ツイート: 58 (憲法8; 民法17,会社法10,民訴法5,倒産法5; 刑法11,刑訴法1; 他1)

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2018年4月分ツイート(21日-30日): 16 (倒産法5;刑法10,刑訴法1) 計58

2018年4月30日(4)
刑訴法56/ 596/ 死亡等の事由(刑訴法321条)は,公判期日等に供述者供述が得られない場合の例示で,供述再現不能を示す他の事由,含む。公判廷で証言拒絶権行使,相被告人が黙秘権行使の場合,該当。#公判廷の供述が全く得られない点_死亡_所在不明等の列挙事由と異ならないから。書面を証拠としても,証言拒絶権侵害でない。
[司法協会『刑事訴訟法講義案』4訂版311頁(最判昭27・4・9刑集6-4-584,最判昭28・4・16刑集7-4-865,最決昭44・12・4刑集23-12-1546)参照。公判廷での証言拒絶権行使等は,刑訴法321条1項各号の要件に該当するか]

/ [メモ] 刑訴法,何が大事だろうか? GPS捜査の判例(最大判平29・3・15)は,最重要のようだ。秘密交通権,公判前整理手続における証拠開示,供述証書の証拠能力(321条関係)など(受験新報)も重要そうだ。おとり捜査の適法性,訴因の特定など(ハイローヤー)も,しっかり書けるように勉強し直さないといけない。😟
18:15 - 2018年4月30日
https://twitter.com/right_droit/status/990882221606125568

倒産法56,57/ 民再13,14/ 594,595/ 再生手続開始決定により,破産手続開始の申立てはできなくなる(民再39条1項前段)。
しかし,再生手続が目的を達しえずに廃止された場合(191条),債務者の財産を清算する必要が生じる。そこで,再生手続廃止決定がされれば,#確定前でも_破産手続開始申立てでき(249条1項),廃止決定確定後に開始される(2項)。

/ 再生手続が目的を達しえず廃止された場合(民再191条),当該債務者の財産を清算する必要が生じる。そこで,再生手続廃止決定確定後は破産手続開始の申立てなくとも,#裁判所が職権で破産手続開始決定をなしうる(民再250条1項)。
再生手続挫折後開始される(申立て・職権による)破産手続を,#牽連破産という。
[平成30年TKC全国統一模試〔倒産法第2問〕倒2-6参照。再生手続挫折の場合の手続の流れ(牽連破産)]
http://right-droit.hatenablog.com/entry/2018/04/30/165503

倒産法55/ 民再12/ 593/ 牽連破産の場合,#再生手続で共益債権とされていた債権は_破産手続上財団債権とされる(民再252条6項)。また,裁判所は,#再生債権届出債権者は移行後の破産手続で改めて破産債権届出を要しないと決定できる(民再253条1項)。手続の便宜,倒産状態にある会社の債権者は,自らの債権への関心が乏しという考慮。
[ハイローヤー2018年4月(334号)26頁参照。牽連破産の場合の効果]

 

2018年4月29日(2)
倒産法54/ 民再11/ 592/ 破産手続開始申立て時基準の規定あるが(破160条1項2号,71条1項4号等),#牽連破産で,破産手続開始申立てがないか,遅い場合あるため,#再生手続開始申立て等を破産手続開始申立てとみなす(民再252条1項)。破産手続開始より再生手続開始先行の場合,#再生手続開始前3か月間の給料請求権が財団債権(同条5項)。
[ハイローヤー2018年4月(334号)26頁参照。牽連破産において再生手続開始時を基準と読み替える(みなす、する)場合]

/ [メモ] 倒産法よくわからない。他手続への移行(牽連破産,民再248条以下等),手続開始前の保全処分(破42条1項,28条,民再30条,破24条,民再26条1項,破25条,民再27条,破171条,民再134条の2),双方未履行双務契約の処理(雇用契約),預託金会員制ゴルフクラブの員契約と破53条,等だけでも書けるようになりたい。
18:30 - 2018年4月29日
https://twitter.com/right_droit/status/990523729309351937

倒産法53/ 民再10/ 591/ #再生手続開始で破産手続は中止され(民再39条1項),#再生計画認可決定で_当該破産手続失効(同184条)。破産手続は最後の手段で,再生手続で解決可能なら,それを優先すべきという配慮。#牽連破産は逆に,再生手続進行中,それが立ちいかなくなったことからやむを得ず破産手続に移行するもの(民再248条以下)。
[ハイローヤー2018年4月(334号)26頁参照。制度の概略]

 

2018年4月26日(4)
刑法総論46/ 共犯18/ 590/ 共謀共謀正犯の成否は,他共同者と共同意思に基づき,#構成要件該当事実惹起に重要な事実的寄与(判断基準の一つにすぎない)を果たすことによる,構成要件該当事実全体の共同惹起を基準とすべき。#すなわち構成要件的結果を共同惹起した共同者の一員といえるかということ(実質的共同惹起,実質的正犯概念)。
[山口『刑法総論』3版341頁参照。共謀共同正犯成立の判断基準(実質的正犯概念)]

刑法総論45/ 共犯17/ 589/ 共同正犯の範囲(共同正犯と教唆・幇助の区別)は,#共同正犯は構成要件該当事実の共同惹起という理解から画されるべきであり,共同正犯としての責任を負うために実行行為分担を必要とする理由は必ずしもない。#実行行為分担以外の方法でも構成要件該当事実惹起に重要な寄与を行いうるから(共謀共同正犯)。
[山口『刑法総論』3版340頁参照。共謀共同正犯の肯否。実質的正犯概念]

刑法総論44/ 共犯16/ 588/ 共犯処罰根拠は,正犯行為を介して法益侵害(構成要件該当事実)を自ら惹起したことにある(因果共犯論=惹起説)。法益侵害の直接惹起が単独犯(正犯),正犯行為を介した間接惹起が共犯(教唆・幇助),正犯と共犯の差異は法益侵害態様の差。#共同正犯は法益侵害の共同惹起であり,一部行為の全部責任が導かれる。
[山口『刑法総論』3版310頁-311頁参照。因果共犯論(結局因果共犯論は,構成要件レベルにおける連帯(法益侵害の共同惹起)と捉えればよいか?⇔違法共犯論,責任共犯論)。
 ただ、混合惹起説(山口前掲314頁以下)では,構成要件該当性(TB)と違法性(Rw)を正犯が備えていなければ,共犯構成要件(共犯のTB)が認められない(同書315頁)という。(まだ,私の理解不十分)]

刑法総論43/ 共犯15/ 587/ 単独犯・共同正犯は正犯を前提としない非従属的遂行形態,#一次的責任類型(正犯)。正犯の存在が前提の従属的関与形態たる教唆・幇助は,#派生的従属的な二次的責任類型。
共同正犯も,自ら単独で構成要件を充たさずとも処罰対象となる点,教唆・幇助と共通。処罰拡張形態(刑法60条)。#あくまで共犯の一種。
[山口『刑法総論』3版307頁-308頁参照。共同正犯は一次的責任類型(正犯)だが,処罰拡張形態である点,教唆・幇助と共通する,共犯の一種。]

/ 司法試験 #刑法 出題予想アンケート

受験新報806号(2018年4月),Hi-LAWYER334号(同)参照。
以下から出題可能性の高いと思われるものをお選びください!
教唆・幇助(曲田統),中立的行為と幇助(最決H23・12・19),不作為の成立根拠(塩見淳),現住建造物等放火(予備H28,塩見),強盗殺人(昨年未出題の重要論点)
17% 共謀共同正犯と従犯、中立的行為と幇助、片面的幇助。
33% 不作為(作為義務の発生根拠、因果関係、殺人、幇助)
17% 現住建造物等放火罪(現住性、建造物の一体性、焼損)
33% 強盗および殺人(240条)、窃盗の機会(238条)
6票・最終結
https://twitter.com/right_droit/status/989531098513195009

/ [独り言]#共謀共同正犯,どう書こうか?
共謀共同正犯の肯否(否定説は,福田平先生ぐらいかな)と,成否。前者も少し触れて,後者の方が重要だろうけど,どういう風に書こうかなー?大塚裕史先生の本『ロースクール演習刑法』か,司法協会の『講義案』あたりが無難かなー?山口先生はどう書かれているのだろうか?
21:33 - 2018年4月26日
https://twitter.com/right_droit/status/989483971871305728
https://twitter.com/right_droit/status/989482493215559680

/ [単なるつぶやき] #結果的加重犯の共同正犯 は認められるか(山口総論3版388頁,受験新報2017年9月112頁以下)? 結果的加重犯の教唆・幇助と,どう書き分けようか?過失犯の共同正犯の問題もわからない。結果的加重犯において,加重結果について過失を不要とする判例理論についての知識にどうやって触れるか?
17:11 - 2018年4月26日
https://twitter.com/right_droit/status/989416741473144832

 

 2018年4月24日(1)
刑法総論42/ 共犯14/ 586/ Aが殺人の意思,Bが傷害の意思で,被害者に共同して傷害を加え,被害者が死亡した場合,#客観的に共同惹起した人の生命侵害という構成要件該当事実の範囲内で_各共同者の認識内容に対応した共同正犯が成立し,Aに殺人罪の共同正犯,Bに(死亡につき過失ある場合)傷害致死罪の共同正犯が成立する(行為共同説)。
[山口『刑法総論』3版364頁(最決昭54・4・13刑集33-3-179)参照。行為共同説による共同正犯者間の錯誤の取扱い]

2018年4月22日(4)
刑法総論41/ 責任14/ 585/ 認識のある過失は,#結果発生が可能だと考えたにもかかわらず_それが発生しないと信頼した場合。未必の故意は,#結果が発生しないと信頼せず_発生すると思った場合。前者は,結果不認識と不注意が本質。結果発生を認識しながら,認容しなかった場合ではない。結果発生可能だと考えたが,結局,否定した場合。
[平野『刑法総論Ⅰ』(1972年)188頁-189頁参照。認識のある過失と未必の故意との違い(認識説,動機説)]

刑法総論40/ 責任13/ 584/ 確定的故意には,①#結果を意図した場合,②#結果発生が確実だと思った場合あり。①では,その発生可能性が小さくても(因果関係ない場合,別),故意あり。遠くにいる人を銃で狙い射ったときは,当たる可能性小さくても殺人の故意あり。②では,いかにその発生を嫌い回避したいと思っていたとしても,故意あり。
[平野『刑法総論Ⅰ』(1972年)187頁参照。二種類の確定的故意]

刑法総論39/ 責任12/ 583/ 故意と過失の差は質的。具体的当該事件では,結果発生・不発生のどちらか。行為者は,一応は,結果発生の蓋然性・可能性があると考えたとしても,#結局_結果が発生するだろうという判断か_結果は発生しないだろうという判断かどちらかに到達。このような意味での犯罪事実の認識の有無が,故意・過失の限界。
[平野『刑法総論Ⅰ』(1972年)187頁参照。故意と過失の分水嶺(認識説による)]

刑法総論38/ 責任11/ 582/ 行為は意思にもとづく身体の動静。意思的な要素も含む。故意は,その意思の内容は何かという問題。自己の行為の結果として人が死ぬであろうことを認識・予見したときは,#行為を思いとどまる動機にしなければならない。にもかかわらず,#思いとどまる動機とせず,行為したことを非難するのである(動機説)。
[平野『刑法総論Ⅰ』(1972年)185頁参照。故意の認識内容(認識説=動機説)]
http://right-droit.hatenablog.com/entry/2018/04/23/175342


2018年4月21日(1)
刑法総論37/ 構成要件5/ 581/ 行為者が被害者に傷害を加えたところ,医師の指示に従わず安静に努めないという被害者自身の不適切な行為介入の結果,容体がさらに悪化し死亡した場合,#当初の傷害行為に認められる危険が,医師の治療により妨げられることなく,#死の結果へと直接現実化したものであり,傷害と被害者死亡間に因果関係あり。
[山口『刑法総論』3版64頁(最決平16・2・17刑集58-2-169)参照。被害者自身の不適切な行為が介入した場合の因果関係の肯否]

 

2018年4月分ツイート(11日-20日): 11 (会社法4,民訴法5; 刑法1; 他1) 計42

2018年4月20日(1)
刑法各論25/ 生命・身体に対する罪1/ 580/ 殺人罪の実行行為は,生命侵害の現実的危険性ある行為。
本件で,ナイフという殺傷能力の高い凶器が使用され,創傷部位は,#腹部という人体の枢要部。深い傷を負わせられる,#刺すという方法を用い,それを3回も行っている。さらに,Vは大量出血し意識を失っていることから,#刺突行為の激しさがわかる(程度)。
[大塚裕史・受験新報799号(2017年9月)109頁参照。→したがって,乙のV刺突行為は,生命侵害の危険性の高い行為であり,(傷害罪ではなく)殺人罪の実行行為にあたる。殺人罪の実行行為(正犯性の認められる行為者の行為)の法的判断枠組み,および,事実の分析・評価方法]


2018年4月19日(2)
民訴法100/ 579/ 独立当事者参加形態には,#詐害防止参加(民訴法47条1項前段)と,#権利主張参加(同項後段)とがあり,いずれか要件をみたせば,別訴で自らの権利実現を図る方法のほか,他人間の訴訟に独立当事者として参加できる。前者は,#馴れ合いにより事実上不利益が生ずる場合にできる。後者は,#所有権確認の例が典型例。
[安西『Law Practice 民事訴訟法』(2011年)317頁〔基本問題43〕参照。独立当事者参加形態の種類]

民訴法99/ 578/ 参加的効力は既判力と異なる補助参加に特殊な効力。具体的差異:①民訴法46条所定の除外例のような具体的事情により効力が左右される,②#判決効の存在は職権調査事項でなく当事者の援用要,③#判決主文の判断のみならず理由中の判断にも及ぶ,④被参加人敗訴の場合のみ。被参加人・参加人間しか及ばない。
[安西『Law Practice 民事訴訟法』(2011年)308頁〔基本問題42〕参照。参加的効力の範囲,既判力との違い]


2018年4月18日(2)
民訴法98/ 577/ 補助参加訴訟の判決は,訴訟当事者に効力が及ぶのはもちろん(既判力,民訴法115条1項1号),一定要件の下,補助参加人にも及ぶ(46条)。#補助参加人として十分主張・立証を尽くした・尽くすことが期待できた事項につき_補助参加人は自己を当事者とする第2訴訟で補助参加訴訟の判断内容を争えないという趣旨。
[安西『Law Practice 民事訴訟法』(2011年)307頁〔基本問題42〕参照。補助参加訴訟の判決の効力]

民訴法97/ 576/ 補助参加は,#他人間に係属中の訴訟の結果につき利害関係を有する第三者(補助参加人)が,当事者の一方(被参加人,主たる当事者)を勝訴させることにより自己の利益を守るため訴訟参加する形態。#自らの利益を守るため自らの名と費用で訴訟追行_相手方との間に自己の請求を持ち込み審判を求めるのではない。
[安西『Law Practice 民事訴訟法』(2011年)301頁〔基本問題41〕参照。概念ないし制度の説明]


2018年4月15日(1)
民訴訟96/ 575/ #既判力は判決主文に包含されるものについてのみ生ずるのが原則(民訴法114条1項)。本案判決では,#請求の内容である訴訟物たる権利・法律関係の存否についての結論的判断部分,訴訟判決では,訴えが不適法であること。もっとも,主文の文言は簡潔なので,#主文だけでなく判決の事実・理由中の記載を斟酌要。
[『民事訴訟法講義案』再訂補訂版280頁参照。既判力の客観的範囲]

 

2018年4月12日(4)
会社法104/ 企業の買収・結合・再編31/ 574/ #公開会社の株主総会に他の株主選別権限は当然にはなく,特定株主による会社支配権取得阻止権限は認められない。決議が行われたとしても,差別的行使条件付新株予約権無償割当ては,直ちには正当化されない。不公正発行非該当につき,#買収防衛策を発動する会社側にかなり重い立証責任が課されると解する。
[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版319頁参照。公開会社における差別的行使条件付新株予約権無償割当ての合理性・適法性の立証責任]

会社法103/ 企業の買収・結合・再編30/ 573/ #特定株主の経営支配権取得に伴い会社企業価値毀損_会社利益ひいては株主共同利益が害される場合,防止のための当該株主の差別的取扱いも,#衡平の理念に反し相当性を欠かない限り,株主平等原則に反しない。判断の前提事実の不存在・虚偽等,正当性を失わせるような重大瑕疵なき限り,株主自身の判断尊重。
[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版318頁(最判平19・8・7民集61-5-2215)参照。特定の株主の差別的取扱いに合理性が認められるかの判断の仕方]

会社法102/ 企業の買収・結合・再編29/ 572/ 株主は株主としての資格で新株予約権無償割当てを受けるが,#新株予約権の内容同一性が前提(会社法278条2項)と解されるので,株主平等原則(会社法109条)の趣旨が及ぶ。差別的行使条件付新株予約権無償割当ては,同原則の直接違反ではないが,#その背後にある衡平の理念に鑑み実質的に合理性の有無,判断要。
[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版317頁(最判平19・8・7民集61-5-2215)参照。新株予約権無償割当てと平等原則]

会社法101/ 企業の買収・結合・再編28/ 571/ 会社法247条は,「#第238条第1項の募集に係る新株予約権の発行」の差止請求であるため,247条を277条以下の新株予約権無償割当てに直接適用できない。しかし,#新株予約権無償割当ての内容次第で既存株主の不利益生がじうるため,247条類推適用により救済策として新株予約権無償割当差止請求を認めるべき。
[中村ほか編『ロースクール演習 会社法』2版316頁(東京高決平17・6・15判時1900-156,東京地決平19・6・28金判1270-12)参照。会社法247条の類推適用]

 

2018年4月11日(1)
他2/ 570/ 法律論文答案は,①#法的判断枠組み(大前提),②#事実の分析評価(小前提)部分あり。問題提起(起),法的三段論法の大前提(承),小前提(転),結論(結),の(#起)(#転)にも,①法的判断枠組みの知識を使える(②事実の分析評価=(転)部分といっても,法的に分析評価可)ので,①②は論証の内容的分類でなく機能的分類。
[法務省の採点実感に,①法的判断枠組みと②事実の分析評価を分けるようなことを書いていたと思います(記載箇所見つけて,あとで書き入れます)。そこで,法律論文試験で書く論証には,①と②の区別があるのだろうと思いましたし,判例・裁判例,基本書等の記述も①②に分けられるのだろうと思っていました。
 しかし,問題提起(起),法的三段論法の大前提(承),小前提(転),結論(結)で書く場合に,問題提起(#起),事実の分析評価(#転)にも,①法的判断枠組みの知識を使えって,②事実の分析評価(=小前提(転)部分)を法的に分析評価しているのだろうと考えます。この場合に,一般的常識も併せて,事実を分析評価しているのだろう,と思います。
 ですので,法的な論証(判例・裁判例,基本書等の記述)自体に①②の内容的区別があるというべきでなく,法律論文答案や,判例・裁判例,基本書等の記述において,機能的に,①②を区別(分類)できると言うべき(①②の機能的・役割的な区別を意識して書くべき),という考えに思い至りました。]

[2018/8/7 内容的にわかりにくいので,ツイッター掲載停止]

 

新プロフィール/ 主に法律論文試験用備忘録。
今まで,①法的判断枠組みと②事実の分析評価例に分けようとしていましたが,問題提起(起),法的三段論法の大前提(承),小前提(転),結論(結),の(起)(転)にも,①法的判断枠組みの知識を使えるなぁと気づき(②事実の分析評価=(転)部分といっても,法的な分析評価も可),とりあえず分類やめます。
旧プロフィール/ ①法的判断枠組み(定義,規範,考慮事由等)②事実の分析・評価例等の確認▼Ascertaining the legal theses and examples of fact-findings▼過去ツイート等,下記リンク参照▼See the link below for the previous tweets, etc.

 

2018年4月分ツイート(-10日): 31 (憲法8; 民法17,会社法6)

2018年4月10日(8)
人権60-67/ 562-569/ 改正前国籍法3条1項は,同法の基本的な原則である血統主義を基調としつつ,#日本国民との法律上の親子関係の存在に加え我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を設け,これらを満たす場合に限り出生後における日本国籍取得を認めることとした。#このような立法目的自体には_合理的な根拠がある。
[最大判平20・6・4民集62-6-1367『判例ラクティス憲法』増補版〔48〕,T29(3ア)参照。立法目的の認定]

/ 日本国民たる父_母の嫡出子,日本国民たる父から胎児認知された非嫡出子,日本国民たる母の非嫡出子も,生来的に日本国籍を取得するのに,日本国民を血統上の親として出生し,法律上の親子関係ある子にもかかわらず,#日本国民たる父から出生後に認知された子のうち準正により嫡出子たる身分を取得しないもの

/ に限り,生来的に日本国籍を取得しないのみならず,改正前国籍法3条1項所定の届出により日本国籍を取得することもできないことになる。このような区別の結果,#日本国民たる父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子のみが日本国籍取得について著しい差別的取扱いを受けているものといわざるを得ない。
[事実の分析評価]

/ #日本国民たる父から胎児認知された子と出生後に認知された子との間において日本国民たる父との家族生活を通じた我が国社会との結び付きの程度に一般的な差異が存するとは考え難く,日本国籍取得に関して上記の区別を設けることの合理性を我が国社会との結び付きの程度という観点から説明するのは困難。

/ また,#父母両系血統主義を採用する国籍法の下で,日本国民たる母の非嫡出子が出生により日本国籍を取得するにもかかわらず,日本国民たる父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子が届出による日本国籍取得すら認められないのは,#両性の平等という観点からみてその基本的立場に沿わないところがある。
[同上]

/ 日本国民との間に法律上の親子関係を生じた子であるにかかわらず,上記のような非嫡出子にのみ,父母の婚姻という,#子にはどうすることもできない父母の身分行為なき限り,生来的にも届出でも日本国籍取得を認めない点は,立法府裁量権を考慮しても,#立法目的との合理的関連性の範囲を著しく超える手段。
[同上。T29(3イ)参照]

/ 本件区別は,遅くともXが法務大臣あてに国籍取得届を提出した当時に,#立法府に与えられた裁量権を考慮してもなおその立法目的との間に合理的関連性を欠くものとなっていたと解され,上記時点において,合理的理由のない差別であり,#国籍法3条3項が本件区別を生じさせていることは_憲法14条1項に違反する。

/ 憲法14条1項の平等取扱い要請と国籍法の父母両系血統主義を踏まえれば,父母婚姻により嫡出子身分取得という部分を除き3条1項所定要件を満たす場合,届出で日本国籍取得を認める,#合憲的で合理的な解釈可能で_本件区別による不合理な差別的取扱いを受けている者に直接的な救済のみちを開くためにも相当。
[結論]

 

2018年4月9日(5)
http://right-droit.hatenablog.com/entry/2018/04/09/171027

会社法100/ 企業の買収・結合・再編27/ 561/ 経営支配権争いある場合,現経営陣と敵対的買収者のいずれに経営を委ねるべきか,#株主が判断。対象会社の取締役会は,株主に適切な情報提供,判断を可能にさせる目的で,#買収者に対し事業計画の提案と相当な検討期間の設定を要求でき,合理的要求に応じなければ,#株主全体の利益保護のため相当手段採れる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版443頁(東京地決平17・7・29判時1909-87,日本技術開発事件)参照。情報提供と検討期間確保目的のための,取締役会による防衛策]

会社法99/ 企業の買収・結合・再編26/ 560/ しかしこれらのうち,③は,#対象会社の資産を担保にして買収資金の融資を受ける方法(レバレッジド・バイアウト(LBO)。MBOなどに通常利用される方法)を,また,④は,#遊休資産を処分し株主に分配するという経済合理性のある行為を含みうる点,問題。効率的買収を阻害しないよう,この4類型を合理的に解釈要。
[『LEGAL QUEST会社法』3版443頁参照。裁判例の呈示したいわゆる4類型の問題点]

会社法96,97,98/ 企業の買収・結合・再編23,24,25/ 557,558,559/ 現に経営支配権争いが生じている場面で,#経営支配権の維持・確保を主要目的とする新株予約券発行は,原則,不公正な発行として差止請求が認められるべき。誰を経営者としてどのような事業構成の方針で会社を経営させるかは,#株主総会における取締役選任を通じ株主が資本多数決により決すべき問題だから。

/ もっとも,#株主全体の利益保護の観点から当該新株予約権発行を正当化する特段の事情,具体的には,敵対的買収者が真摯に合理的経営を目指すものでなく,#敵対的買収者による支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情あることを会社が疎明_立証した場合(例外),当該新株予約券発行を差止めできない。

/ 支配権維持・確保目的の新株等発行が適法となる特段の事情。買収者が,①株価をつり上げ株式を高値で会社関係者に買い取らせる目的(#グリーンメーラー),②#知的財産権やノウハウ等を横取る目的,③対象会社資産を買収者の債務の担保等に流用する目的,④高額資産等を売却処分させ一時的高配当させる目的。

[『LEGAL QUEST会社法』3版441頁-442頁(東京高決平17・3・23判時1899-56,ニッポン放送事件)参照。取締役会の判断による敵対的防衛に対する防衛策(新株予約権発行)への差止請求が認められるか(主要目的ルール,および,例外),例外の4類型]


2018年4月6日(1)
会社法95/ 設立6 / 556/ 見せ金は,#発起人が払込取扱機以外から借入し払い込み_会社を設立_会社成立後引き出し借入金返還に充てる行為。個々の行為も,全体としては,仮装払込みのカラクリの一環なので,無効。適法行為との区別は,①借入金返済までの期間長短,②会社資金としての運用事実,③返済と会社資金との関係など総合判断。
[工藤『合格論証集 商法 民事訴訟法』19頁-20頁参照。見せ金とは? その判断の仕方]

 

2018年4月5日(7)

法定債権19,20/ 554,555/ 事実的因果関係は,具体的加害者(被告)の行為(conduct=C)が具体的被害者(原告)の損害(damage=D)を現実惹起した,という事実平面における関係(事実により立証可能なもの)。Cは外界に変化を生じさせたものでなければならず,#規範的判断を前提とする事実_含まない。Dも損害=#事実説における損害たること要。
[平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版(1992年)82頁-83頁参照。事実的因果関係の意義]

/ CとD間に,もしCなかったならば,D生じなかったであろう(#あれなければこれなし公式)という関係が存在すると認められるならば,原則,事実的因果関係存在。もし過失なかったならば損害生じなかったであろうと問うことは,過失が規範的概念である以上,事実的因果関係の問題でなく,過失(行為義務)の程度問題。
[平井・同書83頁参照。事実的因果関係の存在が認められる場合(あれなけばこれなし公式,法的判断枠組み)]

法定債権18/ 553/ A過失の交通事故後,被害者治療した医師Bの過失で被害拡大の場合,Aの加害行為と全損害とに事実的因果関係あるが,Bの加害行為と一部損害とにはない。ただ,その部分を確定困難(#損害一体型,民法719条項後段類推)。医師の行為と因果関係なき損害,立証されれば,その部分,責任なし(保護範囲外,#寄与度減責)。
[内田『民法Ⅱ』3版540,535頁参照。事故+医療過誤型の共同不法行為(損害一体型,民法の719条1項後段類推適用)における賠償額の減額のしくみ(法的判断枠組み)]

法定債権17/ 552/ 損害一体型では,因果関係が全損害に及ぶとの民法719条1項後段の推定は及びつつ(事実的因果関係あり),#保護範囲ないし,その範囲内の損害に対する寄与度が損害全額にまでは及ばない場合あり。当該加害行為が損害発生に寄与した割合の限度で賠償義務を負うとの原理(#寄与度減責,帰責性の原理)が働く場面。
[・内田『民法Ⅱ』3版538,447頁参照。共同不法行為(損害一体型,民法719条1項後段類推適用)において,寄与の度合いが明らかに著しく小さい加害者がいる場合の理論構成(法的判断枠組み)]

法定債権16/ 551/ 損害の金銭的評価(「金〇〇円」)は,#事実確定ではなく評価作用。事実的因果関係と異なる性質。
保護範囲のような規範的判断(法律論)とも別。具体的金額決定は,#規範適用でなく_個別的・具体的事案での裁判官の創造的・裁量的判断。①諸般の事情参酌し算定,②算定根拠表示不要,③立証責任観念入らない。
[・平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版(1992年)129頁-130頁参照。損害の金銭的評価の性質]

法定債権15/ 550/ 保護範囲は,故意不法行為では,原則,#事実的因果関係ある損害はすべて賠償さるべきだが,異常な事態介入の結果生じた損害は除く。過失不法行為では,加害者がある損害を回避する義務,すなわち損害回避義務(過失判断の基準となる行為義務)の及ぶ射程距離(#義務射程)内あると判断されるかにより画定される。
[・内田『民法Ⅱ』3版431頁,平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版(1992年)110頁,参照。不法行為による損害賠償の範囲についての法的判断枠組み]

法定債権14/ 549/ #被害者の心因的素因により損害が発生・拡大した場合,民法722条2項類推適用可能か。
過失相殺の趣旨は,#損害発生に寄与した被害者側の事情を考慮し損害の公平分担を図る点にあるから,心因的素因という被害者側の事情による損害拡大についても斟酌し公平を図るべき。同条項類推適用による賠償額減額可。
[『司法試験合格のための 論証集&答案構成ノート』法学書院(2011年)85頁-86頁参照。民法722条2項(過失相殺規定)の趣旨]


2018年4月4日(6)
法定債権13/ 548/ 損害賠償の範囲は,①#賠償請求される損害が加害行為と事実的因果関係に立つか判断し(事実認定),肯定されるなら,②#事実的因果関係に立つ損害のうちどこまでが保護範囲に含まれるか判断し(法律解釈とその適用),含まれるべきと規範的判断が下されれば,③#保護範囲内の損害につき金銭的評価(裁量的判断)。
[平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版110頁(内田『民法Ⅱ』3版390頁)参照。法的判断枠組み(平井理論)]

法定債権12/ 547/ 権利利益侵害によって被害者に生じた損害の加害者への転嫁(帰責)のために,行為と権利利益侵害の間,権利利益侵害(侵害損害)とつづく損害(後続損害)の間に,因果関係要。民法709条「故意又は過失によって」(#責任設定的因果関係),「これによって生じた」(責任範囲の因果関係,#責任充足的因果関係)に該当。
[四宮『不法行為(事務管理・不当利得・不法行為 中・下巻)』403頁-404頁参照。不法行為の因果関係(学説)]

法定債権10,11/ 545,546/ 取引的不法行為(手形の偽造行為等)の場合,「事業の執行について」(民法715条1項)とは,#行為の外形からみて被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合をいう(外形標準説)。もっとも, 相手方の信頼を保護するものなので,相手方が職務範囲外であることに悪意・重過失ある場合は適用されない。
[『趣旨規範ハンドブック』6版157(大連判大15・10・13,最判昭42・11・2)参照。法的判断枠組み(大前提)]

/事実的不法行為中,危険物型(自動車事故等)の場合,判例は外形標準説によるが,外形に対する信頼は問題とならないから妥当でない。この場合は,#報償責任の原理から_使用者の支配領域内の危険か否かを基準とすべき。
暴行型の場合は,#報償責任の原理から_事業の執行行為との密接関連性ある場合に限るべき。
[法的判断枠組み]

法定債権9/ 544/ 「ある事業のために他人を使用する」(民法715条1項)とは,#使用者・被用者間に実質的指揮監督関係あればよく,雇用_委任等の契約当事者に限られない。#営利_有償_継続性不要。
ピラミッド型階層的組織の頂点に立つ暴力団組長は,下部組織構成員を直接間接指揮監督し資金獲得させているので,上記関係あり。
[『趣旨規範ハンドブック』6版156頁(最判平16・11・12)参照。条文解釈]

法定債権8/ 543/ 責任無能力の未成年者の親権者は,#直接的監視下にない子の行動につき_人身に危険が及ばないよう注意・行動するよう日頃から指導監督義務あり。通常は人身に危険が及ぶびえない行為でたまたま人身損害が発生した場合,#当該行為を具体的に予見可能など特別な事情なき限り,監督義務不履行とすべきでない。
[『趣旨規範ハンドブック』6版155頁(最判平27・4・9)参照。どういう場合に、未成年者の監督義務を尽くしていなかったとすべきか]

 

2018年4月3日(2)
相続8/ 542/ 特定遺贈は,原則,受遺者の相続分を変更せず遺贈を確実にし,他の共同相続人の相続分にも変更を来さない(中立的遺贈)。共同相続人中に遺贈を受けた特別受益者があるとき,法定相続分(900条)や指定相続分(902条)のルールで算定した相続分から,その特定遺贈価額を控除した残額が,その者の,#具体的相続分額。
[内田『民法Ⅳ』補訂版381頁-383頁,T29(34(3)時系列④),参照。条文制度]

債権総論15/ 541/ 借地上建物の賃借人と土地賃貸人間に直接の契約関係はないが,#土地賃借権が消滅するときは_建物賃借人は土地賃貸人に対し_賃借建物から退去し土地を明け渡すべき義務を負う法律関係にあり,建物賃借人は,敷地の地代を弁済し,敷地の賃借権の消滅を防止する法律上の利益(利害関係,民法474条2項参照)あり。
[最判昭63・7・1判時1287-63(『判例ラクティス民法Ⅱ』〔115〕),T29(21イ),参照。借地上建物の賃借人は,第三者弁済における「利害関係」を有するか]

2018年4月2日(2)
法定債権7/ 540/ #いやしくも人の生命・健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は,その業務の性質に照らし,#危険防止のため実験上必要とされる最善の注意義務を要求される。その基準は,#診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準。当該医療機関の性格,所在地域の医療環境の特性等,諸般の事情を考慮し決する。
[『事例から民法を考える』〔18〕304頁(最判昭36・2・16民集15-2-244等,最判昭57・3・30判時1039-66,最判平7・6・9民集49-6-1499等)参照。医師の負う注意義務についての法的判断枠組み(大前提)]

担保物権4/ 539/ 抵当権設定登記後に,抵当不動産所有者の占有権原設定に競売手続妨害目的があり,交換価値実現が妨げられ優先弁済請求権行使が困難なとき,抵当権者は,占有者に,#抵当権に基づく妨害排除請求可。所有者に不動産の適切維持管理が期待できないなら,抵当権者は,占有者に,#直接自己への不動産明渡しを請求可。
[最判平17・3・10民集59-2-356(『判例ラクティス民法Ⅰ』〔340〕),T28(7エ),参照。抵当権に基づく妨害排除請求権]

 

 

right-droit.hatenablog.com

人権/ 非嫡出子の国籍取得差別と法の下の平等

法の下の平等http://twpf.jp/right_droit, https://twitter.com/right_droit_2 

⚫非嫡出子の国籍取得差別と法の下の平等

 

人権60-67/ 562-569/ 改正前国籍法3条1項は,同法の基本的な原則である血統主義を基調としつつ,#日本国民との法律上の親子関係の存在に加え我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を設け,これらを満たす場合に限り出生後における日本国籍取得を認めることとした。#このような立法目的自体には_合理的な根拠がある。

[最大判平20・6・4民集62-6-1367『判例プラクティス憲法』増補版〔48〕,T29(3ア)参照。立法目的の認定]

 

 

/ 日本国民たる父_母の嫡出子,日本国民たる父から胎児認知された非嫡出子,日本国民たる母の非嫡出子も,生来的に日本国籍を取得するのに,日本国民を血統上の親として出生し,法律上の親子関係ある子にもかかわらず,#日本国民たる父から出生後に認知された子のうち準正により嫡出子たる身分を取得しないもの

 

/ に限り,生来的に日本国籍を取得しないのみならず,改正前国籍法3条1項所定の届出により日本国籍を取得することもできないことになる。このような区別の結果,#日本国民たる父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子のみが日本国籍取得について著しい差別的取扱いを受けているものといわざるを得ない。

[事実の分析評価]

 

 

/ #日本国民たる父から胎児認知された子と出生後に認知された子との間において日本国民たる父との家族生活を通じた我が国社会との結び付きの程度に一般的な差異が存するとは考え難く,日本国籍取得に関して上記の区別を設けることの合理性を我が国社会との結び付きの程度という観点から説明するのは困難。

 

/ また,#父母両系血統主義を採用する国籍法の下で,日本国民たる母の非嫡出子が出生により日本国籍を取得するにもかかわらず,日本国民たる父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子が届出による日本国籍取得すら認められないのは,#両性の平等という観点からみてその基本的立場に沿わないところがある。

[同上]

 

/ 日本国民との間に法律上の親子関係を生じた子であるにかかわらず,上記のような非嫡出子にのみ,父母の婚姻という,#子にはどうすることもできない父母の身分行為なき限り,生来的にも届出でも日本国籍取得を認めない点は,立法府裁量権を考慮しても,#立法目的との合理的関連性の範囲を著しく超える手段

[同上。T29(3イ)参照]

 

 

/ 本件区別は,遅くともXが法務大臣あてに国籍取得届を提出した当時に,#立法府に与えられた裁量権を考慮してもなおその立法目的との間に合理的関連性を欠くものとなっていたと解され,上記時点において,合理的理由のない差別であり,#国籍法33項が本件区別を生じさせていることは_憲法141項に違反する

 

/ 憲法14条1項の平等取扱い要請と国籍法の父母両系血統主義を踏まえれば,父母婚姻により嫡出子身分取得という部分を除き3条1項所定要件を満たす場合,届出で日本国籍取得を認める,#合憲的で合理的な解釈可能で_本件区別による不合理な差別的取扱いを受けている者に直接的な救済のみちを開くためにも相当

[結論]

 

会社法/ 敵対的買収と防衛策

〔企業の買収・結合・再編〕

http://twpf.jp/right_droit

敵対的買収と防衛策

 

⚫取締役会による防衛策

[・現に経営支配権争いが生じている場面において、経営支配権の維持・確保を目的(主要目的)とした新株予約券の発行がされた場合には、原則として、不公正な発行として差止請求が認められるべきである(主要目的ルール)。誰を経営者としてどのような事業構成の方針で会社を経営させるかは、株主総会における取締役選任を通じて株主が資本多数決によって決すべき問題というべきだからである。

 もっとも、株主全体の利益保護の観点から当該新株予約権発行を正当化する特段の事情があること、具体的には、敵対的買収者が真摯に合理的な経営を目指すものではなく、敵対的買収者による支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情があることを会社が疎明、立証した場合には(主要目的ルールの例外)、当該新株予約券発行を差止めることはできない。]

 

 

⚫支配権維持・確保目的の新株等の発行が例外的に適法となる特段の事情の具体例(4類型)

[・支配権維持・確保目的の新株等の発行が例外的に適法となる特段の事情として、以下の4類型をあげることができる。

 買収者が、①ただ株価をつり上げて株式を高値で会社関係者に買い取らせる目的(グリーンメーラー)、②対象会社の知的財産権やノウハウ等を買収者に移譲する目的、③対象会社の資産を買収者の債務の担保や弁済原資として流用する目的、④会社経営を一時的に支配して事業に当面関係していない高額資産等を売却処分させ、売却資金により一時的高配当させる目的、で買収する場合である。

 しかしこれらのうち、③は、対象会社の資産を担保にして買収資金の融資を受ける方法(レバレッジド・バイアウト(LBO)、MBOなどに通常利用される方法)を、また、④は、遊休資産を処分し株主に分配するという経済合理性のある行為を含みうる点で、問題がある。効率的な買収を阻害する結果とならないよう、この4類型は合理的に解釈する必要がある。]

 

 

 

会社法96,97,98/ 企業の買収・結合・再編23,24,25/ 557,558,559/ 現に経営支配権争いが生じている場面で,#経営支配権の維持・確保を主要目的とする新株予約券発行は,原則,不公正な発行として差止請求が認められるべき。誰を経営者としてどのような事業構成の方針で会社を経営させるかは,#株主総会における取締役選任を通じ株主が資本多数決により決すべき問題だから。

 

/ もっとも,#株主全体の利益保護の観点から当該新株予約権発行を正当化する特段の事情,具体的には,敵対的買収者が真摯に合理的経営を目指すものでなく,#敵対的買収者による支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情あることを会社が疎明_立証した場合(例外),当該新株予約券発行を差止めできない。

 

/ 支配権維持・確保目的の新株等発行が適法となる特段の事情。買収者が,①株価をつり上げ株式を高値で会社関係者に買い取らせる目的(#グリーンメーラー),②#知的財産権やノウハウ等を横取る目的,③対象会社資産を買収者の債務の担保等に流用する目的,④高額資産等を売却処分させ一時的高配当させる目的。

 

[『LEGAL QUEST会社法』3版441頁-442頁(東京高決平17・3・23判時1899-56,ニッポン放送事件)参照。取締役会の判断による敵対的防衛に対する防衛策(新株予約権発行)への差止請求が認められるか(主要目的ルール,および,例外),例外の4類型]

 

会社法99/ 企業の買収・結合・再編26/ 560/ しかしこれらのうち,③は,#対象会社の資産を担保にして買収資金の融資を受ける方法(レバレッジド・バイアウト(LBO)。MBOなどに通常利用される方法)を,また,④は,#遊休資産を処分し株主に分配するという経済合理性のある行為を含みうる点,問題。効率的買収を阻害しないよう,この4類型を合理的に解釈要。

[『LEGAL QUEST会社法』3版443頁参照。裁判例の呈示したいわゆる4類型の問題点]

 

 

⚫より限定的な目的で取締役会の判断で防衛策を行使すること

[・企業の経営支配権の争いがある場合、現経営陣と敵対的買収者のいずれに経営を委ねるべきかの判断は、株主によってされるべきである。

 対象会社の取締役会としては、株主に適切な情報提供を行い、その適切な判断を可能とする目的で、敵対的買収者に対して事業計画の提案と相当な検討期間の設定を任意で要求することができるのみならず、合理的な要求に応じない買収者に対しては、株主全体の利益保護の観点から相当な手段を採ることが許容される場合が存する。]

 

会社法100/ 企業の買収・結合・再編27/ 561/ 経営支配権争いある場合,現経営陣と敵対的買収者のいずれに経営を委ねるべきか,#株主が判断。対象会社の取締役会は,株主に適切な情報提供,判断を可能にさせる目的で,#買収者に対し事業計画の提案と相当な検討期間の設定を要求でき,合理的要求に応じなければ,#株主全体の利益保護のため相当手段採れる。

[『LEGAL QUEST会社法』3版443頁(東京地決平17・7・29判時1909-87,日本技術開発事件)参照。情報提供と検討期間確保目的のための,取締役会による防衛策]

 

不法行為/ 損害賠償の範囲

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●損害賠償の範囲

[・損害賠償の範囲は、①まず賠償を求められている損害が加害行為と事実的因果関係に立つかどうかが判断される(事実認定)。それが肯定されるならば、②事実的因果関係に立つ損害のうちどこまでのものが保護範囲に含まれるかが判断され(法律解釈とその適用)、含まれるべきだという規範的判断が下されるならば、③保護範囲内の損害について金銭的評価が行われる(裁量的判断)。]

 

法定債権13/ 548/ 損害賠償の範囲は,①#賠償請求される損害が加害行為と事実的因果関係に立つか判断し(事実認定),肯定されるなら,②#事実的因果関係に立つ損害のうちどこまでが保護範囲に含まれるか判断し(法律解釈とその適用),含まれるべきと規範的判断が下されれば,③#保護範囲内の損害につき金銭的評価(裁量的判断)。

[平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版110頁(内田『民法Ⅱ』3版390頁)参照。法的判断枠組み(平井理論)]

 

●保護範囲

[・保護範囲は、生じた損害に対する責任を加害者に帰せしめるのが妥当かどうかどの規範的判断であるから、不法行為の要件のうちの故意・過失と密接にかかわることになる。

 まず、故意不法行為においては、原則として事実的因果関係のある損害はすべて賠償されるべきだが、異常な事態の介入の結果生じた損害についてはこの限りでない。

 これに対して過失不法行為においては、保護範囲は、ある損害に対して加害者がそれを回避する義務を負っていると判断されるかどうか、すなわち、ある損害が損害回避義務(過失判断の基準となる行為義務)の及ぶ射程距離内あると判断されるかどうかによって画定される(行為義務の射程、義務射程)。]

 

法定債権15/ 550/ 保護範囲は,故意不法行為では,原則,#事実的因果関係ある損害はすべて賠償さるべきだが,異常な事態介入の結果生じた損害は除く。過失不法行為では,加害者がある損害を回避する義務,すなわち損害回避義務(過失判断の基準となる行為義務)の及ぶ射程距離(#義務射程)内あると判断されるかにより画定される。

[・内田『民法Ⅱ』3版431頁,平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版(1992年)110頁,参照。不法行為による損害賠償の範囲についての法的判断枠組み]

 

 ●損害の金銭的評価

[・民法が金銭賠償の原則に立脚する以上(722条1項・417条)、保護範囲内の損害は「金〇〇円」と表示されて賠償請求されなければならず、判決主文は「金〇〇円を支払え」と表示されなければならない(損害の金銭的評価)。

 金額への表示は、事実の確定ではないという意味において、何らかの評価作用の産物である。この点で、金銭的評価は事実的因果関係とは異なる性質を有する。

 しかし、評価作用であるとしても、保護範囲の確定における法律論の定立・適用という規範的判断とも異なる。具体的金額を決定するのは、規範の適用ではなく、あくまで個別的・具体的事案における裁判官の創造的・裁量的判断である。すなわち、その場合に、①諸般の事情を参酌して算定でき(事実審裁判官の専権)、②算定の根拠を示すことを要せず、かつ③事実認定ではなく評価である以上、立証責任の観念を容れる余地がない。]

 

法定債権16/ 551/ 損害の金銭的評価(「金〇〇円」)は,#事実確定ではなく評価作用。事実的因果関係と異なる性質。

保護範囲のような規範的判断(法律論)とも別。具体的金額決定は,#規範適用でなく_個別的・具体的事案での裁判官の創造的・裁量的判断。①諸般の事情参酌し算定,②算定根拠表示不要,③立証責任観念入らない。

[・平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版(1992年)129頁-130頁参照。損害の金銭的評価の性質]

 

 ●寄与度減責

[・因果関係が全損害に及ぶとの民法719条1項後段の推定は及びつつ(事実的因果関係あり)、保護範囲ないしは、その範囲内の損害に対する寄与度が、損害全額にまでは及ばない場合(寄与の度合いが明らかに著しく小さい場合)がある。換言すると、当該加害行為が損害発生に寄与した割合の限度で賠償義務を負うとの原理(寄与度減責、帰責性の原理)が働く場面といえる。

 損害一体型における1項後段の類推適用による推定は、事実的因果関係についてなされるに過ぎないとみるべきだから、効果においてこのような考慮をすることは背理ではない。]

 

法定債権17/ 552/ 損害一体型では,因果関係が全損害に及ぶとの民法719条1項後段の推定は及びつつ(事実的因果関係あり),#保護範囲ないし,その範囲内の損害に対する寄与度が損害全額にまでは及ばない場合あり。当該加害行為が損害発生に寄与した割合の限度で賠償義務を負うとの原理(#寄与度減責,帰責性の原理)が働く場面。

[・内田『民法Ⅱ』3版538,447頁参照。共同不法行為(損害一体型,民法719条1項後段類推適用)において,寄与の度合いが明らかに著しく小さい加害者がいる場合の理論構成(法的判断枠組み)]

 

 ●事故+医療過誤

[・Aの過失による交通事故の後、被害者Cを治療した医師Bの過失で被害が拡大した場合、判例では通常、共同不法行為とされる。しかし、加害行為の一体性(民法719条1項前段)はない。

 この場合、Aの加害行為と全損害とは事実的因果関係があるが、Bの加害行為と一部の損害とは事実的因果関係はない。ただ、その部分を確定することが困難なことが多いだけである。そこで、その限りで損害一体型(同条項後段類推)といえる。

 したがって、医師が自己の加害行為と因果関係のない損害を明らかにすれば、その部分は責任を負わないと解する。反面、医師の行為が加わって損害が拡大したという事情を考慮すると、Aの賠償義務についても賠償額の減額がなされる場合もあるといえる。これは、因果関係の不存在による免責ではなく、保護範囲が及ばないこと、あるいは寄与度を理由とする減額である。]

 

法定債権18/ 553/ A過失の交通事故後,被害者治療した医師Bの過失で被害拡大の場合,Aの加害行為と全損害とに事実的因果関係あるが,Bの加害行為と一部損害とにはない。ただ,その部分を確定困難(#損害一体型,民法719条項後段類推)。医師の行為と因果関係なき損害,立証されれば,その部分,責任なし(保護範囲外,#寄与度減責)。

[内田『民法Ⅱ』3版540,535頁参照。事故+医療過誤型の共同不法行為(損害一体型,民法の719条1項後段類推適用)における賠償額の減額のしくみ(法的判断枠組み)]

 

 

不法行為/ 因果関係

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●因果関係要件の意義・機能

[・不法行為法は、権利・利益侵害によって被害者に生じた損害を加害者に転嫁するわけだが、そのような転嫁(帰責)が可能となるためには、まず、行為と権利利益侵害との間に、さらに権利利益侵害(侵害損害)とそれにつづく損害(後続損害)との間に、因果関係がなければならない。前者を責任設定的因果関係、後者を責任範囲の因果関係(責任充足的因果関係)と呼ぶ。民法709条が「故意又は過失によって」というのは、前者の因果関係であり、「これによって生じた」というのは、実質的には、後者の因果関係である。]

 

法定債権12/ 547/ 権利利益侵害によって被害者に生じた損害の加害者への転嫁(帰責)のために,行為と権利利益侵害の間,権利利益侵害(侵害損害)とつづく損害(後続損害)の間に,因果関係要。民法709条「故意又は過失によって」(#責任設定的因果関係),「これによって生じた」(責任範囲の因果関係,#責任充足的因果関係)に該当。

[四宮『不法行為(事務管理・不当利得・不法行為 中・下巻)』403頁-404頁参照。不法行為の因果関係(学説)]

 

●事実的因果関係の意義と認定基準

[・事実的因果関係とは、当該具体的加害者(被告)の行為(conduct=C)が当該具体的被害者(原告)の損害(damage=D)を現実に惹起した、という事実の平面における関係である。

 事実の平面における問題であるから、事実によって立証可能なものであってはじめて判断対象となる。したがって、Cは、外界に変化を生じさせたものでなければならないから、作為義務という規範的判断を前提としてはじめて責任を追及できる事実はCには含まれない。不作為の因果関係として判決例上論じられたものは、作為義務すなわち過失の程度または範囲の問題として考えれば足りる。同様に、Dも事実(外界の変化)であること、すなわち、損害=事実説における損害たることを要する。

 CとDとの間に、もしCがなかったならば、Dは生じなかったであろう(あれなければこれなし公式)という関係が存在すると認められるならば、原則として、事実的因果関係が存在する。もし過失がなかったならば損害が生じなかったであろうと問うことは、過失が規範的概念である以上、事実的因果関係の問題ではなく、過失(行為義務)の程度の問題である。]

 

法定債権19,20/ 554,555/ 事実的因果関係は,具体的加害者(被告)の行為(conduct=C)が具体的被害者(原告)の損害(damage=D)を現実惹起した,という事実平面における関係(事実により立証可能なもの)。Cは外界に変化を生じさせたものでなければならず,#規範的判断を前提とする事実_含まない。Dも損害=#事実説における損害たること要。

[平井『債権各論Ⅱ不法行為』初版(1992年)82頁-83頁参照。事実的因果関係の意義]

 

/ CとD間に,もしCなかったならば,D生じなかったであろう(#あれなければこれなし公式)という関係が存在すると認められるならば,原則,事実的因果関係存在。もし過失なかったならば損害生じなかったであろうと問うことは,過失が規範的概念である以上,事実的因果関係の問題でなく,過失(行為義務)の程度問題。

[平井・同書83頁参照。事実的因果関係の存在が認められる場合(あれなけばこれなし公式,法的判断枠組み)]